25. タンゴの腰はグッと入れてビュン!

初めての競技会を観た3日後の練習では、タンゴとチャチャチャが新しく加えられる事となった。

「じゃあ、まずはタンゴから始めていきまーす!」

タンゴはさすがに知ってるっす。あれでしょ、アルゼンチンの?

「そう、もともとはアルゼンチンが発祥なんだけど、社交ダンスのタンゴは

“コンチネンタル・タンゴ”

っていってヨーロッパに渡って変化したタンゴなんだよ。」

へぇ〜、何が違うんですか?

「ダンスで言えばホールドや足さばきが全然違うし、最も違うのは演奏形態かな。アルゼンチンはバンドネオン、コンチネンタルはアコーディオンや管楽器なんだ。」

ふ〜ん、よくわかんないすけど。

「実際に踊ってる所はこの前の競技会で観たから、なんとなく雰囲気は分かってるよね?」

えっ、あっ、そうですね〜、アハハ。いや〜、カッコ良かったっすね〜、タンゴ。(覚えてないけど)

「・・・まぁ、そんなことだろうとは思ったけど、みんなにやってもらうのはベーシックのステップだから。とりあえず見本みせるね。」

はい、お願いしまーす!

部長とデヴィ先輩が見本を見せてくれるらしい。

2人はワルツと同じ、いや微妙に違うホールドを組む。

切れのいいスタッカートな4拍子のリズムに乗ってゆっくりと踊り出す。

しかし、ゆっくりなのは初めだけで、4歩目で女性の首が左から右へ180度、目にも止まらぬ速さで切り替わった!

首もげんじゃね?


そこからは正に圧巻で、力強くメリハリの効いた男性の足さばき、女性の首が取れそうな切り返し、そのすべてがドラマチックだった。

カッケー❗


「これが君達にやってもらうタンゴだよ。」

いや〜、いっすね〜タンゴ。

女性の首の返しがキレッキレっすね!


「あれは“リンク”っていって、タンゴの醍醐味さ。」

ホールドも習ったのと微妙に違うような・・・。

「おっ、良く見てるな。タンゴは回転や絞りが特徴的なダンスだから、エネルギーが伝わり易いようにホールドもコンパクトなんだよ。」

ほほぉ〜。(よくわかんないけど)

もう1人の変態、デヴィ先輩も声を掛けてくれる。

デヴィ先輩はセクシー先輩とは違い、シュッと細身のモデルばりの体型の持ち主だ。

「どう、タンゴは? ボクちゃん。」


はい、めちゃくちゃカッコ良いです!

(ボ、ボクちゃん!? 

オレはどんだけボッチャンに見られてんだ。まぁ、いいか・・・。)


「タンゴやりたくなったでしょ? ボクちゃん。」

はい! ところで首は大丈夫なんすか?

「首? あぁ、リンクのことね。

あれは首もそうだけど

腰の捻じりが大事なのよ。」


腰?

「そう。まず男性のがアタシの中にグッと捻じれて入ってくるの❤️」


おふっ。

「それから男性のがビュンッと返されるとアタシのがギュンッてなるのよ❤️」


・・・???

「なに? わかんないの?」

いや、擬音が多すぎて・・・。 

「私と一緒にやればわかるわよ💋」


えっ、いいんすか?

「でも、ボクちゃんはまずは腰の使い方を覚えないとね❤️」


いや、その前にステップを覚えないと・・・。

「グッと入れてビュンよ!  そしたらアタシがギュンッてなるの💋」


聞いてねーし。

やっぱりこのヒトも変態であった。

次回、チャチャチャもやるよ!


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