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【時事抄】 技術流出防止、警察との連携に別の本音があるや否や

海外、とくに中国や北朝鮮方面への技術流出に対して、警戒感が高まっています。企業と警察の連携強化に双方が積極的だと報じていますが、海外技術流出を取り締まる警察への不信感も、連携強化に一役買っている気がします。ご存知の方も多い、警視庁公安部による例の事件のせいです。

まずは連携強化に関する日本経済新聞の記事から見てみましょう。

<要約>
企業と警察が連携して中小企業の先端技術が海外へ流出するのを防ぐ京都発の取り組みが注目を集める。海外企業とM&Aや業務提携を検討する際、府警の助言が得られ、講演や研修を通じて情報も入手できる。京都で始まった技術流出を防ぐ枠組みは、警察庁が主導のもと、愛知県や神奈川県など24府県へ同様のネットワークが広がる。

13年の京都での事件が端緒だった。技術流出を念頭に捜査が行われた結果、自衛官と中国人ホステスの偽装結婚に絡み、関係先から300以上の企業や団体の名刺が見つかった。スパイの関与が疑われる。

14年に専門組織「モノづくり・プリザーブ」を創設、府警職員が企業を定期訪問して困りごとを聞き、企業研修や経済団体の講演などに出向いてスパイ事案や業務上の注意点を共有する。懸念先リストも活用する。

京都市の電子部品製造メーカーは、海外企業と生産面での提携を検討した。事業環境などの理由で見送ったが、会社役員は中小企業が独力で海外提携先候補を調べるのは困難が多く、府警のサポートは心強かったと語る。

京都市のロボット開発メーカーでは、21年ごろ、元子会社の鳥取県の企業が中国企業に技術を譲渡しようとしていた。元子会社が経営破綻し技術流出は避けられたが、中国不動産大手から事業買収の打診を受けたこともあった。医療用にも応用可能な、ロボットの制御技術が狙われた模様だ。

特許庁の外郭団体「工業所有権情報・研修館」(INPIT)は海外進出を狙う中小企業の知財管理をサポートするほか、営業秘密の管理などに経験豊富だ。専門員も「困ったことがあれば、相談してほしい」と訴える。

22年の経済安全保障推進法の成立以降、国は軍事転用可能な先端技術の海外流出防止に注力する。INPITが22年度の営業秘密についての支援は909件で、17年から2倍に増えた。専門家によれば、中国などは「自国に必要な先端技術をリストアップ」しており、中小企業も機密情報へのアクセス制限など、コストをかけた実効性の高い対策が必要と話す。

◆規制対象か否か 事前判定、当局が支援を 
企業をサポートする警察は、一方で海外への技術流出の取り締まる役目も担う。つい最近でも、兵器製造へ転用可能な装置を無許可で輸出したと横浜市の会社経営者を起訴し、その後に取り消しに至り、23年に東京地裁が違法捜査だったと指弾した。

経済安保に詳しい弁護士は、「該非判定」の支援強化を要望する。判定には技術的な専門性を求められ、解釈に迷う規定も多く、警察と民間による支援だけでは限界があるという。中小企業が萎縮せず海外と取引ができる体制づくりが必要だ。

(原文2122文字→1097文字)


横浜市の機械メーカー大川原化工機をめぐる冤罪事件について、NHKが何度も特番を組んで報じています。国内シェア7割を誇る噴霧乾燥機の中国への輸出に嫌疑をかけて社長ら幹部3名を逮捕し、うち一人は病状悪化により収監中に死去しました。警察内部の出世争いを動機にした「作られた事件」だった可能性が極めて高く、警察ならびに起訴判断した東京地検への信頼を大きく損なう出来事でした。

今回取り上げた記事に、企業関係者が警察関係者に事前に相談ができるから安心だ、とのコメントが載せられていました。

額面通りに不案内な海外進出に対して有益な知見が得られるから「安心だ」という意味とは別に、警察関係と日頃から密にコミュニケーションを取ることで、万一にも経済安全保障上の容疑がかけられた時、「警察の皆さんとも相談を重ねてきた」との釈明ができる、お上に対して保険がかけられて「安心だ」という意味もあるのではないでしょうか😤。

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