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【アークナイツ】フロストノヴァ:これからは、ロドスと共に。6章 局部壊死シナリオ考察

サムネイルは蒼空キズナさん(@kizuna_bluesky)より。
【注意】この考察は非公式であり、ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。また、今回の考察は杨颜同学氏の記事を元に、日本語で再構成しました(一部、ニュアンスを大きく変更しています)。最後にリンクを設けているので、中国語が読める方はぜひ元の文章でも読んでみてください。


6章『局部壊死』のシナリオを読み終えたとき、1つの疑問が残りました。



なぜ、フロストノヴァは最期にロドスと戦うことを選んだのか。



彼女はタルラに対して疑念を抱いており、ドクターにその複雑な胸中を語りました。

フロストノヴァ:今、彼女は龍門を奪取しようと画策している。チェルノボーグの時と違うのは、それを瓦礫の山にするのではなく、そのまま感染者たちの都市に仕立て上げようとしていることだ。
そんなことをしようとする者を信じられるか?
(中略)
我々が袂を分かつことになるのならー彼女が感染者たちを欺いているのなら、あるいは感染者の不利になる陰謀を画策しているというなら……。
私は彼女と戦うだろう。彼女には、裏切りの代価を払わせる必要がある。


スノーデビル小隊が龍門に現れた黒装束たちによって全滅する直前、彼らはフロストノヴァを義父のボジョカスティに会わせてやりたいという遺志を迷彩狙撃兵たちに託しました。しかし、兄弟姉妹を失ったフロストノヴァは断固たる意志でロドスと対峙することを選びます。


愛国者は、再び愛するものを失う痛みを味わうこととなりました。


彼女の身は、今にも砕け散りそうな氷片の如くひび割れたものでありながら、ロドス屈指の精鋭であるアーミヤ・ブレイズ・グレースロートの3人を制圧するほどの脅威を見せつけます。


それほどの底力をまだその身に宿しているならば、ロドスの医療技術によって、彼女の生命を伸ばすことができたのかもしれません。


しかし、所詮それはただの仮定に過ぎません。


どれだけ良い結果を望んだとしても、結末は変わりません。


今回の記事では、フロストノヴァは何を想い、最期の選択をすることになったのか、彼女の旅路を紐解いていこうと思います。

家族、兄弟姉妹、仲間を守れなかった少女の後悔、絡み合う思惑によって不条理な道を歩むことになった戦士の怒り。テラは、無情にも彼女に残された時間を奪い去り、死を迎えざるを得ない残酷な状況を見せつけます。

少女の歩んできた過去には火もなく、光もなく。


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感染者への迫害の闇は、歴史に根差しています。

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937年にエリック卿とピースバーグ議会大学リーラン教授共著の論文では、感染者の隔離と処刑が、近代法の制定時から存在していたことが6章の冒頭で述べられています。

つまり、人間の善悪の尺度である律法は、感染者を最初から疑う余地のない悪と定義していたのです。

アークナイツの世界において、6章は1097年であり、937年というのはその160年前に当たります。大陸版で6章が実装されたのは2019年。その160年前は、ダーウィンが『種の起源』を出版した年となります。

ダーウィンの進化論は生物学に留まることなく、優生学(生物の遺伝構造を改良する事で人類の進歩を促そうとする科学的社会改良運動)の論拠となり、度々政治利用されることがありました。

ナチスによる人種政策がその最たる例です。

テラ世界で紡がれた歴史において、文明の興隆と種族の繁栄には、感染者の迫害が伴っていることを仄めかしています。

フロストノヴァの物語は、この暗黒の歴史を体現するものでした。

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凍てつく大地の採掘場で生まれた少女エレーナは、物心がつくかつかないかの幼い頃、目の前で両親を失くしています。彼女の人生の始まりは、温かさとは無縁でした。

一人の男が矢を身体で受け止め、一人の女を守った。そしてその女は私を胸に抱き、背中で第二波の矢を受けた。幼い頃から頭にこびりついて離れない光景さ。

エレーナを育んだ祖母も雪原を紅色に染めることとなり、ウルサスの監視官たちは幼子たちをもその手にかけようとします。辛くも、ボジョカスティ率いる遊撃部隊は少女たちを救い出し、エレーナの心の奥底にある温かな感情を呼び覚まします。彼女の目に映る世界は、氷を割り、別の色を帯び始めました。・・・ボジョカスティはエレーナに生きるための信念と戦うための精神力を授けたと言えるでしょうか。

ボジョカスティ同様に戦士となった9歳のエレーナは、涙を流しながらも自分より年上の子供たちを叱責します。

自由になったら、その時大声で泣けばいい。荒野で、雪原で、高く積もった藁の上で、泣き叫べばいい!

