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わび寂びライカ USA

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もう一度だけ海外へ行くとしたら、いの一番にニューヨークだ。ケネディ空港で拾ったタクシーのラジオからながれるクールジャズに身をゆだね、クイーンズボロ橋が近づくにつれ摩天楼のスカイラ…
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#ジャズ

影の男

大窓から差しこむ朝日をあびた大男が、ひろびろとしたコンコースのど真ん中で突っ立っている。 肩幅は広くたくましい。逆光にうかびあがったシルエットは、力強さそのもの。だが、影は大きいけれど、弱々しい。 強と弱が一緒になった男の光と影は、世紀末アメリカを象徴しているかもしれない。いまなお世界最強だが、衰退の兆しを見せる黄昏の大国アメリカ。 グランドセントラル駅、午前9時。 朝の通勤客が急ぎ足で行きかうコンコースを見張る。 人の良さそうな黒人の警官がそばにいる。安心してカメラを

トンプキンズ広場のジャズ

スイングするビートにのって、サックス、ピアノ、ベースとソロがくりひろげられていく。 たった1メートルの鼻先で軽やかにふきあげているサックスに、スローシャッターを切った。 ジャズがきこえる写真を撮りたかったのだ。 人種のサラダボールのニューヨークでも、その色合いがこく、いろんな階層がまじりあう街、 イースト・ビレッジ。 人種と階級のごったまぜが、この街を時代に先取りするアートの先端発信地とした。 一見バラックと思える実験劇場LaMaMa(ラ・ママ)。 オフ・オフ・オフ・ブ

パンパン・・銃の発射音 ニューヨーク 

わりと近くでパンパン…… 銃の乾いた発射音だ。 夜ふけ、ジャズを堪能したあとのアベニューA、トンプキンズ広場。 麻薬の注射針が道ばたに転がるこの広場の東は夜ヤバイ、と地元の友人。 90年代初めのニューヨークであった。 9番街51丁目、アフガン料理店でケバブと激辛カレーに挑戦した帰りがけ、店の人は交差点を渡るな、と。 通りの向こう側を歩く人の格好はラフで汚い。こちらは小ざっぱり。 9番街より西は危険であった。 このところ、もっぱら国内を歩いている。 もう一度だけ海外へ行