Celo: Building a Regenerative Economy記事まとめ

前回のReFiとは?の記事から間が空いてしまいましたが、今回はPacky McCormickさんのCelo: Building a Regenerative Economyを纏めてみました。

ReFiといえば、まずはLayer1 blockchainのCeloです。Celoが創り出す世界感をまずは理解した上で、他のアプリケーションに入っていくのが良いと思われます。私は、Celoの一次情報にDeep diveする前に、Packyさんの記事を読みました。なんといってもPackyさんからこう言われています。

I’m going to say this upfront: If you’re building a project in ReFi and you haven’t checked out Celo, you should. (中略)Celo started from its values and mission, and the architecture followed. Dive into its full documentation here, or just come with me.

私は、一次情報のドキュメントにdiveする前に、Packyさんの解説に着いていきます笑


記事の冒頭は、ReFi/Celoの世界感を説明する為の例えが続きますが、ここは気になる方は原文で読むのをオススメします。(Analogy的なのは、オリジナルの言語を話す人々の文化が反映されていると思うので、言語が変わるとなんだか意味がよく分からなくなります・・・)

初めに、CeloのMission, Value, Purposeです。この辺りは本当は一次情報を読んだり基調講演的なYouTubeを見た方が良さそうですので、今回はさらっと触れるくらいにしておきます。

Mission

Our mission is to build a financial system that creates the conditions for prosperity - for everyone.

Value

  1. Unique Talent of Individuals

  2. Strength of Communities

  3. Health and Biodiversity of Global Ecosystems

Unique Purpose and Connectedness

If everyone has a unique purpose, and we're all connected, then we're better off if everyone is given the opportunity to prosper.


ここから、記事を纏めていきます。

Missionをベースとした思想とCeloの成り立ち

Rene’s twitter profile

Money can be beautiful. (中略) Money is a technology. Technology is a story with wings. And Celo is a technology that supports a story.

この引用の思想が、シンプルで強いメッセージになっています。

  • 世界には17億人の銀行口座を持たない人々がいて、その内2/3は携帯電話を保有している。

  • その人達が、1ドル未満の送金でも自由に行えるようにしたい。しかもそれを非中央集権的に。

  • その為に、ガス代を低く抑え、送金する通貨のボラティリティを抑える事を目指す。

  • 一方で、Carbon negativeをDay1から実現する。

これらの思想は既存のBlockchainの機能では実現が難しいと判断し、 Celoの創設者は、Layer1のChainを創ることにした。

Celoの技術的側面

思想を実現する為に、というMission drivenでCeloの技術的要件は整理されており(個人的には健全な進め方に見えますが)、以下の通り。

  • EVM compatible Layer 1 blockchain。つまりSolidityで書ける。

  • Proof of Stakeを採用。勿論、ガス代が安く(平均0.001 USD)、PoW比較で環境への影響が抑えられるから。

  • Plumoなるzk-SNARKベースのlight clientの仕組みを構築。携帯電話ユーザーが多い事からlight clientの仕組みはMust。Ethereumより170万倍軽いと主張。(Marek氏の1分半の説明動画

  • High Throughputを謳っている。現在、500TPS(Transactions Per Second)。21年9月にMysten Labsとのコラボを発表。同社の持つ"Narwhal and Tusk consensus"を利用して、140k TPSを狙えると主張。

"But here's a hot take"としてPackyさんの意見が紹介されています。

時代が進むと、技術面は背後に隠れていく。AWS, Azule, Google Cloudのどれで作られていても気にしないように。今後重要になるのは、チェーンごとの強み、エコシステムの違いや特徴、何を目指しているか、どんなユーザー&開発者が集まっているか。その点、Celoは明確な違いを打ち出している。

原文より:"in terms of distinctiveness and strength of mission, no one comes close to Celo."

Celoの特徴

一言では、"Mobile-first"と"Native Stable Currencies"と言えます。

  • 非中央集権化は勿論重要だけれども、Celoの主なターゲットである銀行口座を持たない17億人のユーザー視点ではどうなのか。送受金のスムーズさ、携帯からのアクセスが容易、立ち上げのスムーズさなどの方が、目の前の優先順位になる。そこで、CeloオリジナルのウォレットであるValora wallet、Stable coinを初めから用意した。

  • 一方で非中央集権化の文脈でも特徴的なのは、Celo関連の組織/人は、Validatorになっていない。(他のL1では普通、コアチーム等がValidatorになっている)

