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ケップルとして1つの節目を迎えます

ケップルの神先です。なかなか普段はnoteを書く筆が進みませんが、今回は大切なご報告があり、気合を入れてパソコンに向かっています。

その前に、軽くケップルの各サービスをご紹介させてください。

投資家向け未上場株式管理ツール「FUNDBOARD」

グロービスさん、インキュベイトファンドさん、凸版印刷さんなど、国内50社以上の投資家に使われている、VCや事業会社の投資チーム向けのポートフォリオ管理ツールです。

ベンチャーキャピタルの決算書の添付書類が自動で作れますし、投資先からの情報収集もスムーズになります。

非上場企業向け株主総会ツール「株主総会クラウド」

紙で印刷・製本し発送していた株主総会の招集通知と委任状のやり取りがオンラインで全て完結します。

2020年8月にリリースし、コロナを追い風に順調に利用社数も増えております(月額は無料です!)。

いまだに紙やメールで株主総会の招集通知と委任状のやり取りされている方は是非ご検討ください。

弊社株主である三井住友信託銀行からもご支援頂いております。

無駄な紙と印鑑はこの世からなくしましょう。環境と時間を大切に。

アフリカ特化のベンチャーキャピタル 

ケニアを中心に東アフリカ、ナイジェリアを中心に西アフリカ&北アフリカ、で80社以上のスタートアップに投資しています。

社会問題の多いアフリカ、人口が伸び続けるアフリカ。スタートアップにはチャンスしかありません。

ポートフォリオはすべて公開してますので、下記からぜひご覧ください。

国内最大手の辻本郷税理士法人と経営統合

さて本題ですが、この度、ケップルの創業事業である「スタートアップ向け税務・会計事業」を担ってきた税理士法人ケップル及び株式会社ケップルコンサルティングは、2021年4月1日付で日本最大手の辻本郷税理士法人と経営統合を致します。

これまでお世話になった顧問先の皆様、元顧問先の皆様、一生懸命働いてきてくれた現メンバー、元メンバー、そして全ての関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

私が2013年11月に自宅の一室で神先会計事務所として立ち上げた当事業は、約7年5カ月の歳月を経て辻本郷税理士法人にそのDNAを引き継ぎ、幕を下ろすことになります。弊社メンバーは、辻本郷税理士法人のスタートアップ事業部として再出発を図り、私は当事業部のアドバイザーとなります。

※なお、ベンチャーキャピタル様向けの決算支援は、株式会社ケップルでサポートを継続してまいります。いつでも下記よりお問い合わせください。

これまで大変だったことも嬉しかったことも振り返ればたくさんありました。ただ正直そんな思い出に浸る余裕もなくこの日を迎えていますw

まとまりのない文章となりそうですが、中々ここまでの区切りのタイミングはないので、これまで悩みに悩んできた自分の葛藤と想いをここに綴っておこうと思います。

ブランドとネットワーク作りに費やした最初の3年間

まず、ケップルを立ち上げた経緯は下記に記しましたので、こちらを参照ください。

会計事務所を立ち上げてからのおよそ3年間は、とにかくスタートアップのためにがむしゃらに働いていました。

当時は、創業期のスタートアップをサポートできる会計事務所として認知されているところはほぼなかったので、ケップルは町の税理士さんと同価格でありながらスタートアップ特有の論点やネットワーク提供、資金調達のアドバイスができる会計事務所を目指そうと頑張っていました。

今でこそ多くの会計事務所やフリーランスでスタートアップのバックオフィスをサポートしてくださる方々が増え、当時と比較するとスタートアップにとってとても素晴らしい環境が整ってきたなと感じます。
僕らがもし間接的にでもこのエコシステムの成長の一端を担えていたとしたら嬉しいなぁと心の底から思う次第です。

有望なスタートアップの顧問先が増えたことにより生じた課題

「スタートアップ特化の会計事務所」というコンセプトを謳ってからというもの、多くの投資家や起業家の皆様からご紹介を頂き、ちゃんとしたホームページもないのに当時信じられないスピードで新規の顧問先が増えていきました。

ご紹介を頂けるというのは過去の仕事の成果があってのことなので大変嬉しく、今でもご紹介を頂いた方々、ご契約をさせて頂いた起業家の皆様の顔がたくさん浮かんできます…(本当にありがとうございました。)

ただ、会計事務所の仕事は一回売って終わりではなく、顧問契約という形で継続して経理や税務のサポートを行っていくものです。幸いにもスタートアップエコシステムの中心で仕事をさせて頂いていましたので、どの顧問先も急激に成長をしていきました。

そこで課題が浮き彫りになります。

事業が成長すると、当然それに合わせて経理の負担もそれに比例する形で増えていきます。そして社長は事業が急成長しているが故、バックオフィスに割く時間もあまりありません。当時、担当制で顧問先をメンバーに割り振っていましたが、新規の顧問先を増やさずとも既存の顧問先の急成長により1社あたりの負担が増大し続け、10名足らずの零細事務所だった僕らは追加の人材投入もスムーズに行えず、かといって顧問先にもバックオフィス担当がいないという状況で、結果一人一人のメンバーに大変大きな負担を強いることとなりました。

