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2021年東京オリンピック スイス男子の予選の演技

2016年リオ五輪では、初めて団体での出場を叶えましたが、決勝へは進めなかったスイス男子。
近年めきめきと力を付けて、ヨーロッパ選手権で表彰台に上るなど目立つ活躍も増えてきました。
しかし、スイスの主力であったオリバー・ヘギがオリンピックを目前に引退。
スイスの顔とも言うべきベテランを欠いてから初めての団体戦がオリンピックとなりました。


第1ローテーション:ゆか

▼エディ・ユソフ(00:08:55~)

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初めに①新月面宙返り、ロンダート〜バック転から軽やかに決めます。
ひねり技の連続は着地も上々。
力技では珍しい前転からの十字倒立、⑦リエクを実施しました。
そこからさらに⑧十字倒立でC難度を2つ稼ぎます。
終末は⑩月面宙返り。抱え込み姿勢が良いですね。

▼クリスチャン・バウマン(00:12:50~)

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初めは➀前方2回半ひねりから入る。勢いがあって着地も良くまとまっています。
旋回技で⑤ゴゴラーゼから⑥フェドルチェンコ、さらに力技で⑦十字倒立から⑧前転閉脚シンピへとスムーズに繋げます。
グループⅠの技を豊富に持つ選手ですね。
終末は⑩後方2回半ひねりで着地は小さく1歩。

▼パブロ・ブレガー(00:16:00~)

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前転とびからの①2回半ひねり、後転とびからの②新月面で勢いを見せます。
ひねり技の連続、③後方1回半+④前方2回ひねりは難しい着地ですが、ここをしっかりまとめます。
力技を挟んでから⑧後方2回半+⑨前方1回ひねりと、ひねり技の連続をもうひとつ。ここで足がラインオーバーしてしまいました。
終末の⑩3回ひねりは着地をしっかりまとめました。

▼ベンジャミン・ギシャール(00:18:55~)

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冒頭は➀2回半ひねり、高さがあってひねりに余裕があります。
④前方2回+⑤前方ハーフも高さがあって余裕を持って着地に迎えています。
⑥後方2回半+⑦前方1回では1回ひねりの高さが出ずに詰まるような実施になりました。
終末の⑩3回ひねりはひねり不足が見られます。


ゆかの得意なギシャールがあまり点を伸ばせませんでした。13点台のバウマンとユソフですが、Eスコアは最も高いバウマンの点が残り、最も低いユソフの点がカットされます。

第2ローテーション:あん馬

▼エディ・ユソフ(00:29:00~)

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➀ミクラックから入って③セア倒立も入れます。セア系の技を豊富に持っていますね。
旋回技は⑤フロップを順調にこなしますが、⑥Dコンバインで脚が割れてバランスを崩し落下してしまいました。

▼クリスチャン・バウマン(00:32:40~)

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こちらも➀とびひねりセアから②セア倒立
旋回技はいきなり大技③ブスナリを成功!さらに⑤あん部下向き1080°転向で高難度の旋回技を次々繰り出します。
⑧マジャール移動で足が割れかけますが、⑨シバドでは問題ありません。⑩終末技の倒立で反対方向に倒れかけますが、ここも修正して無事に通しました。

▼パブロ・ブレガー(00:18:55~)

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体が大きくて動かしづらそうですが、③フロップ④コンバインを着実にこなして⑥倒立技に繋げます。
倒立のバランスは崩れることなく丁寧にさばいて支持に下ろして、⑩終末の倒立技も丁寧に着地までおりました。

▼ベンジャミン・ギシャール(00:18:55~)

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➀セア倒立から入ります。ゆかと同様、旋回にも勢いがあります。
ここも⑥倒立技を挟んで丁寧に支持へ。
⑧マジャール⑨シバドでは若干旋回のスピードが落ちましたが、安定感のある実施。
⑩終末の倒立技は少し力を使いましたが良い実施でした。


特別あん馬が得意な選手がいない中とはいえ、12点台が入ってしまったのは痛手です。バウマンはブスナリなどの高難度の技を取り入れて勝負に出ましたが、13点台に届きませんでした。
4人中3人が中技で倒立技を入れていて、チームの色が見えますね。ここでもギシャールが最高得点を出しました。

第3ローテーション:つり輪

▼パブロ・ブレガー(00:49:05~)