Mobile-first

  • 例えばフィリピンでは不安定な自国通貨での送金を嫌う人が多く、ユーザー視点の文脈で、色々と学びを得ている。

  • 携帯電話の番号でアクセスできるようにしている。(Metamaskで誰もがゲンナリする、ややこしいシードフレーズではなく)

Native Stable Currencies

  • CELOが構築したStable coinが存在する。cUSD, cEUR, cREALなど。全てERC20。"Stable"なcoinを作った理由は、決済やガス代で使用する目的があり、ボラティリティを抑える事が必要だから。

  • 2021年10月に、4年以内に(つまり2025年末までに)Stable coinの裏付けの内40%はNatural capital backed assets(自然資本)にすると宣言。この自然資本の文脈で、"オリジナル"のStable coinを作る必要があった。


Missionに近い思想のメッセージとして上で挙げた
"Money is a technology. Technology is a story with wings. And Celo is a technology that supports a story."
を最も分かり易く具現化しているのが、ここで出て来た"自然資本に裏付けられたStable coin"だと思います。

Packyさんによる解説を纏めていきます。

自然資本の解説(Ver.1)

  • 古代、お金が牛に裏付けられていた時、人々はより多くの牛を育てようとした。近代、お金(US$)がGoldに裏付けられてから、Goldを産出することで多くのお金(US$)を得て、モノを買うという流れになった。

  • では、綺麗な水、森林、生物多様性に裏付けられたらどうだろうか?自然資本に裏付けられた通貨の需要が増加すれば、その通貨を支える自然資本の量も増加することになるのでは。

自然資本の解説(Ver.2)

  • USDC, USDT等のStable coinは、US$に裏付けられている。アルゴリズム型Stable coinのTerraUSDは(大変な事になりましたが)、基本的にはアルゴリズム的な売買でUS$との1対1を保つ仕組みになっているが(今回はその仕組みに焦点を当てず)、US$10billion相当のビットコインを買っていた事があった。

  • "無価値な"仮想通貨(ビットコイン)に裏付けられるStable coinが(一時期にせよ)人々に認められるなら、自然資本で裏付けられるStable coinがあっても良いのでは、というかあったら凄い発明では。

自然資本の課題(計測と証明が重要)

  • 自然資本の課題は計測とその証明。(MRV = Measurement/Monitoring, Reporting, Verification)

  • US$の裏付けとなるGoldは、溶かして延べ棒にして保管し、追跡、量の測定が可能だが、森林はそう簡単ではない。ただ、センシングやAIの技術進歩により、既に自然資本の計測と証明が可能になってきている。

  • KlimaDAOは初期の頃から活動してきて、これまで17.5Million tonのCarbon offsetを行ってきている。ただ、ほとんどは古くて低品質のCarbon creditsであり、"お掃除をしてきた"といったところか。

  • KlimaDAOは、DeFiピープルとCarbon creditを結びつけ、注目を惹きつけた事に意義がある。これから新たなCarbon offsetプロジェクトをどんどん立ち上げていく必要がある。


記事の最後にいくつかのプロジェクトが紹介されていますが、その中から一つ、興味深いくだりを紹介します。

農場におけるCarbon creditのプロジェクト"Loam"の創業者Ravi Yenduri氏が以下のように語っています。Mission drivenであることは重要と改めて思います。

They have a mission. Other chains don’t have a mission. Farmers ask why we’re doing something, and we asked the same thing.

・ほとんどのCarbon creditの供給者は、インドの農園、ブラジルの森林、ケニアの自然公園などにあり、保護や証明(Verify)はローカルの人々に依存している。
・先進国からの資金でローカルに必要な賃金を供給し、保護活動も行ってもらえるという繋がりが重要。
・Celoのエコシステム(Web3独特のコミュニティ)はその繋がりを近く感じさせる。


昨日、ReFiとは少し離れた内容のDiscordでの会話で「ReFiってSTEPNとTerra(LUNA)のあいのこみたいですよね」というコメントを聞きました。すごく分かる気がしました(笑)理想は分かるけど、実際、現場に持ちこんだ時にどうなの?という話です。現場周りのドブ板営業もやってきた経験から、理想と現実の間のニュアンスは肌感覚でよく分かります。もし、Mission drivenでもあり、現場側のリアルも抑えていると、非常に有効性の高いプロジェクトになると思います。

次回以降、CeloにDeep diveするか(diveの結果、思想方面に寄っていく事になるような気も?)、現実的に実効性のあるプロジェクトを調査してみるか、調査の方向性を考えながら進めていきます。

End…
(毎度、長文にお付き合い頂きありがとうございます)


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