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体操の技を覚えよう【あん馬4】倒立技、終末技

あん馬において演技が華やぐ要素として開脚旋回がありますが、倒立技も演技に華を生み出してくれる要素のひとつです。
その多くが終末技として使われる倒立技ですが、中技として倒立技を使う選手も少なくありません。

倒立技は技ひとつをとっても数多の要素があり、それらをひとつひとつを押さえておかなければ、難度が分からないばかりか、倒立した事は分かっても、なんの技なのかも分からないまま見ることになります。 
ここではそんな倒立技について、どこを見たらいいのか、何の要素がどう変わったら難度が上がるのかについてまとめています。

▼倒立技を構成する要素

倒立技を見る上で、見るべき要素は 
❶倒立への上げ方
❷ひねりの角度
❸移動を伴ったか
❹旋回に下ろしたか、着地におりたか
この4つのポイントがあります。
これらの要素の役割としては、まず❶倒立への上げ方によって基準となる難度が決まり、❷ひねりの角度❸移動を伴ったかによって難度を最大二段階上げることが出来ます。
そして、❹旋回に下ろしたか、着地におりたかによって技グループが決まります。
もしも旋回に下ろした場合は「グループⅡ:旋回技」になり、難度がさらにもう一段階上がります。着地におりた場合は「グループⅣ:終末技」になり、難度の格上げはありません。

これだけを説明してもわからないと思うので、上記のポイントを押さえながら画像を見つつ倒立技を覚えていきましょう。


▼終末技としての倒立技

順番が前後しますが、まずは「グループⅣ:終末技」として使われる倒立技について。
一部例外を除き、ほとんどの選手はあん馬の終末技として倒立技を実施します。
終末技として実施される倒立技は、必ずマットに着地する形をもって技の完了とします。 よって、先に挙げた4つのポイントのうち4つ目の「❹旋回に下ろしたか、着地におりたか」こちらは「着地におりた」ことを前提として、残りの❶❷❸のポイントを見極めながら覚えていきましょう。

あん馬にも倒立の要素を使う技があることは、チャプター01:セア系の技の記事で「セア倒立」として既に記述しました。
セアだけでなく、旋回技にも倒立を使う技があります。
あん馬における旋回を使った倒立技は、すべて書こうと思うと書ききれないくらい存在するのですが、ここからは❶倒立への上げ方ごとに分けて終末技として使われる倒立技を紹介します。


▼旋回倒立

標準的な倒立への上げ方として「旋回倒立」があります。
チャプター02:旋回技の記事で、「正面支持」と「背面支持」について触れましたが、あん馬の旋回技というのは、正面支持⇒背面支持⇒正面支持⇒背面支持…これを繰り返す運動だという事はここで書きましたね。
この、正面支持⇒背面支持⇒正面支持…という動きの「正面支持」の瞬間に腰を高く持ち上げて倒立に持ち込むことで「旋回倒立」としています。

旋回倒立

この倒立への上げ方をもとに、残りの要素である
❷ひねりの角度
❸移動を伴ったか
こちらに注目しながら倒立技を覚えていきましょう。


①旋回倒立おり【B難度】
旋回倒立で倒立まで上げて、ひねりも移動も伴わず着地におりています。
この単純な旋回倒立おりはB難度で認定されています。
競技をかじってた人間からしたら、これが出来てもB難度なのか…と絶望なのですが。

これに❷❸の要素が加わることで難度を一段階・二段階と上げることが出来ます。


②旋回倒立3/4ひねり3部分移動おり【C難度】
旋回倒立で倒立まで上げて、3/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
倒立に上げた後に3/4ひねり+3部分移動の要素を足すことで、難度は一段階上がります。
つまり、このおり技はC難度ということになりますね。

おり技で倒立技を使う時のひねりの角度は必ず3/4もしくは5/4になります。
なぜこんなに細かい数字なのかというと、あん馬は着地する時には、必ずあん馬を長方形とした時の長辺に当たる方に沿った方向を向かなければなりません。そういうルールなのです。

下の画像では、倒立に上げる時はお腹が正面を向いていて、ひねりを加えながら逆馬端に手を着いた時に1/2(2/4)ひねりが完了、着地に下ろしながらさらに1/4ひねりを加えて計3/4ひねりで着地が完了しています。

