16.紳士の証は硬くて黒い?

ワルツとルンバをようやく一通り踊れるようになった6月半ば、部活の練習終わりに部長からお知らせがあった。

「今月の最終日曜日に中部種目別戦っていう競技会があるから、その日はみんな予定あけといてね!」

競技会? 社交ダンスにも試合があるんすか?

「そうだよ。中部地区の5校が集まって種目ごとに順位を決めるんだ。」

あれ? 確か4校のはずじゃ・・・。

「静岡大学も中部の所属なんだ。試合の時だけ名古屋に来てもらってるんだよ。」

へぇ〜。それってどういう試合なんすか?

「今度の試合には2年生以上が出場できるんだけど、8種目それぞれの種目ごとに順位を競って、それぞれの種目のチャンピオンを決めるんだ。」

おー、なんかカッコいー!

「決勝に残れるのはそれぞれ6組だけなんだよ。」

狭き門すね。

「そう。だから1年生のみんなにも応援してもらいたいんだ。」

もちろんっすよ!

初めて観る試合を私は楽しみにしていた。

・・・

あっという間に試合の日が訪れた。

試合会場の瑞穂区役所のホールに集合した私であったが、いきなり度肝を抜かれる事となる。

部長が颯爽と登場した。

「みんな、おはよー!」 

おはようござい・・・

なっ、なんすかその頭!?


「えっ? そういえば見るの初めてだったっけ?」

部長の髪は中井貴一ばりに七三分けの上にカッチカチに固まっている。しかもテッカテカである。

カッチカチのテッカテカ。


「これが正式なダンスヘアーだよ。」

ダンスヘアー? 

「そう。競技ダンスは紳士淑女のスポーツだからね。」


みんなカッチカチのテッカテカなんすか?

「男たるもの硬さで勝負さ!

絶対に崩れないようにするんだ。

だいたいだけど、スタンダードの選手は七三分け、ラテンの選手はオールバックだね。」

マジか。いま平成だよ。

いつから時間止まっちゃってんのよ。


時代錯誤もいいとこである。

そしてラテンに出場する先輩が合流する。

確かにオールバックである。

やっぱりカッチカチのテッカテカ。


そして何故か

顔が日焼けしたようにまっ黒。


まだ海水浴には早いと思うんですけど・・・。

「これはドーランを塗ってるんだ。」

ドーラン?

「肌を黒くするファンデーションだよ。」

何でわざわざ黒くしてるんすか?

「ラテンはだいたいの種目が暑い国が発祥だからね。そういう国の人はみんな肌が褐色でしょ。」

はぁ・・・。

「それと黒い方が速くて強そうに見えるんだ。」

何だソレ?


いつか自分もこうするのかと思うと頭が痛い・・・。

もうすでにこの時点で、えらい世界に飛び込んでしまったと思っていた私であったが、その後さらに度肝を抜いたのは女性の方であった。


次回、満を持してのセクシー先輩!

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