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(小説)Re, Life 〜青大将の空の旅

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序章、第1章、中間の章、第2章、第3章、終章の6章で構成。全16話(予定)オリジナル小説。不定期に1話ずつ掲載予定。 父祖の地で過ごした幼い日々の回想からはじまり。祖父母、その… もっと読む
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(読み上げ)#1「Re, Life 〜青大将の空の旅」

こちらは、note掲載のオリジナル小説 『Re Life 〜青大将の空の旅 #1 』の補助用のAI読み上げ音声です。 本編の小説記事はこちら↓ https://note.com/tajima_shizuka/m/m05... 家事をしながら、仕事をしながら小説をお楽しみください。 構成:序章、第1章、中間の章、第2章、第3章、終章の6章で構成。 全17話のオリジナル小説。 あらすじ 子供の頃の一時期を、母が生まれ育った長崎「椿の里」にある祖父母の家で暮らしたことのある北村志津子。父親の仕事の関係で後に市内に移り、結婚を機にまた別の暮らしが始まります。時を経て再び「椿の里」へやってきたところから小説は始まります。その理由とはいったい…… 作者:田嶋 静 Tajima Shizuka オリジナル小説「Re, Life 〜青大将の空の旅」 Re, Life ~Aodaisho no sora no tabi 2022年6月7日 第1話 note誌上初掲載 当コンテンツ内のテキスト、画、音声等の無断転載・無断使用・無断引用はご遠慮ください。 Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.

(小説)#17「Re, Life 〜青大将の空の旅」

終章 青大将 裏山へ帰る②“キッチン北村” OPEN 志津子は、とみ爺の家を解体する決心をした。 ( やっと一歩踏み出すことになった! ) 山田家のご先祖と家屋敷を守ってくれた青大将に感謝の家納めと、これからの工事の無事を祈って神事を行った。 青大将は、裏山ヘと帰っていった。 八重本村のK建設会社が工事全般を請け負うことになった。 「休憩所にでも境の家を使ってください」 境 次郎からの申し出である。 志津子は、ありがたく思い、更に、 「お宅の台所を使わせていただきませんか」

(小説)#16 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

終章 青大将、裏山に帰る①これからどう生きるか (椿の里で何をするか) 志津子は、廃屋となっている、とみ爺の家に何度も来ては佇んだ。 (この地でどのように暮らしていくか) 西の浜から吹き上がってく潮風が心地よい。 とみ爺と過ごした4歳の時の記憶が湧き上がってくる。 (思い出に浸っているばかりではいけない) この家屋敷はそのままではどうにもならない。 どうにかしないといけない。 取り壊すとすると、その後、自分は何ができるだろうか。 あれこれと、考えるばかりの日々が続いた。

(小説)#15 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第3章 航と志津子の暮らし④訣別 北村 航の葬儀は、名古屋市内の葬儀場で行われた。退職して間もないこともあり、たくさんの銀行関係の人々が弔問に訪れた。 総ての式が終了した時、修造とフクが志津子を呼んだ。 「今後のことだけど…… 」 口を開いたのはフクである。 「志津子さん、四十九日と一周忌は、大阪の家でしましょうネ」 (航は北村の家には帰らないはず…… ) 「北村家のお墓に入れます」 志津子は、少し驚いた。 北村の家には帰らないけれど入るお墓はある、ということか。 「航は、

(小説)#14 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第3章  航と志津子の暮らし③航病む  航は、60歳で銀行を定年退職した。 非常勤で再雇用されることになり、定年の1ヶ月前に健康診断を受けた。 産業医が念のため血液検査の項目に、前立腺がんの指標を加えた。 その結果、微妙な数値であるということでN大学を紹介された。 「60歳。ウーン」と、外来の担当医は呻った。 N大泌尿器科で詳しく調べていくうちに、あっと言う間に指数が上がっていった。 精密検査では、細胞診検査で、10個中9個にガンの所見があった。 診断は、前立腺癌。諸検査の

(小説)#13 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第3章  航と志津子の暮らし② 志津子の名古屋暮らし  名古屋のマンション住まいになってすぐ、オカカと鮭フレーク入りのお結び2個と、わかめと豆腐の味噌汁、それに胡瓜、茄子などの糠漬けを添えて、朝食に出すと、 「こんなに朝飯があるンだね」と、航は、喜んだ。 それに押されるようにして、次は弁当を2個作った。航と自分用である。 何のことはない北村の家と同じ暮らしが展開されたのである。  当初、弁当は、珍しがられ、航は恥ずかしいと思った風である。 あるとき、急な商用で銀行の席を空け