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③シンピ倒立はスムーズに上げています。
ごくごく基本的な技を詰め合わせた演技構成で、終末は⑩新月面の着地をピタリと止めました。
ひとつひとつの技を丁寧にこなしていますが、④翻転倒立で少し倒立が反ってしまいます。

▼クリスチャン・バウマン(00:52:15~)

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冒頭の➀振り上がり中水平は肩の位置が高いですがしっかり止めます。
②ホンマ支持からの③上水平④伸腕伸身力倒立と珍しい動きを見せます。
⑧振り上がり開脚上水平は腰の伸びた美しい姿勢。

▼ベンジャミン・ギシャール(00:55:35~)

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➀アザリアンから入る。
②中水平③上水平は静と動がはっきりしていて良いですね。
④翻転倒立では少し倒立が乱れかけますが、⑤後ろ振り倒立では持ち直します。
⑧振り上がり開脚上水平は腰が伸びた姿勢ですが、足が少し下がってしまいます。終盤は少し慌しい実施になりましたが、⑩月面ハーフでは難しい着地をピタリと止めました。

▼エディ・ユソフ(00:58:10~)

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➀上水平から②中水平、さらに③振り上がり中水平と力技を3つ連続します。中水平で輪を握る手が巻き込んでいるように見えます。これは減点対象でしょう。
④ジョナサン⑤ヤマワキは開きのある雄大な実施。
終末の⑩新月面は高さがあります。着地は小さく1歩。

ここも特別得意な選手はいませんが、全員の点数が横ばいで我慢ができたという印象です。
Dスコアが4点台のパブロはEスコアで評価されてチーム得点に反映されました。一方でギシャールはEスコアが伸びずにチーム得点からカットされます。
力技を単発で実施する選手が多く、ここでもチームの色が見えますね。

第4ローテーション:跳馬

▼クリスチャン・バウマン(01:08:55~)

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1人目はアカピアン。着手時に足割れが見られ、高さも不足して空中姿勢も綺麗とは言えません。
着地は膝が折れるような形になりますが小さく1歩にまとめます。

▼ベンジャミン・ギシャール(01:10:10~)

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ヨー2も跳べる選手ですが、ここはドリッグスを跳んできました。
飛距離があってひねりにも勢いがあります。ひねり切りも良く、着地も小さく1歩にまとめました。良好な跳躍を見せます。
種目別決勝も狙える選手ですが、跳躍は1本のみで終えます。

▼エディ・ユソフ(01:11:40~)

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難度の高いル・ユーフを跳びました!
着手時に足の開きが見えてしまうのがこの技の難しいところ。屈身姿勢はバッチリ、しかし着地の手前に脚が少し開いている瞬間が見えます。宙返りの回転にも勢いがあります。
着地も難しい技ですが、小さく1歩に抑えました。素晴らしい跳躍でチームも盛り上がります。

▼パブロ・ブレガー(01:13:10~)

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ドリッグスを跳びますが、着地で横に倒れてしまいました。
前の3人と比べて、着手時に足の開きがなかったことは減点をなくすことを意識されていて素晴らしいです。
空中姿勢も申し分なく高さもありましたが、ひねりが間に合いませんでした。


跳馬の得意なギシャールとユソフですが、ギシャールが難度を落としました。ユソフは難度を落とさず5.6を跳んでいます。両者ともEスコアは9点台にのらず、爆発力はありません。

第5ローテーション:平行棒

▼ベンジャミン・ギシャール(01:31:10~)

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棒端での➀逆上がりひねり倒立から②棒下倒立③車輪を行い、④モイで中に移ります。
⑥ヒーリーは足先が少し割れますが、腕のさばきは大きく見せていて良いですね。⑦ディアミドフは綺麗に倒立にハメています。

▼エディ・ユソフ(01:33:45~)

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初めの①棒下ひねり倒立で停滞が見られます。
アームディアミドフ、③リチャードも倒立から逸脱して流れるような実施。
④車輪⑤ツイスト⑥ディアミドフ⑦爆弾宙返りと、C・D難度の技をテンポ良く次々と繰り出します。
終末は⑩屈身ダブルで小さく1歩にまとめました。

▼クリスチャン・バウマン(01:36:35~)

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ヨーロッパ選手権で銅メダルを獲ったバウマンの平行棒。スイスチームの見せどころです。
冒頭、自身の名がつく②バウマン(車輪マクーツ)を実施しました。倒立まで綺麗に収めて素晴らしい実施です。
④マクーツ⑤ヒーリーと止まる事なく連続で実施していて、熟練度がうかがえます。
続いて⑥モイ⑦バブサー⑧ティッペルトと長懸垂技を3連続で、倒立まで丁寧に収めています。
終盤の⑨ツイストで倒立が乱れかけますが、すぐに前振り上がりから終末の⑩前方ダブルハーフに繋げています。