この3/4ひねりで下りる場合、ひねりを加えるだけでは難度は格上げされません。難度を一段階上げるには、馬端から逆馬端へと3/3部分移動していることが必要になります。
3/3部分と複雑な言い方をしていますが、3部分とは、馬端・あん部・逆馬端の3部分の事を言います。
もしも、馬端とあん部の2部分にのみ手を着いていたら、2/3部分の移動になって、難度の格上げ条件に満たない事になります。
上の画像では、馬端で倒立に上げていて、馬端・あん部・逆馬端の3部分に手を着いてから着地に向かっています。
この実施だと難度の格上げ条件を満たすわけです。つまるところ、難度の格上げに必要な要素のひとつ目は3部分移動という事になるわけです。

①③⑤すべてに手を着くことで「3部分移動」となり一段階難度アップ

以上が、「3/4ひねり3部分移動」です。
4つのポイントにあった、❷ひねりの角度、❸移動を伴ったか とはこういう事なのです。

③旋回倒立5/4ひねりおり【C難度】
先ほど少し述べましたが、おり技で倒立技を使う時のひねりの角度は必ず3/4もしくは5/4になります。
②の技は3/4ひねりでしたが、今度は5/4ひねりおりバージョンです。
しかし、ここでは②のような3部分移動をしていません。倒立に上げたその場で1回ひねり+1/4ひねりをして着地におりています。
旋回倒立で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて移動を伴わず着地におりています。

くるくるシュタッ

3/4ひねりの場合は、3部分移動を伴っていないと難度の格上げはありませんでしたが、5/4ひねりの場合は、移動を伴わなくとも難度が一段階格上げされます。難度を格上げさせる要素のもうひとつが5/4ひねりだったわけですね。


④旋回倒立5/4ひねり3部分移動おり《コリバノフ》【D難度】
旋回倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
B難度の旋回倒立に加え、5/4ひねりで一段階の格上げ、さらに3部分移動で二段階の格上げが可能です。
つまり、このおり技はB難度から二段階難度が上がってD難度という事になります。
D難度でグループ点0.5が取れるので旋回倒立ではもっともよく見られる技です。

▼DSA倒立

ここからは倒立への上げ方が複雑になってきます。
まずはDSA倒立という上げ方です。
「DSA」というのは、「ダイレクトシュテクリA」のこと。
「シュテクリA」というのはチャプター02:旋回技で出てきましたね。覚えているでしょうか。

両ポメル上での横向き正面支持から1/4転向を伴って片ポメル上で縦向き背面支持、さらに1/4転向を伴って横向き正面支持とすることで、1/2転向の完成とする技が「シュテクリA」でしたね

シュテクリA

この技の後半部分、ひとつのポメル上で縦向き背面支持から1/4転向を伴って正面支持に収まる代わりに倒立に上げるのがDSA倒立(Aシュテ倒立)です。

この「ひとつのポメル上で縦向き背面支持から1/4転向を伴って倒立
に上げる」というところが重要で、旋回の前半部分は馬端横向きの場合もあれば馬端縦向きの場合、またはひとつのポメル上で縦向き旋回からこれをする選手もいます。
技が縦向きで始まると「一把手上旋回倒立」となり、横向きで始まると「DSA倒立」となるのですが、まぁそんな違いは覚えなくて良いので、とにかくポメル上での縦向き背面支持から倒立に上げていればいいのです。

この倒立への上げ方だとC難度が取れて、ここから既に挙げた難度格上げの要素を足すことで難度を上げることが出来ます。それではDSA倒立でできるおり技を見てみましょう。

⑤DSA倒立おり【C難度】
DSA倒立で倒立まで上げて、ひねりも移動も伴わず着地におりています。
これがシンプルなDSA倒立になります。

⑥DSA倒立3/4ひねり3部分移動おり【D難度】
DSA倒立
で倒立まで上げて、3/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
C難度のDSA倒立に3部分移動が加わって一段階格上げされてD難度。
D難度が取れてグループ点も確保できるとあって、この技がいま世界で最もよく使われているおり技です。

⑦DSA倒立5/4ひねりおり【D難度】
DSA倒立で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて移動を伴わず着地におりています。
C難度のDSA倒立に5/4ひねりが加わって一段階格上げされてD難度。
個人的におしゃれで大好きな技ですが、なかなか実施する選手のいないレア技です。

くるシュタ

⑧DSA倒立5/4ひねり3部分移動おり【E難度】
DSA倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
C難度のDSA倒立に3部分移動と5/4ひねりが加わって二段階格上げされてE難度。
D難度の⑥の技よりもひとつ上の難度を取りたい選手はこの技を使って周りと差をつけます。