この時から、少女エレーナは戦士フロストノヴァとなりました。

しかし同時に、それは彼女の悲劇の始まりでもあります。

フロストノヴァにとっての最大の苦痛は、彼女が数多の感染者と同じ悲惨な経験を経たことではなく、悲痛の中に希望を見出そうと足掻き続けるも、その全てが挫折に終わってしまったことです。

彼女は、鉱山がその身に刻んだ寒さを乗り越え、同胞たちのための新たな理想郷を探し、感染者たちの境遇が少しでも希望に満ちたものとなるよう戦い、正義を勝ち取ることを信じて歩み続けていました。

・・・しかし、彼女は遂に、それを成し得ませんでした。

私の兄弟姉妹たちは……私がむざむざ死なせてしまった。私たちには、何もできなかった。私の命には……何の価値もなかった。

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大地を照らすために戦った焔。龍門という異国の地でその灯が果てることとなります。

レユニオンを束ねているタルラは、様々な陰謀が渦巻く中に身を置き、無意味な犠牲を積み上げていきます。戦いの果てに得られるはずだった安住の地は遂に見果てぬ夢となり、フロストノヴァは兄弟姉妹たちを龍門で失います。

世界は感染者への弾圧を止めることをせず、ウルサスにおいても龍門においても感染者の居場所は失われていきます。

フロストノヴァの怒りは欺瞞に満ちたタルラに対するものではなく、絶え間ない努力が奈落の底へと滑り落ちていく現実に振り向けられたものです。

「なぜ私はあの場にいられなかった? なぜ私はこんなにも弱い? なぜ私は止められなかった?」
私にあるのは、この醜悪な大地に対して尽きぬ怒りだけだ。

感染者はオリジニウムによって異形の身体に成り果てたとしても、その精神は紛れもなく一人の人間であり、ただ、普通の生活を送ることを望んでいるに過ぎません。

ロドスのような組織が感染者への差別を助長する土壌を根絶するために働きかけても、無知な人々の心の根に憎しみを植え付けようとする大きな陰謀は絶えず存在し続けます。

吐き気を催すほどに狂い果て、歪みきった社会が生み出した集団心理は、「健全な社会存続のため」という”正義”のレッテルに覆われ、嬉々として感染者を断罪する人が絶えることはありません。

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しかし、フロストノヴァはそんな残酷な世界を、嫌いにはなりませんでした。

彼女を愛してくれる父親、年上ながら自分のことを「姐さん」と慕ってくれる兄弟姉妹たち。欺瞞によってその身を亡ぼす結果になろうとも、彼女はタルラの身を案じます。

……私個人としての願いだ、彼女を救ってやってくれ。いや、彼女の助けになってほしい。私たちのような数多の感染者の同胞たちと共に……。
あの本物の……泥に塗れながら進み続ける……タルラを……。

変わり果てたレユニオンの代表者が、かつての自身と同じように鉱山で迷子になった哀れな一人の少女に過ぎないと、フロストノヴァは心のどこかで認識しています。

火種の無い寒々とした大地に生まれながら、懸命に生き延びようとする家族たちの想いは、フロストノヴァの心を常に満たしていました。

故に、彼らの運命を虐げ踏みにじる巨悪が世界に存在していたとしても、その心が敗北することはなく、その邪悪さに身を委ねることもなく、彼女は戦いを続けてきました。

しかし、十数年に渡って彼女を蝕み続けた鉱石病は容赦なく彼女の体力を奪い、選択肢を奪い、残された時間をも奪います。自分自身の為すことに疑問を持ち、ウルサスに疑問を持ち、この戦争に疑問を持ち、タルラに疑問を持ち…フロストノヴァが最後に疑問を持ったのはこの容赦のない世界に対してです。


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『フロストノヴァに生きてほしい』

次々に投稿されるファンアートやロドスへ入職するコラ画像を見るたびに、プレイヤーたちのそんな切実な想いをひしひしと感じます。

異なる世界線では、フロストノヴァはロドスに入り、紅茶を淹れてくれるセイロンやお菓子を持ってきたムースと共に談笑し、作戦から帰還した後の宿舎で安寧のひと時を過ごしているかもしれません。或いは、待機中のセリフで「まだ勝利していないのだから、気を引き締めるべきだ」とドクターを諫めるでしょうか。

・・・どれだけ妄想を重ねようと、どれだけ暗闇の中で光を求めようと、それは「もしそうだったら…」という思考の枠組みに留まる他ありません。


フロストノヴァはドクターに対して恐怖があるのか尋ねた後、ぼやきました。

私も常に考え、自らに問いかけている……。
「死が怖いのか?」と

兄弟姉妹たちに先立たれ、生き残ってしまったフロストノヴァは、恐らく、死を恐れていました。

彼女は同胞たちの願いをその身に宿してしまいました。自身が死んだとしても、先に逝ってしまった仲間たちの願いを叶えることはできず、誰との約束も果たすことができず、怒り、恨み、後悔…渦巻いた感情が、鉱石病による身体の蝕み以上に彼女の精神を犯します。

仮にもし我々が生き延びたとしても、どこに行けと言うのだ?