▼パブロ・ブレガー(01:40:50~)

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こちらも棒端からの①逆上がりひねり倒立。倒立にあげた後に少し歩いてしまいます。
③ティッペルトで中に移動して、④マクーツ⑤ヒーリーと続けます。体を大きく見せていて迫力があります。
⑦ディアミドフ⑧ディアミハーフはブレることなく丁寧にまとめていて、終末の⑩前方ダブルハーフは高さが出ずに体が低くなるような着地になりました。


スイスチームの得意種目。バウマンとパブロが見事な演技で15点台にのせました。バウマンは自身の名が付く難しい技を綺麗に決めます。
チーム得点は中国・日本・ロシアに続く4番目に高い得点を出しました。取るべき場面でしっかり点を取ることができました。

第6ローテーション:鉄棒

▼ベンジャミン・ギシャール(01:52:55~)

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➀エンドー1回ひねりから入って③アドラーハーフ。ここは足先が揃っていません。⑤アドラー1回ひねりからの⑥ヤマワキは少し流れ気味ですが綺麗にまとまっています。
⑦エンドー⑧シュタルダーは開脚具合が大きくて演技が映えますね。
終末の⑩伸身ムーンサルトは空中姿勢が綺麗に決まっています。

▼エディ・ユソフ(01:55:25~)

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➀ヤマワキから入ります。腰が折れていて伸身姿勢としては不十分ですね。
②エンドー1回ひねりで車輪に上げたら、ここからトカチェフ系を3つ続けます。
③伸身トカチェフ④トカチェフ⑤リンチ④トカチェフは高さがありませんが、⑤リンチの後処理はスムーズにまとめています。
⑦アドラーハーフ⑧ホップターンから⑩伸身新月面まで、脚が割れる事なく綺麗に通しています。

▼クリスチャン・バウマン(01:58:15~)

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➀ヤマワキから入って②エンドー1回ひねり大逆手。ひねり方も大阪手の掴み方もテクニカルで熟れています。
直後、コールマンで落下してしまいます。
回転の勢いが足りずに、バーから遠くなってしまいました。
復帰して③伸身トカチェフ。少し脚が揃っていないように見えます。
直後のE難度、④シュタルダーリバルコは華麗に決めました。ひねり技の安定感が光ります。
⑥アドラーからの⑧ロシア式車輪で肩の柔軟性をアピール。
終末の⑩伸身ムーンサルトは滞空時間の長い雄大な実施でした。

▼パブロ・ブレガー(02:03:10~)

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入りの①エンドー1回ひねり大逆手は滑らかに、直後は雄大なカッシーナを実施しますが、落下してしまいます。
復帰してからは、③モズニク④伸身トカチェフ⑤リンチとトカチェフ系を3つ続けます。
④伸身トカチェフ⑤リンチは連続もできる選手ですが、ここは繋げられません。普段はカッシーナの次にコールマンも実施していますが、ここは回避しました。長身の体躯ゆえ、アドラー系の技にも迫力があります。
終末の⑩伸身新月面は着地を止めました。


鉄棒でDスコア6.8と超高難度の構成を持つパブロですが、カッシーナの落下で大きくスコアを落としてしまいます。
爆発力を持つパブロの失墜により、コールマンで落下したバウマンの点も反映され、チーム得点は40点を割ってしまいます。


平行棒の爆発が功を奏し、団体7位で決勝へ進出しました。
個人総合ではギシャールとユソフが決勝に進みます。
種目別の決勝進出はありません。ゆかと跳馬でギシャール、平行棒でバウマン、鉄棒でパブロの決勝進出が望めましたが、この希望は潰えました。
オリンピックでの決勝進出は1984年ロサンゼルスオリンピック以来のことです。
ギシャールはスイスチームで唯一6種目をミスなく通しました。
パブロは鉄棒での落下はありましたが、バウマンが通してくれたおかげで救われたと話しています。
リオオリンピックの時はこの4人にオリバー・ヘギを加えた5人で挑み、決勝進出を逃しました。
ヘギが引退し、同じメンバーで臨んだ東京オリンピックで、リオのリベンジを果たしたのです。

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