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昔ばなし

昔昔、あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。

そしてその当時よりもほんの少し昔、あるところ(これは少し離れた場所にございます)に、お兄さんとお爺さんが住んでいました。

さらにそれよりも少し後(これも同じくらいの昔と言っていいでしょう)、あるところ(これはほとんど同じ場所といって構いません)にも、お爺さんとひい爺さんが住んでいました。

そして更にずっと後(といっても、昔昔の話には変わりありません)、あるところ(これは先ほどの場所からは結構離れた場所にございます)に、お婆さんと別のお婆さんが住んでおりました。

それからこれはずっと昔(昔昔昔と三つ昔を並べても構いません)、あるところ(これはわたしもどこなのかわかりません)に、ひい爺さんとヒイヒイ婆さんが住んでいました)。

そして、この地の言い伝えによりますと、更なる昔(大いなる昔と呼ばれていました)のこと、あるところ(これは二番目にわたくしがお話した場所から、西に山一つ隔てたところにございます)に、大爺さんと大婆さんが住んでいました。

その後ずいぶん経ち、大爺さんと大婆さんが亡くなり、ひい婆さんとヒイ兄さんもまた息を引き取った頃(これも昔昔のお話でございます)、あるところ(古いお話なのでわたくしも失念してしまいましたが)に、ヒイヒイ姉さんとひい叔父さんが住んでいました。

そして当時を遡ること三年後(いずれにしても大昔です)、あるところ(いまの東北のあたりと言われています)に、大ひい叔父さんと大ひい兄さんが住んでいました。

…さてさて。ある朝、この大ひい叔父さんが山に柴刈りに、大ひい兄さんが川に洗濯に行きました。だからといって、このお話はどうということでもないのです。そんなことよりも…

わたくしが冒頭で申し上げました、昔昔の時代とちょうど同じ頃、あるところ(冒頭で申し上げました場所)に、(冒頭で申し上げました人ととてもよく似た、但し別の)お爺さんと、お婆さん(冒頭で申し上げました人と同一人物)が住んでいたのです。

昔話は続くのです。だから、昔話は楽しいのです。

(終)

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