(小説)#12 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第3章  航と志津子の名古屋暮らし①航の転勤 3月に入ったある日、いつになく航が早く帰宅した。 「何かありましたか?」 「今日、転勤の内示があった」 航は、この10年余り、神戸と大阪の支店を交互に転勤していた。 「今度は何処ですか?」 「名古屋支店」 「遠いですね」 「単身赴任になる」 「 …… 」 「3月末に引き継ぎに行く」 「ハイ」 「今いる人も単身赴任や」 「 …… 」  航は、その夜、両親に転勤を報告した。 夕食の片付けが終わった頃、志津子は姑のフクから呼ばれた。

(小説)#11 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第2章 北村 航と志津子の出会い③ 又々登場、青大将 椿の里のとみ爺の家から遙か遠く離れているが、北村家の次男明と三男博のことをお話しなければ、おいらの空旅は、終わりにならないのだよ。 志津ちゃんが大変なことになったンだ。 航の弟明は、国立大学の文学部に入学した。 古文研で知り合った今村竜子と付き合い始め、卒業と同時に結婚して竜子は、北村の家に入った。竜子は、そのまま大学院に進学し、博士課程を終えて研究者になる道を突き進んでいた。 明は、在学中から北村製パン業を継ぐ決心を

(小説)#10 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第2章 北村 航と志津子の出会い②志津ちゃんの台所奮闘記 航と志津子の暮らしが始まった。 航は、朝7時20分発の特急電車で梅田へ向かう。 朝食は、梅田駅構内のコーヒーショップで済ませる。カウンターに近づくと、スッとモーニンサービスが出てくる。 すぐ、神戸へ向かう特急に乗る。朝は、このパターンに決まっている。 帰宅は、いつも夜の9時過ぎ。時々、0時を過ぎることもある。 土曜日の午後と日曜日は、公民館活動をする。  志津子は、姑のフクから “ 6時頃に起きたらば……” とヒン

(小説)#9 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第2章 北村 航と志津子の出会い①結婚  稲田志津子は、高等学校卒業後、更に専攻科に進んで、2年の間、洋裁技術の取得に明け暮れた。そして親の反対を押し切って大阪に行き、K洋装店に就職した。独立して洋裁店を持つ夢をみて仕事に励んだ。  24歳の時、地区公民館主催による “ぶらぶら旅” で北村 航と出会った。航は、公民館の広報誌係をしていた。その後、 “ぶらぶら旅” の写真展を手伝うなどして、何度か顔を合わせた。
航は、26歳。勤め先はM銀行で、支店長代理という役職であった。

(小説)#8 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

中間の章 下の道の家境 次郎との出会い 「あのー」 と遠慮がちに声をかけてくる。 ほとんど白髪頭の男の人である。背筋がスッキリ伸びて精悍な体つきである。 「山田さんに頼まれて、時々見回りに来ています」 と男は言った。 小学3年生の夏にこの地を去ってから50年が経っている。 誰かわからない。 「下の道の境です。志津子さんですネ」 「境さん? ムッチャンのお兄さん?」 眉のあたりが同級生だったムッチャンに似ている。 同級生のムッチャンとは登下校を一緒にした。 夏休みに入ると家で

(小説)#7 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第1章 とみ爺の家の青大将⑥稲田家に次男と三男が誕生 志津ちゃんが小学校2年生の中頃、 「赤ちゃんが生れるよ」とモミ母さんが志津ちゃんに言った。志津ちゃんは亡くなった稔坊が生まれかわってくるのだと思った。 モミ母さんにとって4度目の妊娠である。 モミ母さんは、親戚の淵上さんの婆ちゃんにお産の手助けを頼んだ。淵上さんの婆ちゃんはモミ母さんには、いとこになる。 婆ちゃんといっても60歳にはなっていない。モミ母さんは、淵上家の長女・ハマと仲良しである。モミ母さんとハマはハトコにな

(小説)#6 「Re, Life 〜青大将の空の旅」

第1章 とみ爺の家の青大将⑤止夫父さんの帰還 止夫父さんは戦後1年ばかりして戦地からひょっこり、とみ爺の家に帰ってきたよ。シベリアに抑留されることもなく、ケガもなく、兵隊さんの格好で背嚢を背負って、とみ爺の家の玄関先に現れたネ。 「ただいま帰りました」とモミ母さんに向かって、軍隊式の敬礼をした。 志津ちゃんは、久しぶりに見る止夫父さんがまぶしく、何だか恥ずかしかった。 モミ母さんの後ろに廻ってエプロンのヒモを掴み、腰ところから顔を出して、止夫父さんの顔を盗み見たよ。 モミ母