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ひたすらに交流の話


札幌に住み着いて三ヶ月が経ち、それでも友達ができることなく、ただこうして淡々とnoteに文字を連ねる日々が続いていた。これからもそんな感じで、人と深く関わることがどんどん怖くなっていき、閉じこもってしまうことに対して抵抗の意志すらも示せないくらいだった。昨日まではそうだった。

しかし昨日は違った。昨日行われた会社での飲み会でべらぼうに人と話すことが増えた。自分が勤めている民泊運営会社での飲み会だった。会社と言っても、10人もいない小規模な組織である。そしてわりとグローバルな人たちで構成されている。日本人は自分しかいない。そんな人たちとの飲み会だった。

一次会はまあ普通にカラオケ館のだだっ広い部屋で歌って呑んでを楽しむ、わりと平和な時間であった。一次会からカラオケも珍しいものだと思ったが、まあこれはこれでアリだった。夜7時から始まり、だいたい10時くらいに解散した。しかし本番はそのあとだった。


普段真面目な感じの社長がフラフラになりながら二次会に行こうと言い出し、どこの誰かもわからん人に連絡を入れ始めた。解散して数秒後のことである。そして狸小路にあるドンキホーテで、先ほど電話をしたであろう男性と合流する。南に向かい、商店街から外れてすすきの方面に向かいだした。解散したメンバーの半分はそのまま家に帰り、半分はなんとなくついていく形となった。


その時の社長の目を見れば一目瞭然の泥酔具合だった。泥酔しているが、別に歩けないとかではなく、普通にテンションがおかしかった。我々は社長がよく行くとされるすすきのにあるバーに入った。


バーと言っても、自分が想像していた落ち着きのあるバーではなかった。クソデカ音量のヒップホップミュージックが流れている、至っての落ち着きのないバーであった。大人びた雰囲気に任せてしっぽり呑むなんて1秒も許されない空間であった。そしてひっきりなしに若者が店の中に出たり入ったり、ナンパしたりナンパされたりしていた。そんなところだった。


こういう店に来ることはあまりない。普通のショットバーくらいならば多少はあるが、こんな露骨なところはまずない。露骨とは一体どういう意味なのかというと、もう雰囲気が男女の会合を受け持つところのそれである。女性たちはいかにもな露出度の高い服を来て誰か話しかけてこないかを待っている。男たちは自分の座っている席の近くに可愛い娘が来ないかと待っている。あちこちで皆んなスマホをいじってアイコスをスパスパしたり、複数人の女性に対してゴリゴリに距離を詰めて話しかけたり、友達同士で来てはしゃいだり、そんなこんなでとりあえず交流が生まれている。


そして渦中の社長はというと、これまためっちゃ女性に話しかけていた。もう人に話しかける時に生じる恐怖心とかドキドキを全部落としてきたようだった。誰かと関わりたくて仕方がないのだと、身体全体で表現していた。
自分はとりあえず他のみんなと話しながら中央のテーブルに座った。いつも事務所で働いている女性と話をしたのだが、社長は週末になるといつもすすきので酔いつぶれているとのことだった。今日だけが特別ではないようだ。そして彼女は一次会の時点でハイボールを12杯呑んでいたのに泥酔することもなく楽しげであった。この空間は楽しんだ者勝ちのようだ。


そしてこの空間はまたしてもたくさんの国々の人たちで溢れていた。まず社長は台湾人、事務の女の子はタイ人、たまにヘルプで現場に来てくれる男の子は中国人、そしてうちの会社の人たち以外にも、ドイツ人、インド人の男性が来ていた。もう書けばキリがないのだがグローバルであった。男女のあれこれが行われている点を除いても非日常溢れる空間であった。男女のあれこれといっても別にやましいわけではない。あくまで普通にコミュニケーションをとっているだけだ。たまに度が過ぎて女性に抱きついている奴もいたけれど。


社長と目があった。あちこちでフラフラしていたのに、急にこちら来て肩を組み始め、一緒にナンパしましょうと言ってくる。ふざけている。こんな内向的奥手人見知り毎日note更新野郎にナンパできるわけがなかろう。いや自分は明日仕事なのでそろそろ帰りますと言っても、いや仕事よりナンパ、酒が大事でしょとわけわからん説得をしてくる。普段なら絶対言わないセリフだ。社長がこんな面白人間だとは思わなかった。ナンパはごめんだが、酔っ払った社長は面白い。そして時刻は0時を超え、とりあえず店を出た。


もうみんな疲れたしたくさん呑んだし、さすがに帰るのかと思いきやすぐそばにあるバーらしき店に社長が入り、みんな後に続いていった。ここでまさかの三次会である。いや絶対もう帰る流れやったやん。家ってどっち方面だろうかとかラーメンが食べたいとか話してたやん。さすがについていく気にはなれず、帰ることした。


家まで歩いて15分だった。改めて立地がいい場所に住んでいるとこの時初めて自覚した。世界中から観光客が押し寄せる札幌の、ど真ん中にある歓楽街すすきの。そこから歩いて10分で家に着く。終電も気にせず気楽なものだ。腹が減っていたので深夜まで営業しているラーメンを食べた。美味かったが、どうしても地元関西のラーメンが食べたくなり、立地がいい場所に住んでも地元が恋しくなるもんだと少し思った。

昨日はそんな感じで締め括られた。今日、二日酔いで仕事に行き、取り返しのつかないミスを二回ぐらいやらかしそうになった。ギリギリのところで食い止めたのだったが、今でも心臓がバクバクするレベルのミスだった。仕事の前日は飲みすぎないことを心がけたい。


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