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従業員の安全と事業の継続のために必要なこと、テレワークを導入する際に気をつけるべきこと

[1]政府は出勤者を最低7割減らすよう要請しています

すでに、政府は、先行して緊急事態宣言の対象となった東京など7都府県の事業者に対しては、出勤者を最低7割減らすよう要請しています。

さらに、岐阜県の隣りの滋賀県では、「滋賀5分の1ルール」を提唱して、出勤を週5日から1日に減らすなどの対策を呼びかけています。

こうした要請は、あくまで自発的な対応を促すものであり、従業員を出勤させること自体は違法ではありません。

[2]感染防止対策は安全配慮義務や事業の継続との関係で必要不可欠です

とはいえ、事業者(使用者)には、従業員(労働者)に対する安全配慮義務が課されています(労働契約法5条)。

労働契約法
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

また、事業の継続のためにも、従業員の感染防止は重要です。

私はかつてテレビ局に勤めていましたが、放送業界でも、いちはやくテレビ東京は、2月の段階で出社率を5割にし、さらに3月27日以降は、全社員の7~8割は出社せずに通常の放送を続ける体制に移行しています。

これに対し、テレビ朝日は危機意識が低かったのではないのか、との指摘もあります。

事業者としては、従業員が感染しないよう、テレワーク、時差通勤など、感染防止に向けた柔軟な働き方を検討しつつ、やむなく出社させる場合にも感染防止策を講ずる必要があります。

では、具体的にどのような対策を取ればよいのでしょうか。

[3]感染の拡大防止に向けた具体的な対応策とチェックリスト

厚生労働省は、3月28日に、日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会、日本労働組合総連合会に対し、新型コロナウイルス感染症の大規模な感染の拡大防止に向けた職場における対応について要請しています。

下記のリンク先の各団体への要請文があります。この要請文には、具体的な対応策が示されています。

さらに、厚生労働省は「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を出しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000616869.pdf

このチェックリストを参照しながらとるべき対策をしっかりとることが、従業員に対する安全配慮義務を果たし、しかも、蔓延期においても事業を今後も継続していくために必要なことではないでしょうか。

[4]テレワークを導入する際に気をつけるべきことがあります

それでは、テレワークを導入する場合には、何に気をつける必要があるのでしょうか。

労働基準法等法令の適用について気をつけるべき点については、厚生労働省が「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」にまとめています。

厚生労働省は、このガイドラインにおいて、テレワークを行う場合であっても、労働基準法上の労働者については、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることを明確にしています。

その他、ガイドラインでは、労働条件の明示、労働時間の適正な把握等労働基準法上の留意点、長時間労働対策、過重労働対策やメンタルヘルス対策等の労働安全衛生法上の留意点などもまとめられています。

テレワークを導入する場合で、就業規則の必要的記載事項に変更が生じる場合は、就業規則の変更が必要になりますし、そうでなくとも、人事労務上のトラブルを防止するため、労働条件を明記するために、就業規則を変更することが望ましいといえます。

厚生労働省の「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」のQ1-11にも、次のような記載があります。

 テレワークを導入する場合には、就業規則にテレワーク勤務に関して規定しておくことが必要です。
 この場合、就業規則本体に直接規定する場合と「テレワーク勤務規程」といった個別の規程を定める場合があります。
 いずれの場合も、テレワーク勤務に関する規定を作成・変更した際は、所定の手続を経て、所轄労働基準監督 署に届出することが必要です。
 例えば、テレワーク勤務について、就業規則に次のことを定めることが必要です。 (ただし、従業員が常時10人以上の場合です。)
・在宅勤務を命じることに関する規定 
・在宅勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
・通信費などの負担に関する規定
なお、就業規則の作成・届出義務がない会社では、前述のことについて労使協定を結んだり、労働条件通知 書で労働者に通知したりすることが必要です。

この「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」は、下記リンク先(厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」)から入手可能です。テレワークを導入する際に、労務管理上気をつけるべき点についてひと通り網羅しています。

また、変形労働時間制や時間外労働のみなし労働時間制、フレックスタイム制など一定の労働時間制を導入する場合や、テレワーク勤務において通常と異なる休憩時間を設定する場合には、労使協定を結ぶ必要があります。

なお、時差出勤については、労使の合意により始業・終業時間を変更することやフレックスタイム制を導入することが考えられます。












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