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楽問のススメ⑤ 2024共通テスト日本史B

この記事は、大学入学試験共通テストに出題された問題の中から、私がもっと知りたいと思った項目をピックアップしたものです。
従って受験技術的には全く役に立たないかも知れませんので念のため。(笑)


2024年の共通テスト 日本史Bから「食」関連の話題に注目。
問題と解説は、ここを参照。


第2問(問1)は、古代の炊飯用の土器について。
甕(かめ)と甑(こしき)、どっちがどっち?

甕(かめ)は何となくわかるが、その前に、壺(つぼ)とどう違うの?
口が広いのが甕(かめ)、狭いのが壺(つぼ)らしい。


甑(こしき)というのは、現代のセイロ、つまり蒸す道具だ。
米などの穀物は古くは雑炊のように煮て、時代が下ると「おこわ」のように蒸して食べていたそうな。

甑(こしき)は蒸し器だから、底部には蒸気を通すための穴があいている。

甕(かめ)など湯を沸かす器具とともに用いる。甑の内部の底にすのこやざる、布などを敷き、その上に米などの調理物を入れる。これを湯を沸かす甕の上に乗せて調理を行う。

・・・甑の形状は時代とともに変化し、5世紀頃の甑には複数の穴が開いていたが、6世紀から7世紀頃の甑は大きな穴が一つだけになり、底部に簾やざる、布などを敷いて米を入れるようになったため改良されたものとみられている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/甑

ということで、底に穴があるほうが甑(こしき)。

古墳時代には、ポータブル竈(かまど)の上に湯をわかす甕(かめ)をセットし、その上に甑(こしき)を置いて蒸していたようだ。



第2問(問2)は、租・庸・調のうち、調の品目の一つである「塩」の問題。

「塩」は人間生活にとって必須ミネラルであるから、時代・地域にかかわらず採取・製造されてきたはずだが、納税していたのは中京地区以西が多い。
製塩に有利な土地が多いのだろう。
(下記、丘陵人の叙事詩「都にもたらされた特産物」の図参照)



第2問(問4)は、乳製品である「蘇(そ)」にまつわる出題。
蘇(そ)については、国史大辞典に以下の記述がある(そうだ)。

奈良・平安時代に食用・薬用・供饌用として作られた乳製品の一種。酥とも書く。当時の乳製品には酪・蘇・醍醐の三種があったが、そのうち蘇は、現代のクリーム、コンデンスミルク、バターの類に相当する。

蘇の製法については、『延喜式』『本草綱目』『斉民要術』および仏典などに記載されているが、大別すれば、
(一)牛乳に熱処理または若干の加工を施して作る方法と、
(二)牛乳を発酵させて酪を作り、その酪をさらに加工して作る方法
とがある。

蘇はほぼ日本全国で生産され、『延喜式』民部省にはどの国がいつ蘇を貢進すべきかを記した貢蘇番次がみえている。諸国から貢進された蘇は、中務省被管の内蔵寮に収蔵され、大臣大饗などの際に蘇甘栗使が差遣されて、これを賜わった。

また、供御および三宮に供する牛乳および乳製品は、宮内省被管の典薬寮に属する乳牛院がこれを掌った。奈良・平安時代における乳製品の使用は、保元・平治の乱以後、一時廃絶に帰してしまった。

https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000109582&page=ref_view


ただし、蘇(そ)の実態(物性)については諸説あるらしい。
いずれにしても、それは貴族専用であり、医薬品のような位置づけだったという。


蘇の中央への貢進体制については、以下の文献に詳しい。
http://jshm.or.jp/journal/28-3/352-362.pdf

奈良時代、貴族社会における蘇の需要増大とともに、諸国を6つのグループに分け、6年おきに蘇を献上するように定めた。

・畿内・志摩国・飛騨国・出羽国・佐渡国・隠岐国については「蘇」は免除
・当番にあたったグループの納期は11月(出雲国は12月)まで
・西海道(九州)は太宰府経由で納入

なので、
・近江国は献上義務のある地域
・西海道(太宰府)の納期が正月行事に間に合っていないのはルール違反
ということになる。


なお、上記文献には、史料2「小右記」のエピソードの後日談がある。

正月二十日に摂政藤原兼家家で大饗が催されることになり、本来であれば朝廷から蘇と甘栗が兼家家に支給されるはずであったが、兼家家に遣わされた蔵人主殿助藤原挙直は甘栗のみを持ち、蘇を持っていなかった。
それは、西海道つまり大宰府からの蘇がいまだ届いていないためであった。

鎮西(大宰府)からの蘇は二十日の夕方に到着した。二一日に再び勅使藤原兼隆が藤原兼家家に遣わされ、蘇が賜与された。

佐藤健太郎「古代日本の牛乳・乳製品の利用と貢進体制について」



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