顧問先の成長はとても喜ばしく嬉しいことなのですが、人が潤沢に用意できない僕ら零細事務所にとっては、これはとても大きな課題であり問題でした。

そして外部環境としても会計業界は深刻な人材難。零細事務所である僕らは、採用競争で打ち勝つだけの十分なリソースを投下できず、顧問先のサポートで手一杯という状況が続きます。その結果、2年から3年周期で人が入れ替わる状況となり、メンバー純増を中々実現することができませんでした。

ここで僕は事業の成長は組織の成長と両輪であるということを身をもって感じまして、振り返れば反省しきりです。当たり前の話だとは思うのですが、ただ中々最初はそれが真に理解できていませんでした。

事業の多角化と権限委譲

事業の成長痛を痛感し始めた4年目以降は、新規の顧問先の契約を控えつつ、既存顧問先へのサポートに注力する体制に舵を切り始めました。
別会社の株式会社ケップルでもFUNDBOARDの構想が固まり、ベータ版の開発を始めたのもこの時期です。

そこで、中途で入社したあずさ監査法人出身の三浦を株式会社ケップルコンサルティング及び税理士法人の共同代表に就任してもらい、権限移譲も進めていきます。ここからは私自身は税理士法人では、最終レビュー含む社内向けの仕事にフォーカスしていました。

並行して立ち上げていた株式会社ケップルについては、日経新聞や野村総合研究所との資本提携も決まり、事業としても成長し始め、次第に私自身両輪で経営を続けていくことに限界を感じ始めます。

外部との経営統合の意思を固めるに至った経緯

そんな中、共同代表を務めてきた三浦から独立の意思が固まったことを聞きました。これが2020年夏頃です。当然、そこから今後のケップルの会計事業をどうしていくのか、三浦に代わる人材が社内にいない状況下で僕としては悩みに悩みました。

ケップルの会計事業は創業の事業であり個人的な思い入れも深く、僕自身は公認会計士・税理士であることにとても誇りを持っています。そして会計士税理士としての仕事が心の底から好きです。
そのため、僕個人としてはこの会計事業をできる限り継続していきたいという気持ちが強くある中、顧問先、メンバー、そしてケップルにとって何が最善の選択なのかをできる限り客観的に見つめ考えようと深く思い悩んだ結果、外部との統合を進めようと2021年初頭に決意を固めました。

その結論に至った理由は3つあります。

① 「会計事務所として」今後組織を拡大していけるか

新規採用と従業員の定着になぜ苦しむのかを自己分析しました。それは当然様々な理由があると思いますが、その中で構造的に難しいと思ったことがあります。

それはケップルの会計事業は、バーティカルな上にバーティカルであること。つまり、「税務」というサービスに特化をしているにもかかわらず、それに加えてケップルは「スタートアップ」に対象ユーザーを絞り込んでいることが今後組織を拡大していく際に最も大きなハードルとなると分析をしました。

プロフェッショナル人材は「様々な業務を経験できるか」をキャリアとして最も重要視している人種であり、そんなプロフェッショナル人材が社内で長期間に渡って活躍をしてもらうには、スタートアップ支援以外にも、事業承継や個人の相続など、様々な業務機会を用意していくことが重要です。
その点、ケップルではスタートアップ支援以外にサービスを拡大していくつもりはなかったので、プロフェッショナル人材が長期で活躍してくれるような場の提供が難しい。そうなると入社後一定期間経過して次のキャリアを考え始めた優秀な人材の流出は免れない。つまり、組織拡大をしづらい構造にあると分析しました。それもあって、既存のネットワークとブランドを活かしながら、総合型のプロフェッショナルファームと統合し、メンバーに多様な業務機会を与えられるようにし、逆にケップルで培ってきたスタートアップ支援のナレッジを提供する連携を図った方が良いのではないか、と考えました。

② 「税理士のサイン」という属人化のハードル

僕は会計事務所以外にも、株式会社ケップル、株式会社ケップルアフリカベンチャーズを率いています。そのため権限移譲を進めなければ、自分のリソースの問題で継続は難しいのは分かり切っていました。
その点、現場の権限移譲は進めてきたものの、最後の「税理士としてのサイン」の移譲はとても高いハードルでした。

サインのためだけに経営陣を安易に増やすことはできませんし、任せられる人材を限られた時間軸で探すのは困難を極めました。これが2つ目の理由です。

③ ケップルが単独で続ける意義があるか

最後に「ケップルとして」スタートアップを支援する会計事務所を続けていく必要性があるか、を考えました。これは創業当時はスタートアップが本当に相談先が見つからず困っているケースが多々あったので、そういった声に応えたくて「一人会計事務所」から「組織として」やっていくことを当時決めたわけです。

昨今スタートアップが増え、スタートアップを顧問先に抱える会計事務所が広がりを見せ、それに加えてスタートアップのミドルバックオフィスで働いた経験のある方々のフリーランス化も進んでいます。

