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ミラド・カリミ(カザフスタン)の鉄棒/2019年世界選手権の演技

カザフスタン機体の若手、ミラド・カリミ選手。
母親はロシア人で父親はイラン人だそうです。両親はミラドが生まれる前にカザフスタンのアルマトゥイに移住したそうで、ミラド自身は生粋のカザフスタン育ちということです。

カリミはオールラウンダーで、ゆか、跳馬、平行棒、鉄棒と得意種目が豊富。
シニア1年目の2017年に世界選手権の種目別ゆかで決勝に残っています。

その後、ワールドカップでは、ゆか・平行棒・鉄棒で表彰台に上っています。
2018年には試合中に腕を骨折するといったアクシデントもありましたが、2019年の世界選手権で個人総合決勝に進み、東京オリンピック出場権を得ました。


今回はカリミの鉄棒から、手離し技を一旦お休みし、鉄棒における車輪のひねり技の紹介に入ります。

「車輪」というのは、体操競技における鉄棒の演技の根幹を成す技。
車輪の中にも、体が向いている方向に回る【後方車輪】、体の向きと逆方向に回る【前方車輪】があります。
これらは、どちらもA難度の技としてあり、手離し技や終末技に向かう助走のような役割も果たします。
A難度の単純な車輪もひねりを加えることで発展させることができ、難度を上げることができます。

鉄棒のグループⅠ:ひねりを伴う、または伴わない車輪技でもっともよく使われるのが【クースト】と呼ばれる技です。
【クースト】は「後方とび車輪1回ひねり」というC難度の技です。
車輪をしながら1回ひねりを加える技です。
「とび」とあるように、明確なとび局面が見られる実施が良いということですね。
【クースト】という技名ではありますが、競技者の間では《ホップターン》という通称で呼ばれることがほとんどで、【クースト】と呼ぶ人はほぼいません。

ホップターン

そして【クースト】のさらに発展技として【リバルコ】という技もあります。
この技はD難度なのですが、減点されやすく難しい技で、よく使われる【クースト】に対し、実施する選手の少ない技です。
技の内容は「後方とび車輪1回半ひねり大逆手握り」というもの。
1回ひねる【クースト】よりもう半分ひねって「大逆手」という握り方をすることで成立します。
「大逆手」とは、逆手握りから親指を内側に向かって、小指を外側に向かって360°ひねらせた状態で鉄棒を握ることを言います。

前方車輪をするときの握り方を「逆手」と呼びます。

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それを内側に360°ひねった状態で握るのが「大逆手」。

大逆手


大逆手なんてやったことない僕にとっては想像するだけで恐ろしい握り方なのですが、肩の柔らかい選手は大逆手車輪をよく使う印象です。

【リバルコ】は、後方車輪から1回半ひねって大逆手で握るという難しさもありますが、大逆手で握ることで完了する類のひねり技は倒立から逸脱する角度によって何点減点されるかが決まります。
限りなく倒立に近い角度で大逆手に収められれば文句なしですが、なかなかそういう選手は稀有な存在です。

それでも演技構成に入れてくるカリミは相当鉄棒に自信があって、Dスコアを上げよう上げようとしている事がうかがえます。
カリミは手離し技もコバチ系の技を得意としていて、大変華のある演技です。

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カザフスタンはユニフォームのデザインがかわいくて好きです。
これは2019年世界選手権のユニフォーム。

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これは先月のワールドカップのユニフォーム。

カザフユニ


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