倒立に上げた後の3部分移動しながら5/4ひねりという技ですが、この技のさばき方はほかにもさまざまあります。
上の画像では倒立に上げた後、逆馬端に向かって移動しながら1/2、さらに元の馬端に戻りながら1/2という風に、あん馬を往復するさばき方でした。5/4ひねりにおいてはこれが最もよく使われるさばき方なのですが、まれに異なるさばき方をする選手がいます。

まずは、往復せずに馬端から逆馬端へ片道だけで5/4ひねるさばき方です。
バランスを保つのが難しそうで、なかなかリスキーなさばき方。
よほど倒立のバランスに自信がある選手でないと実施する勇気が出なさそうです。

これを散々難しい技をやった最後にやるんですから相当な集中力と精神力がないとできないですよね。
このさばき方は実は7/4ひねっているのですが、5/4以上ひねってもそれ以上難度が格上げされることはありません。これもE難度です。

次に、先にD難度を確保するさばき方。
倒立に上げた後、先に馬端とあん部の2部分だけで1回ひねりをまず確保してから、3部分移動をするというさばき方。

これも7/4ひねっていますが、これも同じくE難度になります。それ以上の格上げはありません。


▼逆リア倒立

DSA倒立と見た目は似ていて、技としてもDSA倒立と同じ扱いなのですが、ここではチャプター02でも紹介した「逆リア」から倒立に上げる上げ方です。
逆リアとはこのことでしたね。

逆リア

この両ポメルを使った横向き背面支持から逆リアの動きで正面支持になる代わりに倒立に上げるのが逆リア倒立です。

逆リア倒立

この逆リア倒立、世界的に見ても日本の選手によく実施される傾向があります。なぜでしょうね。
それでは見てみましょう。

⑨逆リア倒立おり【C難度】
逆リア倒立
で倒立まで上げて、ひねりも移動も伴わず着地におりています。
DSA倒立と同じく、倒立に上げるだけでC難度が取れます。

⑩逆リア倒立3/4ひねり3部分移動おり【D難度】
逆リア倒立
で倒立まで上げて、3/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
DSA倒立よりは格段に実施例は少なくなりますが、やはりD難度とあって逆リア倒立の中では比較的多く実施されています。
それでもDSA倒立が主流の現代においてはあまり見ることのない技です。

⑪逆リア倒立5/4ひねりおり【D難度】
逆リア倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて移動を伴わず着地におりています。
先にも紹介したその場でクルッと回っておりる技です。
実施例が見つからないのでイメージ画像で失礼します。

⑫逆リア倒立5/4ひねり3部分移動おり【E難度】
逆リア倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
逆リア倒立で最も高い難度が取れる技です。
これもDSA倒立で紹介したように、7/4ひねっておりてもE難度より高い難度になることはありません。


▼旋回とび倒立

旋回をして背面支持から正面支持に移行する瞬間に「とび」局面を作りながら、両ポメル上から馬端へと移動して、正面支持の代わりに倒立に上げるのが旋回とび倒立です。

旋回とび倒立

先に挙げたDSA倒立・逆リア倒立と比べて実施例は格段に少なくなりますが、しっかり難度表に載っている技です。


⑬旋回とび倒立おり【C難度】
旋回とび倒立
で倒立まで上げて、ひねりも移動も伴わず着地におりています。
こちらがシンプルな旋回とび倒立おり。この技でおりるとC難度が取れます。これに格上げ要素を加える事で難度を上げることが出来ます。

⑭旋回とび倒立3/4ひねり3部分移動おり【D難度】
旋回とび倒立
で倒立まで上げて、3/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。

⑮旋回とび倒立5/4ひねりおり【D難度】
旋回とび倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて移動を伴わず着地におりています。
旋回とび倒立ですら珍しくて、移動のない倒立5/4ひねりも珍しいので、こんな技は生きているうちに見られるかどうか分からないくらいスーパー珍しい技です。
後にも先にも下の画像の選手しか実施している選手を知りません。

かっこいい技なので実施する選手が現れてほしいものですが、減点が大きそうなので、減点が厳しい現代においてはやるメリットがないのかもしれませんね。

⑯旋回とび倒立5/4ひねり3部分移動おり【E難度】
旋回とび倒立
で倒立まで上げて、5/4ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して着地におりています。
こちらは練習映像がありました。これは7/4ひねりパターンで下りていますね。

試合で成功させている映像もありましたが、仲間が興奮していて着地がちゃんと見えなかったので資料としては上の画像で勘弁してください。


▼その他の倒立への上げ方

ここまで、B難度、C難度の倒立への持ち込み方を紹介しました。それらに3部分移動・5/4(以上)ひねりの要素を加えることで難度を一段階・二段階と上げることが出来ました。