スノーデビル小隊が気にかけていた通り、フロストノヴァ自身、ボジョカスティへの再会を望んでいました。たとえ偽りの親子関係であったとしても、ボジョカスティはフロストノヴァを必死に生かそうとしました。

チェルノボーグへ戻り、自身がどれだけ父親を愛していたのかを伝えることは、遂に叶いませんでした。

ドクター:君の父は、君を心から愛していたと思う。君のために死んだ両親を、君が覚えていたように。父が君のためにやってきた全てを、君は覚えている。
フロストノヴァ:……。そんなこと……もちろん知っているさ……。ただ……いま私は奴よりも先に、死のうとしているのだ……。

彼女の最期の一言は、父親に向けたものでした。

……父さん……私は本当に……馬鹿な娘だったよ……。
……でも……許して……。


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フロストノヴァが目の当たりにしてきた流血と悲しみ、互いに支え合う同胞たちとの絆が、彼女を一人の戦士にしていました。

同じ苦しみを持つ人をこれ以上生み出さないようにするため、先に旅立っていった仲間たちの理想を叶えるため、忘れらない怒りを、暗い世界の中で、もがきながら明日を求める人々へと伝えていくため、彼女は最期にロドスへと対峙します。

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フロストノヴァは自身がレユニオンの一隊長に過ぎないと、タルラであれば全てが始まる前に相手の死期を決める、とアーミヤたちを挑発しました。

フロストノヴァはロドスがタルラに立ち向かう姿を想像し、試したのでしょうか。

それは極めてシンプルなルールのゲーム ー 掲げた理想を成就することがゲームのクリア条件です。タルラという難攻不落のボスに挑む資格を得るためには、レユニオンの隊長を攻略しなくてはいけません。

この戦いはロドスが理想を達成できるか試すための試練…というよりは、フロストノヴァなりのロドスに対する指導であり、彼女が持っている最期の僅かな力でロドスが前へと進むための道を切り開きたくための手段でした。

フロストノヴァの重い感情を受け取め、アーミヤは彼女の真意を理解しました。

アーミヤ:フロストノヴァさん、あなたのその想い、いま私が確かに受け取りました。
フロストノヴァ:なぜ、涙を流す?
アーミヤ:だって……。フロストノヴァさん……あなたは……。
アーミヤ:「それが必要な戦いならば、最後まで戦い抜く。」ドクター。フロストノヴァさんと戦いましょう。どちらかが倒れるまで。
フロストノヴァ:そうだ。今ここで……私と決着をつけよ。

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フロストノヴァ:私を破り、タルラに打ち勝て。


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自身を打ち破ったらロドスへ入ろう、と約束しながらフロストノヴァは自身にその資格が無いと口にしました。

お前たちを傷つけ、レユニオンと共に罪なき龍門人を標的にし、結果としてウルサスの感染者たちの暗い未来の訪れを早めた。そんな者には、ロドスへ行く資格などありはしない。

言葉を選ばずに表現するならば、彼女は自身を過小評価し、自身の人生を軽んじ、全てを自身の責任にしました。ただ、全てを背負う姿勢は彼女の優しさとも言え、覚悟とも言え、死と向き合い、残すべきものを残していったフロストノヴァは、1章でドクター救出作戦でその身を賭したロドスのオペレーターたちと通じるものがあります。

ロドスの戦士には、何かのために戦う意思が、あったようだ。あの戦い方は、報酬のためだけに戦う、傭兵とは違う。彼は敗れた。だが無数の精鋭を、道連れに、射殺した勇猛さは、傭兵部隊のリーダーさえ、怒り狂うほどだった。 
戦地の逸話「無名氏の戦争」パトリオット会話より


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それは、数多の犠牲の物語。

一つ一つの戦いが、ロドスの礎となっています。

6章で描かれた世界は非常に重く苦しいものですが、一つの大きなテーマが紡がれています。

そのテーマは「理想」と呼ばれるものです。絶望の中にありながら、理想を持つ人々によって世界は変わっていきます。

フロストノヴァは全てをロドスに、アーミヤに、ドクターに託しました。

フロストノヴァ:死にゆく私に、これ以上付き合う必要はない。お前たちがまだ救える者たちを救うんだ。

前に進み続けることで、彼女との約束を果たすことができます。


今この瞬間から……私がお前の側にいる……。私が……お前たちと共に歩む……。私も……ロドスの一員となろう……。

そして、頬に触れた指と、胸に抱いたフロストノヴァの体温を忘れることのないように。

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冷たい運命に飲まれても
消えそうな灯火を手に
潰れそうな夜も 歩みは止めないの
それぞれの真実と痛みの果てに
いつか全てが壊れても

何のため? 誰のために?
答えはなく運命は終幕を辿る
せめて少しでもこの灯繋ぐよ
囁くように歌う 祈るように歌う

I sing Ark song

Untitled world  |  ReoNa





参考リンク


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