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【ふりかえりnote】株式会社iCAREを退職します💐

こんにちは。株式会社iCAREで健康管理 SaaS Carely (ケアリィ)のデザイナーをしている高橋名人(@zouzei8to10)です。

株式会社iCAREを退職します💐

この度、2019年10月から3年8ヶ月働いた株式会社iCAREを退職します。

改めて、お客様一緒に働いてくれた同僚に大変感謝いたします🙌
刺激的で情熱を持ちながらも楽しく働き、いろんな機会に恵まれて成長や達成感を実感できる期間でした…

最終出社日から結構時間が掛かってしまったのですが、業界の慣例や自分の仕事人生のまとめとして、初めていわゆる「退職エントリ」を記してみたいと思います。

この退職エントリで 書くこと / 書かないこと

まず、このnoteで書く内容について最初に明示しておこうと思います。
基本的にはスタートアップ企業のある時期においての一社員デザイナーの「出来たこと」「出来なかったこと」を中心に書こうと思います。

なるべく他業種や似たようなフェーズで働いている方の「再現性」や同じような境遇で働いているデザイナーの方への「共感性」などをご提供できるような構成にしたいためです。

それと、3年で社員50人→150人ほどに「成長・変化」した会社で働けた経験はそれはそれは本当に濃密だったので「この仕事で私は真に驚くべき経験をしたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」という気持ちもあります。
なので「退職理由」や「気持ちの変化」みたいな個人に依存することは書きません。(そのあたりはぜひお会いした時にお話ししましょう👍)

フェーズごとにやることも振る舞い方も変わるスタートアップという「生き物」

iCARE BOOKより
「iCAREのあゆみ」

「スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」

数年前の記事ですが、スタートアップ企業のことを例えて表現する時にこんなことを言われることがあります。それほどに変化のスピードやそれらに臨機応変に対応することが生死を分ける、という話として記憶に深く残っています。

LinkedInの創業者 リード・ホフマンの名言の1つに、「スタートアップとは、崖の上からから飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」という言葉がある。

via hiromaeda.com

私が在籍したのは2019年10月からの約3年半ほどでした。なので上の図で言うところの右半分くらいの期間在籍したことになります。社内では最終的には結構「古参」にあたる社員になっていました。

一般的に3年の在籍は「3年しか」と捉えられやすいと思いますが、その間社員は3倍に増え、オフィス移転、2度の資金調達、それらが全てコロナによる混乱期だったことも相まって、体感的には10年近く経ったような気持ちでいます。ちょうどプライベートの方もいろいろと変化が大きかったので過去の記事などを見返してみると本当に感慨深いです…

過去の節目のタイミングで書いたnoteを読み返しても本当にいろいろとつくってきたし、ようやってきたもんだと思います。最後くらいは自分で自分を褒めてあげたいです👏

タイトルの通りスタートアップは本当に「生き物」のようにその姿を変えていきました。今回の退職エントリでは在籍中にどんなことをやってきたのかiCAREのバリューとクレドに沿って書いていきたいと思います。

とにかくたくさん、いろいろ、早くつくる!〜スピードは上がらないか?〜

初期のフェーズではとにかく「スピード」が求められました。
いわゆる0→1のフェーズでは潤沢なリソースや確立されたレビュー体制などはもちろんないため、「とりあえずやってみる、Try&Errorの精神!」の連続でした。

デザイナーとしては「もう少し、ディティールを比較検討したいなぁ・・・」という場面や「文字詰めの調整が甘いままリリースしてしまった・・・」などという、もどかしい気持ちも常にありましたがPMF(=プロダクトマーケットフィット)するためにはクオリティとスピードの間でバランスを取らなければいけません。職人気質な方も多いデザイナーにとっては適応することに苦労することもあるかも知れませんし、何かを取捨選択の上で諦めなければいけないことも出てくるかも知れません。
ですが、スピード感を持ちながらアウトプットできることをポジティブに楽しめる人には自分のアウトプットが即時反映されて反応が返ってきやすい魅力的なフェーズだと思います。(このフェーズが好きで特化されている方もたまにお見かけします。)

また、リソースもないのでUIデザインだけでなく、社内の撮影やパネルの制作、ノベルティなどの広い領域で自分の技術を活かせたことも良かったです。それと同時に採用のためのイベント運営なども同時に行わなければいけないのでこの時期は本当にカオスと言えるでしょう。

特に会社が小さいうちは分業の体制も明確に取れていません。「タスクとタスクの間のボールを拾う仕事」や「名前もない雑務的な仕事」、「どうしても発生してしまう事務的な仕事」などもありますが、こういった仕事を率先して行うことはデザイナーに限らず後々に活きてくると思います。

