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日本のエース・橋本大輝選手のゆか/2019年世界選手権予選の演技

先月のNHK杯で初優勝し、東京オリンピック日本代表団体メンバーに選出された橋本大輝選手。順天堂大学2年生の19歳です。
4月の全日本選手権では6種目の合計点で争う個人総合で88点台、今期のルールにおいて世界2番目となる点数を記録するなど、東京オリンピックでエースとなりうる存在です。 

今回は2年前、橋本選手が当時高校生で日本代表に初選出された2019年の世界選手権のゆかの演技を見てみましょう。

ゆかの演技構成を組むうえで、重要なことがあります。
ゆかには、要求として「2回宙返りを必ずひとつ以上入れなければならない(3回宙返りでも可)」という鬼のようなルールがあります。
これはリオ五輪後に新設されたルールなのですが、当時この草案を見たときは震え上がりました。

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それでも選手たちはしっかりと対応します。
この動画の橋本選手も①つ目の技に「後方抱え込み2回宙返り2回ひねり」通称《新月面宙返り》《ルドルフ》とも呼ばれる)を実施しています。 

 グループ要求も忘れてはいけません。
 ゆかではアクロバット以外の技も必ずひとつは入れなければいけません。
 ゆかのグループⅠが「アクロバット以外の技」となっているためです。
 この要求を満たすため、橋本選手は⑦つ目の技に「開脚座から力十字倒立」という技をやっています。
 前回の記事のつり輪の項目で出てきた十字倒立をゆかで開脚座から腰を持ち上げてやることでC難度が得られます。

そして終末技。一番最後⑩番目にやっているのは「後方伸身宙返り3回ひねり」です。
この技はゆかの終末技として広く使われていて、D難度を稼げてグループ点も0.5を獲得できる。さらに着地も狙いやすいということで昔から人気の技です。

これらの3つの技はゆかにおいてオールラウンダー、スペシャリストにも普く使われている技なので覚えておきましょう。
 残りの技は、ひねり技の組み合わせで加点も稼ぎつつ、着地も上手にまとめています。素晴らしい演技です。

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グループ要求であるアクロバット以外の技・前方系・後方系の技もすべて取り入れてグループ点もしっかり取れていますね。

橋本選手のこの構成では組み合わせ加点は合計で0.2を獲得しています。
かで組み合わせ加点が得られる方法は前回の記事で書きましたね。 

・D難度以上の宙返り技+BorC難度の宙返り技=0.1の加点 
・D難度以上の宙返り技+D難度以上の宙返り技=0.2の加点

この通りに考えると、
②+③は【C難度】+【E難度】なので0.1の加点、
④+⑤も【C難度】+【D難度】なので0.1の加点、
⑧+⑨も【D難度】+【B難度】なので0.1の加点が得られます。

しかし、加点にはもう一つ重要なルールがあることも合わせて書きましたね。 

しかし、ゆかでは加点が得られる組み合わせは最大2回までと定められています。

橋本選手は宙返り技の連続を3回やっていますが、3回目にやった⑧+⑨の組み合わせでは加点は得られません。
というわけで、②+③で0.1の加点、④+⑤で0.1の加点、⑧+⑨はカット、合計で0.1+0.1=0.2の加点を獲得しました。

橋本選手はつり輪以外の5種目で15点台を狙えるほどの力を持っています。 団体金メダルに不可欠というだけでなく、個人総合、種目別のメダルも狙える逸材です。
 現在19歳。東京オリンピック体操競技のすべての日程を終えた直後に20歳の誕生日を迎えます。 東京オリンピックはもちろんですが、3年後、7年後と今後の活躍が楽しみな選手の一人です。


追記:団体のみならず、個人総合、そして種目別鉄棒でも予選をトップ通過しています。
3冠の期待が懸かります。
内村選手が退いた個人総合、内村選手が予選で姿を消した鉄棒、内村選手が後輩に託した団体。次代を代表する橋本選手が、東京オリンピックで躍動します。

再追記:橋本選手、見事個人総合で金メダル獲得しました!
2017年2018年2019年と個人総合の頂点は中国・ロシアが勝ち取ってきましたが、オリンピックの舞台で日本選手が、橋本選手がついにやりました!
直近のチャンピオンたちが同組で回る中で6種目大過失なく通し切った姿は立派です!おめでとうございます!

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