創業してから時が経ち、ケップル以外の選択肢もできている、ご紹介先もある。そう思うと、ケップルが単独で会計事業を継続していくことに大きな意義は感じられず、それであれば大手と組む方がすべての利害関係者にとってハッピーとなるだろうと意思決定しました。

辻本郷税理士法人との統合を選んだ理由

そんな背景で2021年に入ってから統合先を本格的に探し始めました。まずは昔から交流があり公認会計士の大先輩である荒井さんに相談し、荒井さんが社長を務めるストライクさんに探してもらうことにしました。

そこで僕からはトップと組みたいと要望を出させてもらいまして、辻本郷税理士法人をご紹介いただけることに。経営企画室の室長が私と同じ高校大学出身だったこともありすぐに意気投合し、本郷会長との面談をセッティングしてもらい、本郷会長にはケップルの今後のビジョンやこれまでの実績、ブランド、ネットワークを評価していただき、そこからはトントン拍子に手続きとしては進んでいきました。

ではなぜ辻本郷税理士法人、業界トップと組むことにこだわったのか。それは以下の理由があります。

① ナンバーワン戦略

私が常に意識していることにナンバーワン戦略というものがあります。それは小さくてもニッチな領域でナンバーワンになる、そして組む相手はなるべくナンバーワンと組む、ということです。

前者はよく言われることなので割愛しますが、後者は一つのマーケットを1社が独占することはなく、必ずどの業界でも派閥が生まれる構造にあり、零細企業としてはできる限り最大派閥に属していることが事業として最善な選択になるはず、そう考えるとできる限り業界トップ企業と組んでおくことが長期的な選択として正しいと考えてます。

その点、税理士業界は高齢化が進み、若手人材も年々減り、これからますます大が小を吸収する流れは加速していきます。

そのような背景からきっと現状業界トップである辻本郷税理士法人は更に大きくなっていくことは容易に想像でき、今後の自分のキャリアを考えても辻本郷さんとご一緒していきたい、そう考えたのが一つの理由です。

② スタートアップの事業拡大支援

上記の理由に通ずるところがありますが、辻本郷税理士法人は日本で一番顧問先を抱えています(推定17,000社ほどだったと記憶してます)。

そのネットワークを生かすことができれば、例えばスタートアップの新しいプロダクトやサービスができた際、辻本郷税理士法人の顧問先ネットワークを使ってスタートアップの新しいサービスの拡大に貢献するなどのようなことができます。アメリカは弁護士社会ですが日本は税理士社会であり「税理士からのご紹介」というルートは大変心強いものです。

引き続きスタートアップの支援をして貢献していきたい僕にとっては、それは大変な魅力でした。

③ 上場以降もサポートできる体制構築 

これまでケップルは「創業期」のスタートアップ支援に注力していました。そのため人的なリソース不足もあり、拡大フェーズに入ると他の事務所さんにご紹介を行ってきたのですが、その契約の引継ぎをさせて頂くのは大変心苦しく、できれば上場準備に入ってからも、上場してからもお付き合いをしていきたいとずっと思っていました。

ケップル単独ではその体制まで作り上げることは出来ませんでしたが、辻本郷さんと組むことで創業してから上場以降まで一気通貫でサポートできる体制が整うというのはとても魅力的でした。

④ 意思決定の速さと人的な相性

もはやわざわざ書く必要すらないかもしれませんが、本郷会長含め辻本郷税理士法人の皆様の意思決定の速さ、そして窓口を担当してくださった方々が素晴らしい方々だったというのは当然大きな決断要素でした。この度は本当にありがとうございました。

今後について

つらつらと書いてきましたが(それでも書き切れていないような気がしますが、、)、上記のような背景で辻本郷税理士法人と経営統合をするに至りました。

今在籍してくれているメンバー、ご契約いただいている顧問先の皆様、私のこの意思決定を尊重していただきまして、本当にありがとうございました。

これから税理士法人ケップルおよび株式会社ケップルコンサルティングは「法人格」としてはなくなりますが、そのDNAは辻本郷税理士法人の中で、そして各メンバーに宿り、残っていきます。

僕自身は、辻本郷税理士法人との経営統合をスムーズに進めるべくアドバイザーとして関わっていきますので、また税務や経理周りなどでお困りのことがあればいつでも個別にご連絡をいただければと思います。

※また繰り返しになりますが、ベンチャーキャピタルなど投資家向けバックオフィス支援は、株式会社ケップルでサポートを継続してやってまいりますので、いつでも下記よりお問い合わせください。

その上で、株式会社ケップルとして、株式会社ケップルアフリカベンチャーズとして、FUNDBOARDや株主総会クラウドを中心に、スタートアップエコシステムに対してより大きな貢献をしていけるようにこれからも全力を尽くしていく所存です。

これまで関わってくださった全ての関係者の皆様。
これまで本当にお世話になり、ありがとうございました。

これからもケップルを宜しくお願い致します。

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2021年3月31日 渋谷神泉のオフィスにて

税理士法人ケップル / 株式会社ケップルコンサルティング
代表取締役 
神先 孝裕