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わび寂びライカ EU

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わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
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#ワイン

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って、ピンボケだらけのネガの山を築いた。 アッシジの路地裏。あ、同じカメラを持っている! とお互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった。 ベテラン風情の彼女は、プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して、ライカより良い「キャメラ」、と。 その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうとF3のシャ

ワイン小咄

ブルゴーニュの銘酒街道の一角。 十字架の列が目にとびこんできた、村人の墓。 まわりのぶどう畑では、せっせと房を摘んでいる。 このあたりにこんな歌が伝えられている。 もしも、わたしが死んだなら 墓穴のなかのわたしのそばに なみなみと注いだワイングラスを 忘れずに置いてくれ ……… もしも俺が死んだなら 酒蔵のなかに埋めてくれ いいワインのある酒蔵だ 酒蔵のなかだぞ いいかい よいワインでいっぱいの酒蔵だぞ 俺の墓石のうえに刻んでおくれ 「酒飲みの王 ここに眠る」

ひと粒のロマネ・コンティ

ロマネ・コンティ1985年。 豊かな香りが鼻先にひろがる。口にふくむと、豊饒、 さらに気品と繊細を感じる。 熟れているが初々さが同居する。 ずいぶんと奥行がある。 20年ほどまえ、一本25万円で仲間5人と割り勘で楽しんだ。 いまでは、200万から300万もする。 このロマネ・コンティは、期待を裏切らなかった。 本音をいえば、極上のいい女に出会った思いで、 今もそれを引きずっている。 2000年9月。 太陽がじりじりと照りつける。30℃はある。 ブルゴーニュのワイン畑では