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【旅するデザイン思考】対極を往復するダイナミズムが齎す価値

最近クライアント1社の人事部門と複数年度に跨る人材育成プログラム策定にコンサルタントとして提言、参画し特にUXデザイン起点での人材の創造性強化に取り組んでいますが、また同時並行して別のとあるリモートツールの開発プロジェクトではプロダクトデザインとUXデザインにガッツリ取り組んでいます。ヒトづくりとモノづくり!(どっかで聴いたフレーズ…笑)の両方にバランスよく取り組めているのが嬉しい。またオリジナルのデザイン思考ワークショップを通じた「幸福脳(Happier Brain)」づくりの委託も相変わらず増加の一途を辿っています。そんな何足かの草鞋を履き替えながら奔走する、楽し過ぎる自分の最近の活動に通底するのは「2つの対極の間を往復することの重要性」です。今日はこの「対極の往復」について考察してみます。

■対極思考①:注視と俯瞰の往復

例えば一つに注視と俯瞰の往復。最近聞いたとあるデザイン思考ワークショップの失敗事例。ある日本の伝統技術を海外の様々な異文化と掛け合わせる企画だったようですが、結果、例えばタイやフィリピンの民芸品を日本の伝統技術で作ったらこうなる、みたいな「1 + 1 = 2」的なアウトプットにしか成らなかったというお話(掛け算にすらならなかったと委託した方が嘆いていた…)。私にはこの失敗の原因に「視点の立体的往復の欠如」があるように思えます。言わばこれは2次元の平面上で日本の伝統と他国の民芸をただ単純に重ね合わせただけに過ぎない。

もしココに少なくともミクロな視点とマクロの視点の間の往復運動があれば、日本の伝統技術にも海外の民芸にも“多元的視点”という係数が見出せ、仮にその係数がそれぞれ10であったとすればアウトプットは少なくとも足し算なら「10 + 10 = 20」に、もっとダイナミックに、掛け算にすれば「10 × 10 = 100」にも出来るはずです。だからこの事例のテーマだって、もし私だったら日本の伝統技術 × 異国の文化・民芸 ⇒「発掘されなかったオーパーツ展」なんて感じに発展させたい魅力的なテーマです。余談ですが、AppleのiPhoneで最も顕著に進化している機能の一つがカメラ。今私が使っているiPhone 13ProMaxの背面にもアホほどデカいレンズが3つもある。これも世界を創造的に捉えるために多元的視点が如何に重要であるかを物語っているのではないでしょうか。

カリフォルニア州ロスガトスの自宅にて

■“ヤンチャな”子供視点とオトナ視点の往復

さて次に思うのがコレ。あくまでヤンチャな子供ですヨ!元気の無い子供視点ではダメです(笑)。特にブレーンストーミングをダイナミックに行う際に必要な要素。ちょっとフォーマルな場では発言しにくいような、小学生が担任の先生を困らせようとして発するような挑発的で粗暴な表現も停滞気味の議論をブレークするパワーワードとして積極的に採用していく。当たり前ですがやっているのは飽くまでオトナたちなので、最低限のモラルを働かせた上で創造性を解き放つために邪魔になる箍を外していくことが大切です。

最近行ったワークショップでは「キャバクラをフリーチェックアウトにしてボッタクリを撲滅する」という極めて意欲的なテーマが議論されましたw!が、最終的にこの「キャバクラ」というパワーワードは「大人のメンタルケア」という極めてモラルの効いた価値ワードに翻訳されつつ、様々な興味深いアイデアに議論を生産的に牽引しました。つまり創造的な議論を求めるなら極めて高いモラリティの元であればポジティブな悪戯や、ある種の悪ふざけさえも許容されて良いというコトだと思います。

■抽象化と具象化の往復

ヒトの生活とは具象の世界で営まれている。だから人はつい具象思考に引っ張られる。でも本当は抽象的な思考の中にこそ具象世界で活かされるヒントが満ち溢れている。言い換えるなら具象とは結果的に与えられた形の一部であり、抽象とはその元となる可能性やより広義の概念であると言えるかもしれません。従っていくら頑張って具象の周辺をどれだけ駆け回ったところで拡げられる可能性には限界がある。抽象化とはその実態の裏に隠された重層的情報の顕在化による可能性の最大化であると。

前述の例で言えば「大人のメンタルケア」という抽象価値が具体化された一つの結果が「キャバクラ」ですw。例えば「船」とは何か?「水に浮く乗り物」?、確かに。でももっと抽象化すればそれは「安心感」や「未開の地の開拓」を意味したり、「(揺れ次第で)酔う」とか「漂う」(だから「ただ酔う」って読むのか!w)だったり「(溺れかけた)人を助ける」だったり「航海=後悔」とか。とにかく多くの側面が見えてきます。でも一方でいつまでも抽象化の中だけで堂々巡りしていてもダメです。フワフワした言葉遊びに終始してしまいますから、常に具象化も並行して試みるクセを付ける。この抽象化と具象化の間を縦横無尽に往復することが創造性に繋がるし、大袈裟に言えば人生に分厚い豊かさを齎してもくれると思います。

■What is “Disruptive”?(もっと単純で良くね?w)

やたらとDisruptiveというワードを聞く機会の多い昨今(笑)、最近の自分自身の活動を通じて“Disruptive”その本来意味するところを再確認しています。私が一番恐れるのはこうしたワードが一部の有識者と言われる人たちの専門性を担保するためだけの専門用語になること。SDGsとかレジリエンスとかスイス方面から突如降って湧いたようなバズワードが最近やたらとメチャクチャあります。なので私はそうしたキーワードを使うことを適度に控えつつ、もっと平易な言い方や考え方を実践するようにしています。

このDisruptiveの場合はそのまま翻訳すれば「破壊的な」ですが、例えばこれを生産性や創造性を求めて使う場合「破壊」は逆説的なモノの見方なり行動を示唆している。であるなら、より平易に「創る前にいっぺんぶっ壊してみる」とか「全く真逆から見てみる」「正反対のモノを突き合わせてみる」のように、素直に言ったりやったりしてみれば良いと。

最近ガッツリ推進している、ある未来的なリモートツール開発(まだ秘密w)で私が一番実現したいのは如何にして「アナログで時空を超える」ことが出来るか。デジタルが時空を軽々と超え得ることは既にこのパンデミック下で世界中の誰もが経験しその恩恵も遍く受けてきた。ではより手触り感のあるアナログ価値が時空を超えたなら、それはより未来志向でありながらも、より人間的感性に寄り添った経験価値を創造できるだろうと。これ以上はまだ言えませんが、また報告できる時期が来れば皆様にご案内したいと思います!

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