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これから大切にしていきたい「SEEラーニング」日本での広がりに思いを馳せて

こんにちは。読みに来ていただき、ありがとうございます。「SEEラーニング」という教育プログラムについて、2日間のワークショップに参加して体験してきました。この記事ではその概要や重要な点について、私なりにご紹介したいと思います。日本ではこれから広がっていく段階で、とても大切な考え方になる予感がしています。

今回参加したワークショップはこちら↓

SEEラーニングとは。その成り立ちから

SEEは、Social,Emotional and Ethical Learning、社会的・情動的・倫理的知性の学びです。

SEEラーニングの少し前に、SEL(社会性と情動の学び)があります。これはEQ(感情知性)の提唱者ダニエル・ゴールマン博士とMITのシステム論のピーター・センゲらが推進し、米国で90年代に広まりました。(日本でも書籍「21世紀の教育」などで紹介されました。)SEEラーニングは、1998年、ダライ・ラマ法王が米国エモリー大学を訪れて共同研究が始まり、その後、SELの流れとも合流しました。

このプログラムは、どのような問題意識と倫理体系から来ているのでしょうか。ダライ・ラマ法王の2019年の言葉から抜粋して紹介します。

「(略)今日の世界において、私たちはみな相互に繋がっています。今、私たちは相互依存性を認め、対話と協力を通じて問題を解決し、変化を促す必要があります。コンパッションは、親しみのある同類の人たちに限られたものであってはなりません。コンパッションの範囲は、共通する人間性に基づくあらゆる人に広げられる必要があります。」

『SEE ラーニング プレイブック −感じることからはじまる学び−』(エモリー大学SEEラーニングチーム/kukuibooks)p.88より

SEEラーニングの特徴やプログラム内容

SEEラーニングの特徴は身体性です。知識を受け取り、自分の身体で感じて、振り返って、修得します。学習者の感覚、感情、他者との関係性、などに常に注意が向けられます。

本を読んだり講義を受けたりするだけでは十分ではありません。これまで体験したことのない考え方や感じ方、感情の扱い方を学ぶため、実践を重ねながら、自分の心や体に沁み込ませていく、腑に落ちるようにしていく、という学び方だと思います。「観想教育」という言葉も使われていました。

SEEラーニングのプログラム内容

カリキュラムを分類すると、「パーソナル(個人)」「ソーシャル(社会)」「システム」という3つの領域(ドメイン)があり、「気づき(アウェアネス)」「思いやり(コンパッション)」「関わり(エンゲージメント)」の3つの側面(ディメンション)」があります。

出典:SEEラーニングジャパン(https://www.seelearningjapan.com/about)より

例えば、「個人」×「気づき」の練習として、次のようなことを体験しました。目的は「感情リテラシー」を身につけることです。自分が何を感じているのかに気づき、本当に必要としていること(ニーズ)との繋がりを理解する力を身につけるためです。

優しくしてもらった場面を思い出すワーク

  • 自分に親切にしてもらった人、場面、情景を思い出します。

  • その状況をできるだけ鮮明に思い出し、絵に描いてみます。

  • その絵を見て思い出しながら、自分の内側でどんな感じがするか、身体のどこにどんな感覚があるかに注意を向けます。

このようなワークをしながら、自分が安心できる、心地よくてほっとできるものを思い浮かべる、心の中でそれに触れる、つかまえること練習をします。「リソーシング」と言います。なんとなく嫌な感じがしたらそこから離れる。落ち着けるところに注意を向け直す。そんな練習です。

SEEラーニングのこれから

今回、2024年3月9日10日、慶応義塾大学日吉キャンパスに、約100名の教育関係者が集まり、ワークショップを体験しました。大変貴重だったのは、SEEラーニングを開発している、エモリー大学のロブサン・テンジン・ネギさん、ブレンダン・オザワ・デ・シルバさん、ツォンドゥ・サンフェルさんが来日され、直接、この場をファシリテートしてくださいました。参加者の皆さんもそれぞれの現場で大変活躍している方ばかりでした。

慶応義塾大学教授の井本由紀さんはじめ、エモリー大学SEEラーニングチームの皆さんが、日本での広がりについて、今まさに取り組んでくださっています。教材の一部が公開されていたり、近々、解説や導入の手引きをまとめた冊子も紙で発刊される予定もあるそうです。

エモリー大学のSEEラーニング本部が提供するオンラインプログラムも、ユーザー登録して研究協力に同意すれば、無料で受けられます。

さいごに

とても学びの多い、豊かな2日間でした。それを支えていたものとして、安心してその場にいられること、その場をつくる皆さん(私を含む)の思いやり(コンパッション)に満ちていたことを、身をもって体感しました。心から感謝しています。安心していられる場づくりというのは、合理的に外部環境によって規定されるものではなく、その場にいる人の集まりが相互に働きかけてつくられるものなんだなとわかりました。

また、私が大切にしている「聴くこと」「耳を傾けること」が、色々なところに通じていることも改めて確かめました。マインドフルにいるための助けとして、コンパッションを思い出すための対話として、共通する人間性の理解のための対話として、、、色々な状況と目的で、聴くことがあるなあと思いました。この気づきにも感謝です。

最後にお知らせ。「聴き合う学校」という取り組みを始めています。興味のある方はご覧ください。無料相談もお気軽に。


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