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一銭けれ 一銭けれ

力まかせに叩く太鼓、哀調をおびた笛、汗だくになった祭り半纏(はんてん)を脱ぎすてた若者が山車のうえで狂ったように飛びはねる。

そばで見ていて、背筋にぞくぞくっと興奮が走った。
夜もふけた10時すぎ、祭りはクライマックス。

13台の山車がずらりと並び、祭りばやしの競演が始まった。

江差・姥神大神宮渡御祭(うばがみだいじんぐうとぎょさい)。

お囃子の競演で祭りはクライマックス 山車は豊年山 中央上には桓武天皇    2004


370年ほどまえ、
鰊(にしん)の大漁を神に報告、感謝したのが祭りのはじまりで、

「江差の五月は江戸にもない」と鰊漁と北前船でにぎわった昔の栄華を
今にしのばせる。

神殿を拝殿に納める宿入之儀


毎年8月、祭りのころ、人口7000人ほどの街が、観光客や里帰りの人がおしよせ数倍にもふくれあがる。

まわりでは、一升瓶をまわし飲み、声をからし汗まみれで踊りまくっている。

宿入りする拝殿への参道を松明の篝火で清める


そのそばで、少女がひとり、もの悲しく横笛吹く。
まさに静と動がいっしょくた。

横笛がもの悲しい音色を奏でる


「一銭けれ、一銭けれ。一銭もらって何するの……」

町内へもどっていく山車の祭りばやし「帰り山」が遠のいていく。

宿の床のなかで、その音色を耳にし華やかなころの江差に思いをはせ、
深い眠りに落ちていった。




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