【直前考察】「ウルサスの子供たち」告知PVとグム、イースチナについて
【注意】この考察は非公式であり、個人の見解や推測、一部ネタバレ要素を含みます。2020年9月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。
大陸版での実装順をなぞるならば、危機契約#0を乗り越えたドクターが迎えるイベントはケルシーやアーミヤ、ドクター、そしてWを取り巻く様々な事情が語られるサイドストーリー「黒夜生誕」でした。
しかし待ち受けているのは —
不穏なツイート文と共に開催が予告された、新イベント「ウルサスの子供たち」です。
上記告知の3日後、アニメPVが公開されました。
お茶会…なんていかがかしら?
濃厚な香りと共に、ゆっくりお話を。
アークナイツ新イベント「ウルサスの子供たち」
あの苦味を、噛み締めながら。
明るいBGMと登場するキャラクターの表情がかみ合わず、却って不気味さを演出するPVに騒然とした方も多いのではないでしょうか。
実装まで残り1日の段階(執筆時:9月28日)で書くような記事ではないかもしれませんが、新イベントを楽しむため、ネタバレを避けながら現時点で分かることをまとめていきます。
日本版PV
このPV、今までとは異なり『限定公開』版のPVが存在します。
▼彼女たちの「本心」を、覗いてください。
不安不信不条理。
忘れざる学園の光景がやがて終幕の無い劇となる。
アークナイツ新イベント「ウルサスの子供たち」
過去が、今もわたくしたちを責め立てる。
語りを務めるのは、イベントと共に実装されるオペレーターのロサ(CV. 上田麗奈さん)です。
また、PVに使用されている曲のフルバージョンは公式アカウントよりビリビリ動画に投稿されています。
我们跨步前进,向每寸土地响亮问好。
我们高歌齐唱,钢铁意志远比炮火有力量。
我々は前進し、大地の隅々にまで響き渡る挨拶をする。
我々は歌う、鋼鉄の意志は大砲よりも強い。
金管楽器の音色と共に、大衆を鼓舞するかのような盛大なリズム。ウルサスのモチーフとなった国がロシアであることを踏まえると、ソビエトの軍歌をイメージして作られた曲でしょうか。
参考)【ソ連軍歌】ソヴィエト陸軍の歌【日本語字幕】
大陸版の告知PV
大陸にてイベントが実施された際には、日本とは異なるPVがビリビリ動画に投稿されました。
いくつか主要なポイントを確認していきます。
中央に『CHERNOBOG』チェルノボーグという赤文字が躍っています。
グムたち、ウルサス学生自治団のメンバーはチェルノボーグより、レユニオンによって引き起こされた暴動から逃げ延びました。
今回のイベントはその最中、彼女たちの身に何が起こったのかを描いたストーリーです。
グム
古米改変不了"古米"
グムには、「グム」を変えられない
ロサ
让我就这么死在那里, 对我来说说不定是最好的呢
あそこで死んでおけば、私にとっては、一番良かったのかもしれない。
ズィマー
我总是相信自己在做正确的事。
正しいことをしている、アタシはずっとそう信じていた。
イースチナ
如果没有这场火, 也会发生类似的事情让我们陷入恐慌, 我是这么想的。
もし火事がなかったとしても、似たようなことが起きて私たちはパニックになっていたと、私はそう思います。
そしてイベント紹介箇所は次のように締めくくられます。
我们牵手唱啊跳,踩在开始变软的泥土地上,即便是冻土,到时也会开出小小的花。
手をつないで歌って踊って、柔らかくなり始めた土の地面を踏んで、凍った土にもいつか小さな花が咲くだろう。
※翻訳ツイートへのみなさんのリプを参考にしました。ご協力ありがとうございます…!
