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【時事抄】 首相交代で望む経済政策とは

9月27日、自民党総裁選の投開票で一体誰が選出されるのか。今はまだお料理前の材料ばかりで、何ができるかはお楽しみとばかり混沌としています。報道されるのは、「誰が」「いつ」立候補を表明するのか。そして誰が「勝てそうか」。勝ち馬に乗りたい人々が、風の流れを読む日々とお見受けします。

我々国民は出来上がった料理を食べるしかありません。憲法改正や裏金規制など意見の分かれる問題とは異なり、経済政策の目標は割とハッキリしています。経済政策だけは、期待する目線を持った新首相誕生を願うばかり。

日経新聞の匿名筆者によるコラム「大機小機」に、経済政策の目指すべき山頂が何かが簡潔にまとめてましたので、要約しました。筆者の「隅田川」氏は財政規律派と思われる常連の論者さんです。

<要約>
来るべき新首相には、岸田首相の成果を引き継ぐ一方、時流に沿わぬ政策を方向転換させてほしい。そういった経済政策をここで3つ挙げたい。

第一は、「デフレからの脱却」を最重要目標とする姿勢から、ポストデフレ型の政策運営への方向転換だ。政府は「物価が持続的に下落する状況」をデフレとし、デフレ脱却を「再びそうした状況に戻る見込みがないこと」とする。つまり政府は物価下落を心配しているわけだが、デフレからの脱却を目指すのではなく、インフレの更なる進行を懸念すべきだ。

なぜなら22年4月以降、日本の消費者物価(総合)は2年以上も前年同月比で2%以上の上昇が続く。日本経済は既にポストデフレ時代に入っているし、国民はもう物価上昇を望んでいない。

第二は、財政再建、バラマキをやめることだ。岸田首相の年金世帯や低所得者への給付金支給は、国民の受けを狙った典型的なバラマキだった。毎年のように経済対策の策定と補正予算の編成を繰り返すのを止めるべきだ。超低金利下で「打ち出の小づち」のように財政拡大できた時代は終わった。

第三は、「異次元の少子化対策」の見直しだ。岸田首相は、年間3.6兆円もの予算措置を講じて少子化対策に力を注いだ。しかし、これが「合計特殊出生率」を高める上でどの程度の効果があるのか。人口減少の抑制には出生率を2.07程度まで高めねばならない。だが、現状1.20という出生率を考えれば無理だ。目標も効果も不明確なまま、巨額の少子化対策を続けていくのか?

背伸びした目標を掲げることをやめ、人口減少を所与として共存するような経済・社会を目指すべきだ。

(原文908文字→680文字)


今年7月、政府は「基礎的財政収支」が来年2025年度に国と地方あわせて8000億円程度の黒字になるとの試算を示しました。2%を超えるインフレの定着賃金上昇、相次ぐ商品サービス価格の値上げで企業業績の回復し、税収増が歳出を上回った結果です。インフレによる名目値の上昇が黒字化の原動力でした。

基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、税収・税外収入と、国債費を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費(社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費)を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標となっています。

財務省HPより
財務省HPより
https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-03.html

世界的にも最悪と言われる日本財政の債務残高水準にあって、インフレの定着賃金上昇によって財政再建が正しい形で進もうとしているのは喜ばしいことです。非業の死を遂げた安倍元首相がアベノミクスを通じて成し遂げたかったことは、恐らくこれだったでしょう。

経済政策面については、次の首相もぜひこの流れを引き継いでもらいたい。とはいえアベノミクスの継続はもう無理です。安倍政権の終盤でアベノミクスは既に破綻してました。引き継ぐべきは、緩やかなインフレの継続、これをやや上回る賃金上昇の流れです。そして課題のラスボスは膨れ上がる社会保障費の大改修。もしこれが成せれば、もう勇気ある名宰相ですが、今の候補者からは「安全・安心」の題目を並べるだけで、改修への意欲を見せる声は全く聞こえてきません。

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