幻の岩海苔
一口食べると磯の香がひろがる。
さらに二段重ねて口にいれると美味い! 箸がすすむ、すすむ。
弁当ひとつ、一気に食べてしまった。
松前「海苔だんだん弁当」。
函館から車で西へ 2 時間ほどの津軽海峡の町・松前。
冬、寒風の下、漁師のおかみさんたちが、荒波に洗われた岩場で岩海苔をひとつひとつ手で摘み、すだれで天日干しに。
量が少なく、地元で食べられてしまうので、“幻の岩海苔”といわれる。
そのなかでも 1~2 月に採れる海苔は味がよく、“寒海苔”として珍重される。
老舗・温泉旅館「矢野」のレストラン。
この幻の岩海苔を二段に敷いた「海苔だんだん弁当」と出会い、
素朴なのに超高級な贅沢を味わった。
松前といえば、お城と桜といわれる。
だが、夏ともなれば、紫陽花がお城のあちこちで咲き乱れる。
150 年あまりまえ、旧幕府軍は蝦夷地に上陸し五稜郭を占領した。
新選組副長・土方歳三は 700人ほどを率いて、
巧みな采配により、鉄壁の守りの松前城をわずか数時間で攻め落している。
松前で空砲に終わったことが二つある。
矢野旅館の名物若女将・杉本夏子さんの姿を
チラリとも見かけず、空砲。
岩海苔の一帖でもと町中をめぐったが、やはり幻であった。
来春も、松前へいざ行かん。
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