次に、現在実装されているウルサス学生自治団の3人について現時点で分かることをまとめていきます。ズィマーについては既に記事を投稿しているため、今回はグムとイースチナについての考察です。
グムの名前とモチーフ、扉
ロシアで使われているキリル文字で、グムは「ГУМ」と表記します。
ロシアの首都モスクワには同じ綴りで、グム百貨店という有名なショッピングモールが存在します。
1893年に建造されたこの百貨店は宮殿のような外観をしており、ガラス張りの屋根を持つ3階建ての建物です。この百貨店には数多くのテナントが入っており、映画館やファッションブランドのテナントが立ち並び、そしてガストロノミックな(美食を提供する)カフェやレストランがあります。
グムというと、フライパン片手に戦場に乗り出し、戦闘中に料理をし始めるという一風変わったスキルが特徴的なオペレーターです。
彼女は食材を素早く下ごしらえ、ウルサス人の持ち前の勢いでキッチンを戦場に変える。
料理の腕はまだ他の種族や国のものに慣れ親しんだ人を満足させられなく、チーフデビューの経験や意欲もないが、彼女が出すフレッシュなウルサス料理は、既にロドスの人々にとって忘れられない風景となっている。
ある日の朝食の献立:ヤコヴレヴィチソーセージ(ガーリック風味)、ウルサス風煮豆、オーツ麦のふわふわパン、ヨーグルトなど。
良い匂いだ。(グム第一資料)
中国には「紅腸」と呼ばれる、ロシア風のソーセージがあります。このソーセージは中国最北端に位置する黒龍江省の省都ハルビン市の名物であり、チューリン百貨店(秋林集団)で製造されているものが有名であるそうです。
グムが朝食の献立として要したソーセージは、このチューリン百貨店の創業者イヴァン・ヤコブレヴィチ・チューリンに由来すると考えられます。
グムの立ち絵に目を向けてみると、彼女の上着には「H.malayanus」という文字が記されています。
恐らくこれは、マレーグマの学名「Helarctos malayanus」を表すものです。
マレーグマは体長100-150cm、体重25-65kgほどで、クマ科の最小種となっています。
ズィマーの身長が162cm、イースチナが156cmであるのに対して、グムは155cmと他のウルサス学生自治団メンバーと比較して低く、マレーグマが最小であるということを設定に反映しているのでしょうか。
そしてもう一つ、見逃せないのが彼女の持つ扉。
ズィマーお姉ちゃんは、グムのこと守るって言うんだけど、グムを甘く見すぎ!ここに逃げる途中、グムはこの盾で何度もみんなを守ってるんだよ!え、盾じゃなくて扉?そんなわけないでしょう!もう、ドクターまでそんなこと言って!(グム会話3)
グムはこの扉を”扉”と認識することができていないようです。
医学には「失認」という用語があり、「ある感覚を介して対象物を認知することの障害」と定義されています。
「見えている」にも関わらず、物を見てもそれが何かが分からない、しかし触れたり、それが発する音を聞くことで何かが分かる、という視覚失認の症候を示す患者が現実にも存在します。
グムも、視覚失認としての症候を有しているのでしょうか。
イースチナの名前とモチーフ、くまのぬいぐるみ
イースチナはキリル文字で「Истина」と表記し、「真実」を意味します。
ロシア語には同じく「真実」と訳される「Правда」という単語があります。
ロシア語Wikiによると「Правда」は他言語に翻訳することのできないロシア文化の概念の一つとなっているそうです。
アークナイツ考察の観点でいくと、「Правда」はソビエト連邦共産党の機関紙の名称でした。以前、ウルサスに関する考察記事で、イースチナの持っている本に
марксизм-ленинизм
マルクス・レーニン主義
と書かれていることを明らかにしました。これは、ボリシェヴィキの指導者ウラジーミル・レーニンが案出した指導理念です。
イースチナの印に注目してみると、次のような説明があります。
ウルサスの戦争史について語られた本。作者はいままさにリターニアに亡命しているらしい。
ボリシェビキ、亡命、読書好き…これらの要素を併せ持つ史実の人物はレフ・トロツキーです。
赤軍の創設者であり、ソ連共産党政治局員であった彼は学生時代、トルストイやプーシキンといったロシア文学に留まらず、シェイクスピアやディケンズなどイギリス文学作品の大方を読破しました。
イースチナも(イギリスをモチーフとする)ヴィクトリアから輸入された本を読んでおり、文学作品を得意分野としていることから、トロツキーとの共通点が見出せます。
トロツキーは学生時代からマルクス主義に触れ、共産主義運動に加わっています。「リヴォフ」という名前で革命の小冊子を印刷・配布し、ウクライナ(※)の学生たちの間で社会主義の考えを広げました。
※ちなみに、アークナイツのチェルノボーグは、ウクライナのチェルノブイリをモチーフとしていると推測されます。
また、彼は生涯にわたり、ロンドンやトルコ、フランス…とロシアから数多くの国へ亡命し、執筆活動を行っています。ウルサスの戦争史を書いたのはイースチナとは別の人物ですが、潜在能力強化の印として扱われているあたり、関連性の高さが伺えます。
続いて、イースチナのイラストに注目してみます。
「Tremarctos ornatus」はメガネグマの学名です。
メガネグマは目の周囲に白や黄白色の斑紋が入り、メガネのように見えることからその名がつけられました。
昇進すると外してしまいますが、イースチナも片眼鏡をかけています。
一見、大人びた印象を与えるイースチナですが、彼女の足元にはクマのぬいぐるみが描かれています。
これと同じぬいぐるみがPVでも登場しました。
彼女たちの過去は、新イベント「ウルサスの子供たち」にて明らかとなるため、今回の考察は一旦ここで止めておきます。
新イベント、とても楽しみにしています。
…とても。
参考リンク
※10月18日、「ウルサスの子供たち」シナリオの考察記事投稿しました。
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