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ユル・モルダウアー(アメリカ)の平行棒/2021年全米選手権2日目の演技

アメリカの次世代エース、ユル・モルダウアー選手。
ジュニア時代から将来を嘱望され、シニアに上がりたての2017年から2021年まで毎年欠かさずアメリカの代表に選ばれています。
細身の体でアグレッシブな体操をする選手。
特にゆか、あん馬、平行棒を得意としていて、初出場の世界選手権では種目別ゆかで銅メダルを獲得しています。

今回はユルの平行棒から、同じ動きをする2つの技を紹介します。
まずは【ハラダ】と名の付いた技です。
現在順天堂大学体操競技部の監督である原田睦巳氏の名前が付けられています。
原田監督もまた、2000年シドニー五輪に出場したオリンピアンでした。
その技の内容は「前振り上がり後方抱え込み5/4宙返りひねり腕支持」というもの。
腕支持から後方宙返りをして半分ひねって再び腕支持で受けるD難度の技です。

ハラダ

この技は2013年頃から世界中の選手に流行りだしました。内村航平選手も演技に取り入れていましたね。

そして同じ動きを車輪の動きから行うのが《車輪ライヘルト》と呼ばれている技です。難度【ハラダ】と同じD難度。
ハラダは腕支持から始まりましたが、《車輪ライヘルト》は後方車輪の動きから宙返りに振り上げて、半分ひねった後、同じく腕支持受けをします。

ライヘルト

ユルの平行棒はいきなり高さのある《バクダン宙返り》から入ります。
②技目に【ハラダ】、棒下宙返りやディアミドフ・ヒーリー系の技も入れて、終盤に⑨《車輪ライヘルト》をやっています。
宙返り系とディアミ・ヒーリー系を程よく混在させた多彩な演技です。

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彼は生まれた時、「キョン・テ」という名前でした。
韓国・ソウルで未熟児として生まれたキョン・テは、韓国から養子縁組に出されます。
キョン・テを養子として迎え入れたのが、アメリカに住むオルサでした。
オルサには、韓国から養子として引き取られた友人がおり、自分も韓国から養子をとりたいとかねてから思っていたそうです。
オルサはキョンテの写真を見た瞬間、「この子は私たちの子どもだ」と思いました。
そしてキョンテは、オルサ・モルダウアーの一家に引き取られます。
オルサがキョン・テを引き取った時、キョン・テには髪がほとんどなかったことから、スキンヘッドの俳優ユル・ブリンナーにちなんで「ユル」と名付けられました。

やがてユル・モルダウアーは体操場に通うようになり、そこで見初められ、体操選手として生きていくことを決めるのです。

新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、アメリカは世界最代大数の感染者・死者を出しました。
それだけでなくとも、アメリカでは中国ひいてはアジアに対する憎悪が拭えません。
韓国系であるユルにもヘイトを投げかける人がいることを自身で語っています。

ユルは2028年ロサンゼルスオリンピックへの出場を目指しており、今回の東京オリンピックはその皮切りです。
幾多の困難を乗り越え、体操選手として生きるユル・モルダウアーの物語がいよいよ始まります。

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