【詩】スケープ・ゴースト・ビルディング
「なあ知ってるか? このビルお化けが出るんだぜ」
全く何を言い出すのか。
お化けなどいるはずもない。
いるのなら、化けて出るべき人が来ないのはおかしいだろう?
「なんだよ。だからこうして出てきてやったのに」
お前はそうだが違う。違うんだよ。
「僕に会いたくなかったか?」
会いたかったさ。だから、ここにいると余計に悲しいのだ。
窓を開けると埃が舞って、積年の愛憎が散り散りになる。光らない。月明かりでは足りないのだ。この場所を照らすには。手をかざす。あの日と同じように。届か