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鉄道会社は各々違う、組織図から読み解く

 鉄道業界に就職したいと思う学生向けの記事です。
土木系の就職先で鉄道業界を選んだ方は、数ある鉄道会社の”違い”を意識して企業を選んでいただきたいと思っています。
 今回は、会社の組織図から各鉄道会社がどういう分野に力を入れているのかを読み解いていきたいと思います。鉄道会社を広い視野で見て欲しいので、土木以外の部署についても記載します。
 手始めに、上場しているJRグループのJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社を解説していきます。

①JR東日本

言わずもがな、東日本エリアを営業エリアとする世界最大の鉄道会社です。事業領域は多岐に渡り、グループ会社も含めれば日本で指折りのコングロマリットとも言えます。

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 組織図で特に注目すべきは、「事業創造本部」、「MaaS・Suica推進本部」ではないでしょうか。JR東日本の持ち味の一つは堅実な鉄道経営ですが、本業の鉄道業以外の分野での収益が多いのが特徴の一つです。JR東日本グループの経営計画「変革2027」によれば、収益構造は以下の通り。
・JR東日本発足時 運輸事業:非運輸事業=9:1
・現在(2017年) 輸送サービス:生活サービス・ITsuica=7:3
・将来(2027年) 輸送サービス:生活サービス・ITsuica=6:4
つまり、将来的に軸は鉄道だけどそれ以外(ショッピング、不動産、IT、などなど)の割合を増やしていくとのことです。
 これは土木系にとっては非常に魅力的なことです。土木構造物のメンテや建設には大変お金がかかることです。投資回収をこれらの鉄道事業以外でしっかりと行える能力・ノウハウがあるということは、土木技術者の活躍のフィールドが広いと言えます。
 また、組織図に「構造技術センター」があります。かつて国鉄に構造物設計事務所という設計の専門家が集まる部署がありました。この組織のDNAを引きついだのが、構造技術センターであり、これはJR他社にはない組織です(こちらが詳しいです)。鉄道に関わっている方であれば、頷いていただけると思いますが、JR東日本は、鉄道会社の中で最も技術力が高い企業です。伝統的にこういう組織が残っているというのもその現れです。ある大学の先生がおっしゃっていましたが、JR東日本が潰れるなら、日本の鉄道技術は無くなる、と言われるくらいです。

②JR東海

 JR東海は東海道新幹線を運営し、リニア中央新幹線を作っている会社です。東京と名古屋・大阪を結ぶ日本の大動脈を営業エリアとしているので、収益率は大変高く、その点では非常に魅力的ですね。逆に収益構造的には脆いということです。例えば東海道新幹線が止まってしまったら、どうなってしまうでしょうか。そんなJR東海の組織図を見てましょう。

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 JR東日本と似ている部分が多くあるかと思います。特徴的なところは、「中央新幹線推進部」があるところで、ここでリニア中央新幹線を作っています。また、「東海鉄道事業本部」と「新幹線鉄道事業本部」が大きく別れており、在来線と新幹線は組織上も明確に区分されているのが目立ちます。
 ところで、余談ですが、発注者であるJR東海はリニア建設にどれほど関わっているのでしょうか?今話題の、大井川の水量問題。これを解決して工事着手することは発注者として大きな役割です。当然、工事を適切な工期・工事費で契約することも重要な役割です。しかし、実は発注者としてのリニアへの関わりはこれくらいなんじゃないかと思っています。実は全く新しいところに新線を建設することはそんなに難しくない、といいますか、ゼネコン主体で建設工事が行われるため、発注者としてそれほど主体的に関わることはないと思います。発注者としての醍醐味は、営業線に近接して工事が行われる中で、限られた夜間で工事を行い、色々な支障物や障害がある中で工事を行う、そのための条件整理をすることだと思っています。リニアは大深度地下でトンネル主体で建設を行うので、発注者としてのやるべきことはあまりないのではないでしょうか。「リニアを作りたいからJR東海を志望します」という学生さんは、その企業の社員さんがどのように工事に携わっているのか、OB訪問などを通して今一度確認されると良いと思います。

③JR西日本

 西日本出身の方は、JR西日本の企業研究をされたほうがいいと思います。関西圏は私鉄の存在感が強いと思いますが、やはり私鉄にはない投資規模、エリアの広さや多様さというのがJRの魅力です。 

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 組織上、特筆すべきは「福知山線列車事故ご被害者対応本部」でしょうか。やはり、福知山線列車脱線事故が会社発足以来最大の事故でしょうから、そのご遺族に対応する専門部署は事故から時がたった今も大変重要です。そして、この事故の加害者として、社員への安全指導等はこれまでもこれからも実施されているのだと思います。
 JR西日本にも、東日本と同じように、設計技術に長けた職場が多いと感じます。流行り厳しい環境下での営業線近接工事となるため、その分技術面で工夫をされているのだと思います。

④JR九州

 2016年に完全民営化された、JR九州。その復活の原動力は、経営の多角化にあると思います。非鉄道部門の収益が50%を超えており、本業の鉄道業以外での売上がJR他社の中で群を抜いています。

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 組織的には、やはり「事業開発本部」が特徴的で、ホテル・住宅・カードなどが目立ちます。また、「クルーズトレイン本部」があるように、ななつ星を中心に観光列車を多く運行しており、そういった部分も魅力的だなと思います(観光列車)。学生目線で見ても、この前完全民営化したばかりですし、やることがたくさんありそうですし、柔軟な発想と観光列車での成功体験から、これからますます伸びていく企業で将来性が十分ある企業として、地元九州の学生だけでなく、関東・関西圏からの学生さんにも人気が出そうな企業かと思います。

まとめ

 これまでざっくりとJR4社について説明してきました。同じJRグループですが、4社それぞれ収益構造が異なりますし、将来的な方向性も異なりますので、興味のある方はもっと調べておくことをおすすめします。特に各企業の中長期経営計画は読んでおいてください。
 以下、個人的な意見です。

・会社の規模
東日本>東海>>西日本>>>九州
・会社の安定性
東海>東日本>西日本>九州
・鉄道会社度
東海>西日本>東日本>>>九州
・会社の技術力
東日本>西日本>>東海>>九州

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