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内村航平(日本)の鉄棒/2021年全日本種目別選手権予選の演技

世界大会個人総合8連覇、体操界のキング、日本の内村航平選手。

2008年北京オリンピック個人総合2位
2009年世界選手権個人総合優勝、
2010年世界選手権個人総合優勝、種目別ゆか2位、平行棒3位
2011年世界選手権個人総合優勝、種目別ゆか優勝、鉄棒3位
2012年ロンドンオリンピック個人総合優勝、種目別ゆか2位
2013年世界選手権個人総合優勝、種目別ゆか3位、平行棒優勝、鉄棒3位
2014年世界選手権個人総合優勝、種目別鉄棒2位
2015年世界選手権個人総合優勝、種目別鉄棒優勝
2016年リオオリンピック個人総合優勝、
2018年世界選手権種目別鉄棒2位

輝かしい成績の数々。
ここに東京オリンピックの金メダルが追加されるでしょうか。


2016年にリオ五輪で個人総合金メダルを獲得してからは困難の連続でした。

2017年の世界選手権予選の跳馬で足首を怪我、以降の演技を断念します。
2018年には直前の故障で個人総合を断念、団体と種目別鉄棒に力を注ぎます。
2019年には全日本個人総合で予選落ち。代表選考すら落選してしまいます。
2020年、東京オリンピックが延期されました。そして鉄棒1種目に絞って東京オリンピックを目指すことを決断します。
2021年、東京オリンピック予選となる国内の3大会5演技を揃えて東京オリンピック個人代表を勝ち取りました。

内村選手が東京オリンピック代表を勝ち取るために、東京オリンピックで金メダルを獲るために取得した技が、鉄棒のH難度の大技【ブレットシュナイダー】です。

ドイツの鉄棒職人アンドレアス・ブレットシュナイダー選手が2015年に発表し、その名前が付けられた大技です。

「バーを越えながら後方抱え込み2回宙返り2回ひねり」という技で、《コバチ2回ひねり》とも表記できます。

ブレットシュナイダー選手が発表してから、世界中でこの技を試す選手が増え、日本にも使い手が何人か現れました。

ブレットシュナイダー

H難度を取り入れたことでDスコアは0.3上がり、国内大会ではリオ五輪以降で世界最高の15.766という点数を出しています。
2017年~2019年の世界選手権種目別鉄棒で金メダルを獲った選手の最高が15.100なので、世界の鉄棒のレベルを大幅に超えていることになります。

世界最高スコアを出した完璧な鉄棒を見てみましょう。

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5年に及ぶ苦難の末にたどり着いた東京オリンピック。
近くて遠かった東京オリンピック。
延期されたこの1年がとても長く感じました。

――何のためにオリンピックをやるのか。

――人権侵害オリンピックだ

――普通はない

――オリンピックの政治利用だ

――日本は時代遅れ

――オリンピックより命の方が大事だ。

――オリンピックはやるのに音楽フェスは中止なのか

――出場を辞退してほしいとメッセージが届いた

――陛下が開会式で中止を宣言すれば


様々な意見、主張が国内を、世間を渦巻きました。

「平和の祭典」であるはずのオリンピックはいつしか悪の象徴、それに関わる者は悪の組織、メディアによってそんな印象が作られていきました。

オリンピックを批判した同じ番組でオリンピック選手の特集をしました。

「選手に罪はない」と言いながら、入国した選手たちを厄介者のように扱いました。

広島へ慰霊に赴いた者に罵声を浴びせました。

「多様性を受け入れる」と謳いながら、誰かを排除しました。



それでもオリンピックは開催されました。
僕は東京オリンピックがずっと楽しみでした。
完成した新国立競技場を見て胸が高鳴りました。
晴海の選手村に皆が集まっている様子に心が躍りました。
開会式で、提灯に囲まれながら五輪マークが作られるパフォーマンスに涙が出ました。
開会式で橋本会長が言った「集まってくれてありがとうございます」に大きく頷きました。

我々が直接応援に行くことはできません。
それでも応援したい気持ちだけは募ります。
我々は応援することでしか、一生に1度の東京オリンピックに関わることはできないのですから。

それぞれがそれぞれの場所で応援することは選手の力になっているのでしょうか。
我々が期待をすることで選手に要らぬプレッシャーをかけてしまうのではないでしょうか。

我々はただ、選手の成功を願う事しか、祈ることしかできません。
これまで紹介した98人の選手が皆、自身のベストを尽くせますように。
最高のパフォーマンスができますように。
選手の夢が叶いますように。
僕はずっと、ただ、祈っています。

もしこの大会で選手の夢が叶ったのならば、それが東京オリンピック開催の大儀になるのではないでしょうか。



追記:
内村選手は鉄棒の決勝に残ることはできませんでした。
この5年間、内村選手が東京オリンピックに出場するためにしてきたことを僕たちは見ていました。そして大いに楽しませてくれました。
東京オリンピックで金メダルを獲ってほしかった気持ちはもちろんありますが、それまでの過程を楽しませてもらった内村選手には感謝しかありません。
謝る必要なんてありません。



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