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Boys, be ambitious. 少年よ大志を抱け。いはんや政府においてをや。


先週17日の新聞にあった、EUのフォンデアライデン欧州委員長が一般教書演説で、「2030年に域内の温暖化ガスの排出量を、1990年比で少なくとも55%減らす」と表明したという記事に驚きました。

従来の目標40%削減からの大幅アップです。

パリ協定の1.5℃目標達成のためには、2030年までに45%削減が必要とされています。それを上回る削減を目指すという発表です。

日本の目標の、2013年比26%削減(1990年比では18%削減)と比較すると、これがいかに挑戦的目標かー日本の目標が低いこともー分かると思います。

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350 Japan 特設サイト「脱炭素競争」より

この背景には世界で異常気象が続き、今後10年の対策が地球の将来を決定付けるという危機感の高まりがあります。

加えて脱炭素社会にいち早く移行することで、環境技術で先手を取ろうという戦略も伺えます。

引き上げた目標を、英語で”More Ambitious”(日本語訳は「野心的」)と表現します。

そう、クラーク博士の「少年よ大志を抱け」の、”Ambitious”です。

余談ですが、私が新卒で保険会社に入社した時に、同期の女性が付けてくれた綽名が「少年」でした。

その本意は、「成熟していない」ということだったかもしれませんが、私自身は気に入っています。未だに大志は抱けていませんが・・・。

このような高い目標を掲げると、とかく日本人は理想的過ぎるとか、現実的でないという批判をします。日本の教育や社会の在り方が減点主義ですので、達成できないリスクから考えるからだと思います。

しかし、私の会社人生での経験によれば、目標の立て方には二通りあります。

一つ目は、今のやり方の延長で新しいことを加えたり、効率化したりすることで何とか達成できるレベルの設定。これは上手くいっていることや平時には適切だと思います。

もう一つは、できそうもない高い目標を掲げること。こうなると、今までのやり方では到底達成できません、否応なしに全く新しいやり方を考えざるを得なくなります。 

気候危機のように、今までの化石燃料依存の成長モデルから脱却するという時には、今のやり方(BAU)の延長では対応できません。

話は少しずれますが、イチロー選手が日本のプロ野球選手になりたいという夢で野球を始めたとしたら、日本で一流になるのがやっとだったかもしれません。

大リーグの選手を目指したからこそ、数々の偉業を達成できたわけです。大きな目標には大きな努力や違う発想を生む力があります。

気候危機に話を戻すと、そもそも産業革命以前の気温に近ければ近いほど、地球環境の持続可能性は高まります。

しかし、CO2は大気中に100年滞留するため、短期間に気温を下げることはできません。

仕方なく今より悪化するけれど、1.5℃上昇を目標として許容しようということなのです。それを忘れて1.5℃から発想して、2.0℃位の上昇なら良いだろうという話ではありません。

日本政府は現在、削減目標の改定作業に入っています。今の政府目標では3.0℃上昇するという分析があります。

政府よ大志を抱いて、削減目標を引き上げてください。

横山隆美