ここからは、それ以外の倒立への上げ方を紹介します。
以下で紹介するのは、倒立に上げるだけでD難度が取れる技です。
まだ技が発表されて時間が経っていないので、実施例は発表者のみなんて技もあります。
それでは見ていきましょう。


⑰DSAとび倒立《イェッセン》【D難度】
「DSA倒立」と「とび倒立」の要素を合体させた技です。
この技にはイェッセンと名前が付けられています。
発表者であるチェコのイェッセン選手が発表する前から日本国内では実施する選手はいたのですが、国際大会で披露したのは彼が初めてでした。

両ポメル上での下向き支持から1/4転向をして片ポメル上での背面支持、そこからさらに1/4転向をしながら「とび」局面をつくり馬端で倒立に上げることで成立します。

イェッセン倒立

⑱逆リアとび倒立《ルース》【D難度】
DSAとび倒立があるという事は、逆リアとび倒立もまた存在するわけです。
DSA倒立と逆リア倒立はルール上は同じ技として扱われるほどなのに、不思議とDSA倒立よりも難しそうです。しかし、難度は⑰《イェッセン倒立》と変わりません。
この技には《ルース》と名前が付いています。

ルース倒立

⑲馬端から逆馬端へロシアン180°転向移動倒立《ペルラン》【D難度】
今度は下向き転向(ロシアン)を使った倒立技です。
ここでは馬端からロシアン180°転向をしながら逆馬端へと移動し、転向が完了して両手があん馬に着いたところで倒立に上げています。
この技には《ペルラン》と名前が付いています。

ペルラン倒立

これまでの倒立技は旋回の動きをする中で、下向きでの正面支持になる瞬間に倒立に上げることで成立していましたが。このロシアンは常に正面支持の姿勢ともいえるので、ロシアンからはどの瞬間でも倒立へ持ち込むことが出来ます。そう考えると、倒立への上げ方もまた別の発想が出来そうですね。

⑳両ポメル支持から、ひとつのポメル上で270°ロシアン転向を経て90°転向倒立《ドリゼ》【D難度】
4月に発表されたばかりの新倒立技です。
片方のポメルの上でロシアンを270°つまり3/4周回してから直接1/4転向して倒立に上げる技です。
難度はこれまでと同じD難度。《ドリゼ》の名前がついています。
果たして今後実施例はあるのか・・・。

ドリゼ倒立

これらD難度の倒立技に先に挙げた難度格上げの要素を組み合わせることで、難度を一段階、二段階上げられて、最大F難度を得ることが出来ます。

例えば下の画像は「ドリゼ倒立3/4ひねり3部分移動おり」となりE難度。

そして下の画像は「イェッセン倒立5/4ひねり3部分移動おり」となりF難度になります。

これまでを踏まえて、あん馬における終末技としての倒立技は下の表に表すことが出来ます。


そして、倒立技は終末技だけでなく、中技としても使われています。

▼中技としての倒立技

ここからは中技としての倒立技の紹介です。
終末技は着地に下ろすことで成立する技でしたが、ここでは倒立に上げた後旋回に下ろす事で成立する技のブロックです。
❶倒立への上げ方
❷ひねりの角度
❸移動を伴ったか
❹旋回に下ろしたか、着地におりたか
先に挙げた4つのポイントのうち、ポイント❹の「旋回に下ろしたか、着地におりたか」こちらは「旋回に下ろした」であることを前提とします。

「倒立から旋回に下ろす」とはこういう事

ほかの❶❷❸のポイントは、おり技のブロックで説明した通りで、中技だから特別に発生する要素などはありません。
ただし、これは下り技ではないので、❷ひねりの角度というポイントでは、3/4ひねりや5/4ひねりといった、着地に向かう際に必ずしなければならない「1/4ひねる」という要求がなくなるので、ひねりの角度は1/2ひねりもしくは1回ひねりという事になります。まぁ、技を見る上ではそれほど重要なことではありません。

この手の類の技で最もよく使われるのが、〔ブスナリ〕と名前がついた技。まずはこの動きを覚えましょう。

㉑下向き逆移動(DSAorひとつのポメル上での旋回)倒立3部分移動1回ひねり、下ろして旋回〔ブスナリ〕【F難度】
倒立技で良く使われるのが〔ブスナリ〕という技です。
おり技として紹介した⑧DSA倒立5/4ひねり3部分移動おりという技を着地に下りずに旋回に下ろすことで中技とする倒立技です。

