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【小説】「春嵐」全12話完全無料

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多川節子は、高等学校卒業後の進路に 東西医科大学附属の看護学校を選んだ。 その時の進路指導の教師の言葉が、 多川節子の耳に焼き付いている。 彼はこう言った。 「看護婦の社会的地位… もっと読む
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【 小説 】 「 春嵐 」 #12 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 最終章 松田吾郎の在外研究 松田が東西医科大学産婦人科教室の助教授になって1年が過ぎたとき 松田の在外研究の話がもち上がった。 期間は2年間で、行き先はアメリカ合衆国ハワイ州である。 節子は、助産婦学校に転職して1年。 何とか担当の教務をこなしながら 岐阜中央学院大学の通信教育学部の勉学の日々を送った。 履修は、社会福祉コースで、様

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【 小説 】 「 春嵐 」 #11 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「 投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「 投げ銭 」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 終章 松田吾郎と多川節子の結婚 節子は、松田との再会から1ヶ月が経って やっと松田プロポーズを受ける気持ちになった。 気持ちが固まるまで、ウジウジと考えた。 ( 紆余曲折あったけれど、松田吾郎との出会いは運命である。 生涯のパートナーは、やはりこの人である ) 決心はついたが、しかし、松田に面と向かい合うのがためらわ

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【 小説 】 「 春嵐 」 #10 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「 投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「 投げ銭 」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第9章 はるか遠くにムベの花 ④        「 多川節子、 船山和雄院長のもとを去る 」 節子は、助産婦学校の吉川教務主任から 松田先生の生い立ちなど長い物語を聞き終えた。 そして、深く頭を下げて吉川師のもとを辞した。 舞い上がったような、戸惑ったような複雑な気持ちのまま 船山産婦人科クリニックに戻った。 助産婦学校講師

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【 小説 】「 春嵐 」 #9 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第8章 はるか遠くにムベの花 ③       「 吉川師は語る、松田吾郎の生い立ち 」 「 肝心要の、松田吾郎先生のことをお話しましょうね 」 助産婦学校の吉川蘭子教務主任の話は続く。 松田吾郎は3歳になったばかりの時、両親と死別した。 両親は交通事故でなくなった。 松田には両親の記憶は殆どない。 慌ただしい葬式の様子がきれぎれに残っ

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【小説】「春嵐」 #8 (全文無料)(投げ銭スタイル)

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第7章 はるか遠くにムベの花 ② 「 吉川師は語る、長い長い物語 」 多川節子は、ためらいがちに、 「 あの……少し時間をいただけますか 」 松田の言葉の間にそっと入った。 ( よくよく考えて、誰かと相談してから…… ) 松田は、ハッとしたような表情を見せた。 そして、ゆっくりと言

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【小説】「春嵐」 #7 (全文無料)(投げ銭スタイル)

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第6章 はるか遠くにムベの花 ① 「再会」 船山産婦人科クリニックで多忙な仕事に気力、体力を注いでいる内に 節子は次第に松田吾郎のことを忘れていった。 1年あまりが経過したある日のこと 東西医科大学附属助産婦学校の吉川蘭子教務主任から電話がかかってきた。 ( 久し振りの電話。何かしら? ) 節子は、いぶかしく思いながら、事務室の電話に出

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【 小説 】「 春嵐 」 #6 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第5章 多川節子の休暇 船山産婦人科クリニックでは、5月、6月、10月、11月のお産が多い。 冷房の普及が十分でない時代のことである。 7月と8月はお産が少ない。 12月と1月も慌ただしい季節であるためか少ない。 寒い2月も敬遠されている。 女性達は学習して計画的に産むようになっていた。 7月20日過ぎ、雷鳴がとどろき長い梅雨が明け

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【 小説 】 「 春嵐 」 #5 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「 投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「 投げ銭 」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第4章 船山院長と咲子夫妻に男児誕生 船山和雄院長と咲子夫婦に、めでたく男児が誕生した。 お七夜の祝いは賑々しく、宴も華やかに執り行われた。 船山産婦人科クリニックの後継者になるかもしれない長男の誕生である。 自宅の八畳二間の境の襖を取り払い、祝宴の長テーブルを並べ 仕出屋 川魚屋 から特別料理が運び込まれた。 咲子さんの両

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【 小説 】「 春嵐 」 #4 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「 投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「 投げ銭 」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第3章 松田吾郎の結婚 船山産婦人科クリニックの午後の診療が終わった。 節子が事務室で咲子さんの実家からのお土産の和菓子をいただいていると 院長が話しかけてきた。 「 九龍会病院の松田先生が結婚するらしいよ 」 外来の受付には人影はない。 看護婦たちは2階の詰所に集まっている。 ( 何でこんな場所でそんな話を持ち出すの? )

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【小説】「春嵐」 #3 ( 全文無料 )( 投げ銭スタイル )

「 投げ銭 」スタイルのnote記事となってますが  小説の全文を無料で公開しています 「 投げ銭 」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第2章 船山産婦人科クリニック開院 城山台の開発が完了し、住宅建設が始まった。 同時に、船山産婦人科クリニックの建設も着工した。 多川節子は、進捗状況をみるため何度か現地を訪ねた。 船山院長は、連日の様に足を運んでいるようであった。 着工から1年近くが経って、クリニックの建物が完成した。 建物の被いが取り除かれ、当時として

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【小説】「春嵐」 #2 (全文無料)(投げ銭スタイル)

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが 小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 第1章 船山和雄の開業計画 松田の訪れが途絶えて1週間ぐらいが経ったある日、多川節子が東西医科大学附属病院の廊下を歩いていると、後ろから船山和雄医師に呼び止められた。 船山医師は、節子が東西医科大学附属看護学校で学んでいた時、産婦人科学の講師として来ていた。附属病院での実習指導も彼が責任者であった。 さらに助産婦学校入学後も節子は

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【小説】「春嵐」 #1 (全文無料)(投げ銭スタイル)

「投げ銭」スタイルのnote記事となってますが 小説の全文を無料で公開しています 「投げ銭」あるなし関係なく最後までお楽しみいただけます 序章 出会いと別れ 太平洋戦争が終わり “もはや戦後ではない” といわれるようになった頃の話である。時代は変化の兆しをみせ始めていた。 多くの人々は、これまでの暮らしやしきたりに従いながらも、新しい時代の到来を感じて、驚きながらその変化に馴染もうとし始めていた。 時の流れとともに、土地もそこに住む人々もゆっくりと変化していく

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【小説】「春嵐」 #0(無料)  

あらすじ多川節子は、高等学校卒業後の進路に 東西医科大学附属の看護学校を選んだ。 その時の進路指導の教師の言葉が、 多川節子の耳に焼き付いている。 彼はこう言った。 「看護婦の社会的地位は低い」と。 そうだろうか? 医療職の学びは、人が生れ、生きて、やがて死ぬ という修羅場を理解することにある。 節子は、助産婦として、 生命の誕生という分野に身を置くことになった。 パートナーとなる医師とも出会うが、 黄砂まじりの春の嵐が彼女を襲う。 さて、さて、どういうことになるでしょ