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楽問のススメ① 2024共通テスト国語・古文①

私が尊敬する野口悠紀夫先生が「シニアの勉強は最高の贅沢」とおっしゃっている。なるほど、と思った。

人生をやり直せるとしても、勉強はやり直したいが受験勉強はもうたくさんだ。そして、出世にも金儲けにもさして関心がなくなったいま、野口先生の言葉が腑に落ちる。

勉強は本来、楽しいものである。
すなわち、学問は楽問である。

ここでは受験勉強の代表格である大学入学共通テスト(旧・センター試験)をとりあげてみよう。なお、私の世代はセンター試験の経験すらなく、国立大学は個別の第1次・2次試験が普通であった。

私は理系出身なので、文系科目には疎く、同時にあこがれのようなものさえ感じている。そこで国語、特に古文からみてみよう。

なお、最初に断っておくが、本記事は「受験勉強に全く役にたたない」ことを宣言しておこう。だからこその「楽問」である。(笑)

従って、受験生の方々はその道のプロの指導に従ってくださいね。


2024年の古文の出題は、天野政徳『草縁集』の「車中雪」から。
幸い、Bran-Co渡辺様が解説をしておられる。
出題された物語の現代語訳はこれを参照されたい。

江戸期の擬古文であるが、平安時代に思いをはせて読むとよいと思う。

月と桂

Bran-Co渡辺様の記事から一部を引用させていただくと、

・ここもまた月の中なる里ならし雪の光もよに似ざりけり
(ここもまた月の中にある里であるらしい、雪の光も世に似ていないことよ)

・名に負ふ里の月影はなやかに差し出でたるに、雪の光もいとどしく映えまさりつつ、天地のかぎり、白銀うちのべたらむがごとくきらめきわたりて、あやにまばゆき夜のさまなり
(名高い里の月の光ははなやかに差し出したので、雪の光もいっそう映え増しつつ、天地の限り、白銀を延べたようにきらめき輝いて、むやみにまぶしい夜の様子である)


出題文中にもあるように、地名の「桂」と「月」には中国の神話がからむ因縁があり、古人はそのことをよく理解していたようだ。

こんな神話があるそうだ。

月には桂の巨木が生えていると考えられていました。『酉陽雑俎(ようゆうざっそ)』によればその高さは五百丈にもなるとされ、この鏡では表されていませんがこの桂の木を伐り続ける呉剛という人物のことが記されています。彼は仙術を学んでいたが罪を犯し、罰として孤独で寒い月世界で傷つけてもすぐ治ってしまう桂樹を永遠に伐り続けているとされています。これらの説話からわかるように、月は不老不死や神仙と関わりが深い場所なのです。

天理参考館

五百丈とは約1500mとのこと。
実際のカツラは数十メートルにもなる高木であるが、神話の「桂」は金木犀のことらしい。そういえば月桂樹というのもある。ここでは植物学的な議論はおいておこう。

名に負ふ里の月影 → 「桂」の生える里 → 月面のように明るい異世界
という発想なのだろう。(設問の選択肢となっている)

桂男


上記の「桂の木を伐り続ける呉剛という人物」は桂男(かつらおとこ)という別名もあり、イケメンだという説もあるそうな。


このように物語の背景を知ると、勉強も楽しさが増す。
いわゆるトリビアですね。


次回は、知っているようで実は知らなかった平安時代の貴族専用車「牛車(ぎっしゃ)」について調べてみたい。


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