見出し画像

いつも素通りしている台北駅のホールで、旅を楽しくする演出を探してみる


 
桃園空港からMRTに乗って台北駅に到着し、大勢が床に座り込んているホールの光景を見て、「台北に着いた!」と心の中で叫んでいる人も多いのではないでしょうか。

台北に住んでいる私も、高雄や台南から高鉄(新幹線)で台北に戻りホールに到着すると、「ただいま」と言いたくなる反面、旅行の余韻を楽しみたいので、しばらく用もないのにブラブラしています。

この空間には、台湾旅行をより楽しくする演出が仕掛けられているような気がします。そこで、今回はその仕掛けを探してみたいと思います。


切符売り場の上に書かれている力強い「臺北車站」の文字

切符売り場の上の「台北車站」の文字

まずは大きく書かれた「台北車站」の文字を見てください。「車站」は中国語で駅という意味です。力強い筆遣いの文字は、台湾で有名な書道家、董陽孜女士が書いたものです。

このように説明しても、ほとんどの人は興味なさそうに「フーン」と言いながらおみやげを買いに行ってしまうのですが、ぜひ最後まで聞いてください。

名前を聞いてもピンとこないと思いますが、最近10年以内に台湾に来たことがある人であれば、気が付かないうちにこの人のお世話になっています。

パスポートが手元にある人は、台湾の出入国のスタンプを見てください。「台北車站」の文字とスタンプの文字と、字体が同じように見えませんか?実は同じ人が書いているのです。

台湾入国のスタンプ(入国時の条件によりスタンプの内容が異なります)
台湾出国のスタンプ(入国時の条件によりスタンプの内容が異なります)


私は書道に詳しくないので、字体を比べてもまったくわかりません(泣)

入国のスタンプは八角形、出国のものは丸くなっています。入国の八角形は、道教で使う八掛という魔除けの道具をかたどっており、邪気を入国させないという意味を含んでいます。

出国スタンプの丸い形は、無事円満に出国(外国人にとっては帰国)できるようにとの願いが込められています。スタンプにも台湾の伝統的な考え方が反映されているのですね。

空港のスタンプと「台北車站」四文字の意外な関係を知ってから列車に乗り込むと、台湾の旅がより一層楽しいものになるかもしれません。
 

大きなからくり時計

列車が走るからくり時計

今度は、「台北車站」の文字の向かいにある、からくり時計をご覧ください。毎時0分になると列車が動き出し音楽が鳴ります。

この曲は、「丟丟銅仔(ティウティウタゥガー)」という曲で、1924年に台北から宜蘭へ向かう鉄道が開通したことを記念して作られた童謡です。「丟丟銅仔(ティウティウタゥガー)」という音は、蒸気機関車がトンネルの中を走っているときに聞こえてくる水滴の音だとも言われています。

クラシック仕立ての迫力のある音楽に合わせて、蒸気機関車が汽笛を鳴らしながら走っているのを見ると、今すぐ列車に飛び乗って遠くへ行きたくなってしまいます。
 
この曲は、日本時代の迪化街をテーマにしたテレビドラマ『紫色大稻埕』や映画『大稻埕』にも登場します。台湾語の劇を上演しているときに警官がやってきて中止させようとしたところ、役者と観客が一丸となってこの「丟丟銅仔」を歌い警官を追い返したという歴史上のエピソードを、ストーリーの中で再現しています。のどかな雰囲気の曲ですが、日本統治時代には市民の不満を爆発させたほどパワーも秘めています。
 
公共電視台 『紫色大稻埕』
公式ホームページより
 

不思議な場所にある郵便ポスト

投函に高度な技が必要なポスト

旅行先で記念に絵葉書を投函している方も多いのではないでしょうか。そんな方にお勧めなのが、下りのエスカレーターに乗りながら投函するアクロバットポストです。

ポストは緑と赤の2種類あり、航空便で日本へ郵送するには、赤のポストの右側の投函口に入れなければなりません。かなり高度な技が必要なのか、エスカレーターに乗りながら投函している人の姿は見たことがありません。

では、地元の人はどのように投函しているのでしょうか? 実は通路側にも投函口があるので、誰でも簡単に投函することができます(笑)
 

待ち合わせのおすすめは「東3出口」

台北駅の地上の出口には「南1出口」「西2出口」のように、方角と数字が書いてあるので、とてもわかりやすいつくりになっています(地下は、迷子になって出られなくほど複雑怪奇です)。

友人と待ち合わせをする時は、「東3出口」を選んでみてください。ここはツアーに参加する人たちの集合場所になっています。お揃いの旅行会社のバッジをつけている人たちが楽しそうに話していたり、添乗員らしき人が大声で叫んでいたりするのを眺めていると、まるで自分自身もツアーに参加するような気分になってきます。
 
次回台北駅で乗り換える時は、足早に通り過ぎるのではなく、ホールで少しゆっくりして旅を楽しくする演出を探してみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?