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日常写真

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雑記、小さな話題
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#短文

どこかの場所からの眺め

写真に写っている光景のなかに自分はいないけれど、どこかからそれを眺めている自分がいる。空とか、遠くの山々、街、木々といったもの。カメラは外界を内側へと裏返して記録する装置で、写っている景観はどこか特定の場所からの眺めなのだから、その場所から見ている誰かがいなければ、世界は成立しない。どこでもない場所から世界を眺めることはできないだろう。誰の視点でもない眺めというのは想像できないけれど、誰かが見ているわけではなくても、世界はそのとおりにあって、眩しい光を発している。

住宅地

住宅地に入ると、歩いている人も少ない。空には薄い曇がかかったまま、何事もなく静かな昼だった。曲がりくねった坂道が多い地域で、少し歩くだけで視界がどんどん変わる。やがて小さな公園があって、長いこと誰も遊んでないかのように、鉄柵が赤くさび付いている。そこを過ぎると、広い通りに出た。ここよりもっと郊外のほうへ行きたい気分になって、もう少し新しく開けた場所がよさそうだと思うのだけど、いつ行くかは決めてない。

遠景と空

写真を撮ることが多かったのは、SNSに投稿するためだった。言葉の代わりに、写真を使っていたのだ。写真は寡黙なまま、空白を埋めてくれる。そこに写っているものは、とくに意味のあるものでなくてよかった。街中の写真は少ない。何かが近くではっきりと写っているような写真もそう多くない。遠景と空の写真ばかりだ。あまり考えずに写しては、色だけ加工して投稿する。色を加工するのは、少しでも現実味をなくすためだった。それ以上凝ったことはあまりしていない。1枚の写真が投稿できれば、それでよかったのだ