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TRPG制作日記(497) TRPGにドラマを与える2

現代稲生物怪録TRPGはキャラクターを演じて楽しむ対話型ゲームです。プレイヤーは妖怪を召喚できる高校生となり、屋敷からの脱出を目指します。

ある朝、四人の高校生が目を覚ますと洋館の正面広間にいた。広間にはスリコギ手と名乗る着物姿の娘がいて、明日の二十四時までに銀の鍵を手に入れることができなかった場合は全員を妖怪館に永遠に閉じ込められると伝えた。銀の鍵は洋館にいる妖怪が盗んだ可能性が高いようだ。また、銀の鍵を手に入れるために、補佐として妖怪が封じられたカードをそれぞれの高校生に渡していると教えてくれた。確認すると、確かに六枚ずつカードが配られている。さあ、高校生達は無事に銀の鍵を手に入れて妖怪たちの暮らす洋館から脱出することができるのだろうか?

現代稲生物怪録TRPG

今日は、前回と同じようにTRPGとドラマを整理します。


シナリオは状況の集まりであり、プレイヤーは状況を選択しながらシナリオ攻略を目指します。

そして、状況に意味を与えるのがドラマです。

目的、対立、葛藤、決断により選択はドラマになります。


状況の選択にドラマを与えるためには、共感だけではなくて反感も必要になります。

プレイヤーは登場人物(PCおよびNPC)たちの発言や行動に共感したり、反感したりしますが、このときの共感と反感がゲームを面白くします。

そして、共感と反感は双方とも状況理解に基づきます。

状況理解 → 共感と反感 → 面白い!


また、共感は理解のしやすさ、反感は理解の難しさになります。理解できる言説と理解が難しい言説が混じっていることがポイントです。


以上の流れを作るためには、プレイヤーが演じるキャラクターは可能な限りプレイヤー自身と似た設定にしておいて、ゲームマスターが演じる敵対者たちはプレイヤーからかけ離れた謎の存在にしておく方が適切でしょう。

そうすることで、プレイヤーはキャタクターを演じながら、敵対者を理解しようとして、また敵対者を理解しようとすることにより自分が演じるプレイヤーをより深く理解します。



TRPGにおいては、プレイヤーは三つのドラマを体験します。

一つ目は、キャラクターを演じることによるドラマ。プレイヤーはキャタクターシートを読み、キャラクターを理解して、まるでバレエのダンサーが行うようにキャラクターを演じます。

これはキャラクターによるドラマです。


二つ目は、シナリオ攻略によるドラマです。

TRPGはキャラクターを演じるだけではなくて、同時に洋館から脱出するというシナリオ目的を達成するための努力を行います。

これはTRPGの難しいところであり、プレイヤーは演劇やバレエのようにキャタクターを演じるだけではなくて、なぞなぞのように問題を解いて目的の達成を目指さなくてはなりません。

そして、たいてい、演技とシナリオ攻略は完全には一致しません。キャタクターを演じることにより、シナリオ攻略に集中できない、またはシナリオ攻略のための最適戦略をとれないため、多くの場合は演技と攻略は対立関係にあります。

そして、演劇(芸術)と攻略(ゲーム、スポーツ)の二つのドラマを同時に楽しめるのがTRPGの面白さでもあります。



三つ目は、セッションを完成させるドラマです。

TRPGは、ゲームマスターが物語を、プレイヤーが登場人物を担当することで一つの物語を完成させる即興芸術です。

そして、この「物語を創造する即興芸術」というのがTRPGの本質であり、そして表向きの目的です。

そのため、TRPGは参加すること自体が面白くなければなりませんし、TRPGが勉強や修業ではなくゲームである以上は、面白さ、そして物語の創造は卓越した演技や合理的なシナリオ攻略よりも優先されます。


セッションが開始されて、終了するまでの間にゲームマスターとプレイヤーの間にはさまざまな目的、対立、葛藤、決断が生まれます。つまり、ここにもドラマがあります。



多くの芸術やゲームは、詩の会のように詩を創作する、演劇やバレエのようにキャタクターを演じることだけを楽しむ、またはスポーツのように勝利のみを目指す場合が基本です。生まれるドラマを絞った方が、プレイヤーが目的を理解しやすいからです。

しかし、TRPGは、むしろ総合娯楽としての道を進んできました。

そのため、第一(演技)、第二(問題解決)、第三(人間関係)のどのドラマ体験をプレイヤーから排除するのかはTRPGは考えません。



今日は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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