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置いてかれた物、雨。

昨日家の中にある不用品をいくつかメルカリに出品したら、今日までに2点売れた。まさかそんな早くに売れるとは意外であったので嬉しかった。もっと早くから出品をしていけばいいとも思った。5月から民泊施設を管理する者として働いているのだが、そこでは宿泊客が置いて行った不要品が結構な頻度で出てくる。忘れ物は一旦保管しておくが、そのほとんどが取りにくることもなく保管しぱなしになる。中には普通に使えそうなものが捨てられていたりするので、非常にもったいない。よくあるのは、充電ケーブルや、衣服類、お菓子に、おもちゃなど。おそらく持って帰るのもめんどくさくなったようで、処分してほしいようだ。民泊に泊まるのは基本旅行客なので、なるべく荷物を減らしたいのだろう。おかげで今までたくさんの置いていかれた不用品を捨ててきた。そういったものもちゃんと保管して、メルカリ等に出品してやればよかったのだ。それに今更気付いてしまうなんて、少しの後悔が残る。


同時に今気づくことができたという可能性もまた広がっている。今までこの民泊清掃に出てくるゴミはただのゴミでしかなかった。そのゴミたちに価値を見出してやれそうな希望が膨らみ始めた。その希望が萎むことなく育ててやれたらいい。そううまくいくことも少ないかもしれないが。うまくいかないことがふと頭によぎることで、失望してしまうことに保険をかけてしまう悪癖が垣間見る。それでも自分は希望を持つことにしたい。いくら誰がどう言おうとも。


とりあえず出品した方がいいものが山ほどある。もうどうせ捨ててしまうものだ。もちろん貴重品等が忘れられていたらこの限りではない。ちゃんと上司に報告して預けるようにしてある。過去に財布を忘れていたことが2件あった。そのうちの一つは、結構な重厚の長財布で、こんなものを忘れたら一瞬で気づくものだろうが、チェックアウトしてからしばらくの間放置されたままだった。部屋の中を掃除して、ふとその黒い財布があることに気付いたのだ。少し中を見てみると、中にはそれなりの金額の札と、免許証などの本人確認書類が入っている。普通に普段使い用の財布だ。見つけてすぐに上司に連絡をする。とりあえず確認をとるから、しばらくは自分で保管してくれとのことだった。


自分はすぐに上司に預ける気でいたから、そう言われたのが意外だった。これでもし自分に魔が刺して、財布の中からいくらか失敬してしまう可能性を上司は考えなかったのだろうか。実際そんなことはしないのだが。すぐに一般の人が手の届かないポストへと入れてしまった。ずっと手にしていると魔が刺してしまいそうで怖かった。しかもその財布は次の日まで保管されぱなしで、となると落とし主もその日1日は落としたことに気付いていなかったのかとも推測できる。次の日の昼間くらいに、社長が顔を見せにきて、財布はどんなものだったのかを聞いてきた。自分はてっきりもう事務所の方に行き渡っているかと思っていたので、今更感があった。とりあえずポストの中に入れておきましたよと素直に伝えて、その後はどうなったのか知らない。


それにしても財布を忘れてしまうとは、よっぽどバタバタして出て行ったものと伺える。不注意がひどい自分でも、財布と鍵とスマホは常に持っているかの確認を怠らない。財布を忘れてしまうなんて、朝のフライトに間に合いそうになかったのだろうか。札幌から千歳空港までは40キロの距離があり、地味に遠かったりする。片道だと電車で1000円くらいしたんじゃなかったろうか。あまり千歳便に乗ったことがないので忘れてしまったが。しかしもっと近かったイメージだが、全然そんなことはないわけである。なので朝に千歳から出発して帰るとすると、結構早くにチェックアウトを済ます必要がある。そう考えると、いつもチェックアウト後の部屋の散らかり具合に辟易していたのだが、理由を知ればまあまあ納得してしまう。


こんなことを書いている間に雨が降ってきた。結構な勢いの雨音である。ちゃんとした本降りのそれである。札幌で雨が降ると気温が下がるので、真夏だとありがたいのだが、今はもう十分に涼しいので、その辺にしておいてもらいたいものである。しかし天気にいくら希望を願ったところで、神はお構いなしに天候を決めてしまうに決まっている。どれだけ神聖に雨乞いを行っても、純朴な子供がてるてる坊主を窓際にぶら下げようとも、晴れ男が群れとなって集まっても、降る日は降るし、晴れの日は晴れである。これを理不尽と感じてしまうのは、自分が希望した通りに事が済んでくれるという傲慢さが露呈していると言っても過言ではない。


最近の自分は、どれだけ自分の意図通りに事が運ぶかに気を取られすぎだ。少しカッコ悪くて、楽しくなくて、もっとちゃんとしてほしい。心の底で傲慢を保つのは非常につまらない未来が予測される。その未来を変えていきたいと思うから、もうあまり自分の希望とか失望とか、もう考えない。



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