意中の相手はあなたを探してはくれない

…というと恋愛指南っぽいですが、さにあらず。
今回は声優さんやナレーターさんの「仕事の獲りかた」について書こうと思います。

私の会社は結構な数の音声CM(ラジオCMやオーディオアド)や番組を制作するので、定期的にオーディションを実施します。最近では「レギュラーメンバー」も充実してきたので回数は減っているものの、それでも年に6-8回くらいはやっていると思います。エントリー数は仕事の内容によりますが、少なくても30人。多いときは90人くらいのご応募をいただきます。

で、先日もオーディオコンテンツの男性ナレーターを募集しました。時間のない状況だったので今回は会社サイトには掲出せず、会社のTwitterアカウントのみで告知しました。瞬く間にRTされ、インプレッションはすごい数になりました。結果、今回も多数のご応募をいただきました。
残念ながら一次選考・二次選考の過程で脱落するかたもいますが、あくまで今回の案件とマッチしなかっただけで、実力あるな!と思う方もたくさんいらっしゃいました。そんな方にはご了承をいただいて、ボイスサンプルとプロフィールをそのまま預かり、マッチしそうな案件が出てきたときはお声掛けすることにしました。

久しぶりにTwitterでオーディション告知をしたときの爆発力を実感したのは、応募数やインプレッションだけではありません。フォロワーもグンと増えます。まあ元が少ないのでたかが知れているのですが。
でもこの新規フォロワーのなかに(或いは既にフォローしているなかにも)不思議な人たちがいます。

「フォローだけして応募してこない声優・ナレーターの人たち」です。

もちろん住んでいる地域が違うとか、性別が違うとか、声質がマッチしないとか、そういう人たちが応募しないのは分かります。でも例えば「冷静な語り口の男性ナレーター」を東京で募集したときに、東京在住で「落ち着いたトーンの声が持ち味です」みたいなプロフィールの人がフォローだけして応募してこないことがあるんですよ。あれが分からないんだよなあ。
しかもそういう方々のプロフィール欄を見ると「お仕事のご依頼はこちらまで→」みたいにメールアドレスが書いてあったりする。
仕事を探しているのなら、フォローだけじゃなくて応募してほしいなあ……と思うのです。オーディションに関係なく、売り込みでもいいのです。

今回はフォロワーが結構短時間に増えていったので、「どんな人がフォローしてくださったんだろう」と思い確認しましたけれども、基本的に会社のアカウントをフォローしてくださったかたのボイスサンプルを聴きに行ったり、ましてこちらからお声掛けすることはほぼありません
アイドルの卵を竹下通りで探している訳ではないので、オーディションにご応募頂いた方々のお声を聴くだけで精一杯です。ご応募いただいた時点である程度積極性とかは分かりますし、こちらが指定した形でのボイスサンプルや資料をいただけますから、そこから選ぶのが一番ハズレがないのです。そもそも制作会社の場合、声優さんやナレーターさんを探すときには「求めている声」が明確にありますから、ぶらぶらネットサーフィンをして「意中の声」をのんびり探すことなんてありません。

弊社は応募してくださった方々には可能な限り誠実に対応したいので、先述の通り「今回は不採用だけど資料預かり」のようなこともしますし、熱心な方には「ここをこう修正するといいですよ」とCMディレクターとしてアドバイスすることもあります。また弊社のレギュラーメンバーに比較的多いのですが、「売り込んできた→オーディションに参加させた→何回も落ちた→諦めず提案を継続→やっと決まる→そこからポコポコ仕事が決まる→いつの間にかレギュラーメンバーに」みたいな人も居ます。
メチャクチャ実力あるのに、最初の案件が決まるまで17回連続提案失敗、という人が現実にいます(この方の声をTVで聴かない日はありません)。20年以上続くアニメのレギュラー声優さんなのに、毎回弊社のオーディションにご参加いただき、新しいボイスサンプルができるとお送りくださる方がいます。やはり結果が出るかたは、攻めのプロモーションを続けていることが多いです。
そんな方々がいるなかで、「お仕事のご相談は→」とプロフィールに書いてオーディションには参加せず、制作会社のアカウントをフォローしてじっと待っているひとに、本当に良い仕事は来るのでしょうか?

たくさんの声優さんたちとお仕事をして、お話をして、彼ら彼女らのお仕事のなかには、非常に単価が低いもの(まあ弊社のCMだってそんなに高くはないですが、それとは比較にならない程の安さ)や、「実績になるから」という理由で出演料がない案件などもあると知りました。
私はそれが凄くイヤで、価格競合になったオーディション(つまり、お仕事の値付けを参加者にお願いする)でも「ゼロ円の見積もり(お金は要りません!という提案)は即失格」というルールで運用しています。
折角「声と音の世界で生きていこう!」と決めた同士なら、ちゃんとスキルや努力はお金にして欲しいし、いつかそれで食えるようになって欲しい。
だからこそちゃんとお金は払いますし、払ったぶんの要求(演出など)はします。ちゃんと「仲間」になってほしいのです。

いい仕事を見つけて、そこに挑戦して、いつか結果を出して
それを実績としてさらに売り込んで、どんどんいい仕事を獲っていく。
そんな姿勢が、あなたの未来を切り拓くのだと思います。
どうぞ頑張ってください。
(もちろん、プロモーションだけ熱心で技量が低いまま向上しない人はダメですよ!)

ちなみに、オーディション突破のヒケツも書いていたりします。
https://7-inc.net/work-blog/audition_tips/

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