ブスナリ

当記事の冒頭で下記のような説明をしました。

❹旋回に下ろしたか、着地におりたかによって技グループが決まります。もしも旋回に下ろした場合は「グループⅡ:旋回技」になり、難度がさらにもう一段階難度が上がります。着地に下りた場合は「グループⅣ:終末技」になり、難度の格上げはありません。

ここでは、倒立に上げた後、旋回に下ろしているので、技グループは「グループⅡ:旋回技」に分類されます。そして難度が一段階上がるのです。
なので、この《ブスナリ》という技は、「DSA倒立で倒立まで上げて、1回ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して旋回に下ろしている。」ということになります。
DSA倒立で倒立に上げているのでC難度、5/4ひねりをしているので一段階の格上げ(D難度)、3部分を移動しているので二段階の格上げ(E難度)、そして旋回に下ろすことで三段階の格上げ(F難度)という事です。

ブスナリ【F難度】

この技の動きさえ覚えてしまえば、先にあげた❶❷❸3つのポイントのうち、この要素が足りなかった、この要素が加わっている、という様に難度の高低を把握できます。
この倒立に上げて旋回に下ろす技たちを表にするとこのようになります。

これを基準として様々な倒立技を見ていきましょう。

㉒旋回倒立1回ひねり、下ろして旋回【D難度】
旋回倒立
で倒立まで上げて、1回ひねりを加えて移動を伴わず旋回に下ろしています。
㉑〔ブスナリ〕と比べると、倒立の上げ方がDSA倒立ではなく旋回倒立になっていることで基準となる難度がち段階下がり、手を着いている部分が3部分ではないので一段階の格下げ、よってF難度の〔ブスナリ〕から二段階難度が下がってD難度になります。

よく見てみると、3部分に手を着いていませんが、あん部と馬端の2部分のみに手を着いています。2部分だけだと難度の格上げはされず、3部分に手を着いていないと難度の格上げはありません。

㉓旋回倒立3部分移動1回ひねり、下ろして旋回【E難度】
旋回倒立
で倒立まで上げて、1回ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して旋回に下ろしています。
㉑〔ブスナリ〕と比べると、倒立の上げ方がDSA倒立ではなく旋回倒立になっているため、一段階格下げになってE難度です。


逆リア倒立3部分移動1/2ひねり、下ろして旋回【E難度】
逆リア倒立
で倒立まで上げて、1/2ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して旋回に下ろしています。
下の画像は開脚旋回で技に入っているので、倒立の上げ方が㉒と見分けがつきにくいですが、両ポメル旋回から倒立に上げた時に馬端とポメルに手を着いて体の向きも変わっていることから逆リア倒立と判断できます。
そして、㉑〔ブスナリ〕と比べると、3部分移動はしていますが、1回ひねりではなく1/2ひねりなので一段階格下げされてE難度です。

イェッセン倒立3部分移動1回ひねり、下ろして旋回【G難度】
イェッセン倒立
で倒立まで上げて、1回ひねりを加えて馬端・あん部・逆馬端と3部分を移動して旋回に下ろしています。
㉑〔ブスナリ〕と比べると、倒立への上げ方がDSA倒立でも逆リア倒立でもなく、⑰DSAとび倒立〔イェッセン〕であることから、基準となる難度は一段階上がってG難度になります。

〔イェッセン〕の発表よりも前に国内で実施されていた

㉖旋回とび倒立下ろして旋回【D難度】
旋回とび倒立
で倒立まで上げて、ひねりも移動も伴わず旋回に下ろしています。
㉑〔ブスナリ〕と比べると、倒立への上げ方は旋回とび倒立なのでDSA倒立と難度は変わりません。しかし、ひねってもいなければ移動もしていないことから難度は二段階の格下げでD難度になります。


このようにブスナリを基準に考えると、一目見て「これはブスナリじゃない」と判断することができ、難度を判断することが出来ます。

イタリアのアルベルト・ブスナリという選手が「ブスナリ」を発表して以来、あん馬で倒立技を使う選手が増えました。特にあん馬が得意な選手は高難度技のブスナリで価値点を稼ぐケースが多く、国際大会では目にすることも多い技です。 

倒立技は、中技・おり技含めて難度表に載っているものはごく少数ですが、実際にはこんなにも多くの技が存在していることを分かって頂けたでしょうか。
この中から実際に試合で見ることが出来る技もごくわずかですが、あん馬における倒立技の仕組みが分かって頂ければ幸いです。


次回チャプター05では、いよいよあん馬の鬼門である「フロップ・コンバイン」に入ります。覚悟しておいてください。


【画像出典】
https://youtu.be/p50wC4Ut5CE
https://youtu.be/4nziQhL8rv0


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