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リアル休日

頭が痛い。寝過ぎたせいで痛いのか、まだまだ寝足りないから痛いのか。数時間前にバファリンを一錠、試しに飲んでみたが、完全に治りきっていないようだ。今日は完全なるオフの日で、朝はゾンビのようにだらけていた。もうゾンビのようにだらけるしか自分のできることはなかった。無気力の極みの中心にいた。天気は晴れで、涼しい風すらも吹いてくる札幌で、自分はひたすらに閉じこもっていた。そして胸の奥にひっそりと罪悪感のようなものを飼い慣らしていた。


こんなに晴れ晴れした休日に自分は、ロクでもなく行動することを拒否して自宅に引きこもっている。何かを望むことなく。何かを得ようとすることなく。別にそんなこと、罪でもなんでもない。休日なんだから適当に過ごせばいい。しかし自分の中にあるクソ真面目精神が、一ミリでも顔を覗かせて、お前そのままでいいのかと問いかけてくる。いや、良いに決まっているのだ。自分は8月の繁忙期のおかげでほとほと疲れたのだから。お前は黙って引っ込んでろ。と無理やりにクソ真面目野郎を心の奥にしまっておく。そして静寂が訪れる。


二度寝しようとベッドに潜り込んでみるが、いくら眠ろうとしてもなんだか寝付けない。とりあえずは体力も回復しているみたいだ。身体の方は少なくとも、俺はいつでも動いてやるぜと準備万端であることを示してくる。いやいいんだ。今日は部屋でできることをやってしまいたいのだ。そう考えても、やりたいことなど皆無だったりする。昨日ジュンク堂で買ったファッション雑誌も全く読む気がしない。部屋の片付けは昨日の段階であらかた済ませてしまった。読書もやる気が起きない。自分が書いたnoteの日記を読み返そうしたが、内容がつまらな過ぎて2つくらい読んでやめてしまった。


昼間はスーパーに行った。昼飯を食おうとしたが冷蔵庫にもやししかなかったので、仕方なく外出した。もう自炊する気なんて1%も残っていないのだが、外食するにしても昨日は回転寿司のトリトンに行ったこともあって、家で食べてしまい気分だった。適当なマグロとかブリを適当に買って、適当に切って刺身にして適当に食べた。全てが適当だったのにも関わらず美味かった。流石は北海道と言わざるを得ない。しかし一緒に買ったアルゼンチン産の赤エビ、コイツが人生で食ったエビの中でダントツに生臭くて食えたものではなかった。一口食べて、身体が拒絶するくらいの臭みが口全体に広がった。あまりに臭くて、パッケージを確認する。ちゃんと刺身用と書いてある。その横に(解凍)と書いてあるが。以前生ホタテの解凍したものを食べたことがあるが、あれも生臭かった。解凍品には注意しなければならない。赤エビは残念ながら殻を剥いて盛り付けた飯ごと捨ててしまった。


とりあえず腹は満たされた。午後に何にもない時間がただ過ぎていく。眠りたい。自分は眠りたかった。そして部屋の真ん中で死体のように寝そべって、自分は死体だと言い聞かせてみた。すると身体の力がスッと抜けていくようで、本当に意識が遠のいていった。悪くはない感覚だった。力が抜けていくと同時に、最近の記憶がいろいろと脳裏を駆け巡った。札幌に来た時のこと、新しい仕事を見つけたこと、職場の近くに引っ越したこと、引っ越しの時期と繁忙期が重なり疲弊したこと、仕事で重大なミスをして叱られて凹んで凹みまくったこと、クソ忙しい中で飲み会がありカラオケ館で散々歌ったこと・・・。


そうだ、カラオケに行こうと思っていたのをすっかり忘れていた。だいたい自分は休日を利用してカラオケに行くことが多い。歌うのが好きということもあるが、普段あまりにも人と接することが少ないので声を出しておきたいという合理的な理由もある。外に出ないと決めていた、死体になりきっていた自分が急に稼働し始めて、立ち上がった。そして外に出た。


カラオケというものは皆んなでわいわい楽しく歌う場所だという認識が昔はあった。しかし今の自分にとってカラオケとは、一人でただ真面目に曲を選び、まるで試練のように歌う場所でしかない。もはや楽しみに来ているところではなかった。ジョギングや筋トレと同じだ。ずっと何もしないと身体がしょぼくれてしまうので仕方なくしている。どうせ誰も観てやしないので、めちゃくちゃマイナーな曲とかも歌ったりする。好きなバンプのアルバムまるごと一枚分通しで歌ったりする。歌っているときの自分は、おそらく真顔だ。たんたんと処理していく。うまいか下手かもわからない。多分下手だと思う。楽しんでいないから。これはある種カラオケに対する冒涜ともいえる。


およそ2時間半歌い続けた。散々声を出した自分に、何も残っているものなどない。真の抜け殻だった。もう早く帰りたかった。自己嫌悪が湧いてきて、なんだか嫌になった。でも腹が減っていた。マイカリー食堂でカツカレーを食べて、家に帰って速攻で寝た。起きたら夜の9時になっていた。そしてこれを書いている。このあと昼飯の刺身の残りを食べて、もう一度寝て、明日から仕事に励むことにする。自己嫌悪は少しだけ消えていた。

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