先日、少し話題になった「ビジネス会食完全攻略マニュアル」と言う記事がありました。その後Abema TVでも取り上げられていたので反響もかなり大きかったのだと思います。

それは、この雑務と思われる「ビジネス会食」こそが、若手ビジネスパーソンにとって千載一遇のチャンスだということだ。

若手のうちから顕著なビジネス成果を出すことは難しい。その一方で、与えられた会食機会を最大限に生かし、上司やクライアントから高い評価を得られれば、それだけで自身の存在価値を認めてもらえる可能性がある。

若手のうちに絶対身に着けたい「ビジネス会食完全攻略マニュアル」より引用

この記事にすべて倣えとまでは言いませんが、私も「飲み会の幹事を引き受けることで得られる技術は多い」と思っています。小さな会社ではまず顔や名前を覚えてもらうことや反対に相手について興味関心を持って親しくなることで一気に仕事がしやすくなる場面は枚挙にいとまがありません。

「日程を調整する調整力」「嫌いなものやアレルギーを聞くヒアリング力」「美味しいお店を見つけ出すリサーチ力」「その場を盛り上げるファシリテーション力」「会計を一まとめにし経費申請する事務手続遂行力」などが培われると本気で思ってますので、老婆心ながら若手社員の人にはぜひ率先してチャレンジしてみてほしいです。

みんなで、品質高く、つくる!〜クオリティは上がらないか?〜

イベントやブログなどを頑張って、幸いなことに仲間が増えてきました。
そうすると、「これってなんでこのようなデザインになっているんだっけ?」「ここって同じ機能なのにどうして別々に実装されているの?」と言う声が増えてきました。そうです。社員数増加によって開発の背景を共有すること原理原則や実装規則のドキュメント化が早急に求められはじめたのです。

この頃くらいから「車輪の再発明を防ぐ」やアフリカの諺などが会話によく出てくるようになります。(当社比)

そこで、ちょうどフロントエンドの正社員がようやく入社するタイミングから「デザインシステム」を構築し始めました。

構築を始めたは良いもののまだ日本企業にデザインシステムの先行例も少ない時期で、海外の先行事例は規模もクオリティも高すぎてどのように参考にして良いかもよくわからない状態でした。

そこで、愚直に数社直接お話をさせていただくべくMeetyや伝手を頼ったり、技術顧問の大谷さん(@ozu_syo)にアドバイスいただきながら「ちいさく」始めていきました。

【componentを規定したパーツの一部】
・color token
・typography
・button
・table
・modal
・tool tip
・status label
など

Storybook に順次規定した component parts の概要
ただし、全てが production に適用されているわけではない

例に漏れず、Atomic Designを活用したコンポーネントの構造を設計して諦めたり、共通化の背景が社員増に追いつかずにコミュニケーションコストがかかってしまったり、ということもありました。ですが、その都度プロダクトの各画面の実装状況を網羅的に触れながら「どこの画面にどんな要素があって、現状どのように実装されていて、今後どうするべきか?」ということをリサーチする経験はプロダクトに対する理解やそれを通したユーザー理解にも繋がりました。軌道に乗ってきたら新しく入ってきてくれた若手のエンジニアにも調査とコンポーネントの拡充を依頼することでチーム全体のプロダクト理解の底上げには繋がったかと思います。

デザインシステムは1度作ったら終わりではなく、何度もアップデートや変更をする必要があります。1人だけで運用するのもどんどん無理筋になってきます。周りをうまく巻き込む必要があるためこの時期のコミュニケーションは結構意識を変えてとっていました。

また、多くの企業の場合、デザインシステムのような直接的にユーザーに価値を届ける改善でない場合は投資対効果が見えにくいところもあります。それでも手を付けなければいけないことを経営者や上長にアピールするための「布教活動」も通常の業務と並行してやらなければいけないのは中々に骨が折れますよね…自分はnoteをたくさん書いたり、LTをたくさんすることでとにかく目や耳に触れる機会を全社的に作っていきました。ここは本当に泥臭い活動になると思います。同志を見つけて粘り強く頑張るしかないと思います。諦めずに頑張ってください💪

デザインシステムの布教活動をするザビエル
この頃は自分をフランシスコ・ザビエルのように捉えていた。

これからデザインシステムの構築を始めるチームなどはSmartHRさんのこちらのをおすすめします。(iCAREエンジニアにも推奨済)

