マガジンのカバー画像

わび寂びライカ EU

18
わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮っ…
運営しているクリエイター

#強制収容所

わび寂びライカ

わがカメラ事始めは、30年ほどまえのイタリアの旅。 出発まぎわに「写真の撮り方入門」を手にした泥縄そのものであった。 そんな初心者が、プロ仕様のピントも露出も手動のニコンF3で撮って、ピンボケだらけのネガの山を築いた。 アッシジの路地裏。あ、同じカメラを持っている! とお互い思わず駆けよった相手がドイツの女子学生であった。 ベテラン風情の彼女は、プロ風にニコンを「ナイコン」と発音して、ライカより良い「キャメラ」、と。 その後、イタリアの失敗写真から抜けだそうとF3のシャ

カフカの墓

晩秋のプラハ。 旧ユダヤ人ゲットーのあたりを歩きまわって フランツ・カフカの『変身』が浮かんだ。   若いセールスマンのザムザが、 朝、目覚めると毒虫に変わっている自分に 気づく不気味な小説。 「これが僕の高等学校、むこうの、 こっち側をむいた建物の中に僕の大学、 そのちょっと先の左側が僕の勤め先」と カフカは、小さな輪を二つ三つ描き 「この中に僕の一生が閉じこめられている」 と旧市街広場を見下ろしながら語っている。 結核のため世を去るが、 41年の生涯、 ほとんどプラ