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枯れ寂びライカ Hokkaido

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突風で駅舎がぐらっと揺れ、それまでのぽかぽか陽気が一転、気温が急降下した。ぶるっと体が犬みたいに震えた。根室ちかくの花咲駅。最果ての無人駅であった。
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#十勝岳

 賀正  氷点下12℃ 増毛

留萌で乗客がどっと降り列車のなかは4~5人となった。 白波がたつ日本海沿いの停車場ごとにひとり、ふたりと客が消える。 夕暮れどき、雪がはげしく舞いあがる無人の終着駅・増毛にたどりつく。 降りたのは、おばあちゃんと僕のふたりであった。 今から10年まえであった。 氷点下12度。 2月の町は雪に埋もれていた。 いつもの倍も積もったという。 昭和8年築の観光案内所は閉まっていたが、 雑貨、寿司屋の明かりがぽつりぽつり。 雪道に足をとられ歩きつづけると、 凍えた手先と足の指

神々のあそぶ庭

北海道で最も高いところにある温泉と聞き、 北海道のど真んなか、富良野から足をのばした。 そこは、十勝岳温泉・凌雲閣。 標高1280m、活火山・十勝岳の8合目にある。 馬鹿と煙は高いところに登りたがる、とはいうが、すばらしい。 露天風呂に体をしずめると眼前に大パノラマが展開している。 晩秋、わずかに冠雪の十勝岳連峰。 ここは、別世界。 アイヌ語で、 カムイミンタラと呼ぶー神々のあそぶ庭。 源泉かけ流しの茶色の濁り湯。 鉄分が含まれているのだろう。 長風呂にはころあいの湯