本の中にもありますが、デザインシステムの正解は1つではありません。私たちは「シングルチーム」×「シングルプロダクト」だったのでこのようなやり方を取りましたが、当然、組織のかたちや各人のスキルセットによってもやり方は変わってくるでしょう。

正直、もっといいやり方もあったと思いますし、どうしてもフェーズによってはうまく進まないことや時間が取れないこともありました。機能によってはデザインシステムと切り離してPoC(Proof of Concept:概念実証)を回す部分もあったので、一概に綺麗で整合性のあるデザインシステムを構築することだけが正しいわけではなかったこともこのプロジェクトが難しく大変だった所以でした…

プロジェクトに思い悩んでいた時には、どこの会社も試行錯誤されていることが分かると結構気が楽になることも多かったので他社の方と意見交換する機会を見つけられると良いと思います。自分にとっては0→1とはまた違う、1→10のフェーズも経験できたことは本当にありがたいです。(いつかデザインシステム作ったことある人みんなで乾杯したい…🍻笑)

すべての使う人が、当たり前に使えるものを、つくる!〜視座は上がらないか?〜

最後に3番目のバリューです。社内でも解釈の難しい項目になります。
デザインシステムの構築に伴って、開発部全体の視座が上がり、プロダクトと事業の理解も進み、それらを「言語化する」ということが習慣化してきました。このあたりからかなりプロジェクト立ち上がり期のドキュメントも充実してきて、PRやSlack内での議論のコメントも活性化していきました。

デザインや実装における視座において共通化のベースができてくると「使う人のことをより深く知ろう」という視点が生まれてきます。それまでもお客様から頂いた要望を聞くことなどはありましたが、潜在的なペインやニーズを探るためにUXリサーチを試みることになりました。

幸いなことに、社内に産業保健師の専門職の社員がいたので時間をとっていただいてオンラインで擬似面談を行ってもらうことになりました。想像の範囲でしか理解できていなかった実務を、実際にデモデータを入れて行うことで解像度は大きく上がります。しかし、抽象度が高すぎると「そもそも画面の設計をすべてやり直す必要がある」となりますし、具体的すぎるとその解決案が本当に全体最適であるかの確証を得なければいけず、その辺りの優先度を設計するまでには私自身は至れませんでした…

もう1つ、退職前最後に私がチームに残せたと自負する視座は「アクセシビリティ」です。2022年夏にダッシュボードのカラーユニバーサル対応の改修をきっかけに開発部全体にも波及していったのを見られたのは本当に良かったです。

Carelyはいわゆる ホリゾンタル(=水平な)SaaS であるため、業種を問わずにさまざまなユーザーの方に利用されることを想定しています。そんな中でちょうどダッシュボードの色味が実装時期によって統一されていなかったことと、新機能の利用カラーが20色もあったことからP型D型の色覚ユーザーからも色の区別がつきやすいようなカラーに再設計をする必要が出てきました。まさにアクセシビリティの視点を組み込むにはぴったりのタイミングでした。

この改修と前後するくらいのタイミングに幸運にも会社のミートアップでアクセシビリティの有識者の方にご登壇いただき、業界的な盛り上がりも後押しして開発部内にもアクセシビリティに興味を持つエンジニアが増えてきました。開発の足元の共通化がよりユーザーに寄り添った「視座」を開発部全体で持てるように繋げられたかなと思います。

もちろん、このレベルになるためには絶対に自分一人ではできず、登壇者に繋いでくれた同僚やアクセシビリティの改善提案をしてくれるエンジニアや開催されるイベントなどの呼びかけをしてくれるマネージャーのご協力あってこそというのをしみじみと思います。在籍中は本当に周りの方に恵まれました。

最後に

本当はクレドとバリューの6項目で振り返ろうと思っていたのですが、クレドの方は抽象的な話やプライベートの範囲が多くなりそうなのと、またも書き始めたら筆が乗ってしまい結構な文字数になってしまったので、

  • 自分にフタをしていないか?

  • 仲間に愛はあるか?

  • 家族に誇れるか?

は、自分の心の中に留めておきたいと思います。
iCAREのクレド、バリュー、そしてパーパスの「働くひとの健康を世界中に創る」は船を降りても心の記録指針(ログポース)として目指す島は違えど、持っておきたいと思います。ラフテルで逢いましょう!

次は、建築・建設業界のDXを推進するバーティカルSaaSの会社に転職します。建築業界には友人知人も多く、思い入れも強い業界です。休み中に数冊本を読みましたがデジタル化でいろいろ変えることができそうだと感じ働けることが楽しみになってきてます。引き続き頑張ります!

それでは、
To Be Continued!!


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