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【アークナイツ】探検家マゼランとサーミ人シモーネの邂逅、夢と願い。戦地の逸話"北極星"考察

【注意】この考察は非公式であり、ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。2020年5月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。

そうだ、愛は、荒れ狂う嵐が襲っても、決して揺るがない確固不動の航路標識。それはまた、さ迷う小船を導く北極星、その高さを測ることはできても、価値は測りしれない。
ーシェイクスピア『ソケット集』

スペンサーやシェイクスピアといった詩人たちに、北極星は「不動」あるいは「指針」といった意味合いの比喩表現として用いられてきました。

北極星は、地球の自転軸を北極側に延長した天球面上の「天の北極」近くにある星のことを指します。地球から見てほとんど動かないように見える星、と言い表した方が分かりやすいかもしれません。

戦地の逸話"北極星"はグローバル版で、ポラリス(Polaris)というタイトルがつけられています。ポラリスは、こぐま座で最も明るい恒星です。ヨーロッパにおいて、1600年頃の大航海時代にポラリスは北極星として認識されるようになります。

はるか昔、広大な海原で人々は、夜空に輝く星の位置を手かがりに航海をしていました。常に北を指し示すポラリスを目印として、探検家は自分たちの向かう方向を見誤ることなく進んでいくことができます。

「北極星」というタイトルは、進むべき道を見誤らないという意味も込めているのでしょうか。この物語には、揺るぎない信念を持つ探検家マゼランが描かれています。

公式絵師NoriZC氏(@NoriZCI)によるTwitter投稿

”極地”インフィ氷原のモデル

北地、インフィ氷原、ライン生命420号臨時観測ステーション。
英語で「果てのない」「終わらない」という意味を持つ、Infinity(In:否定形 + fin:終わり)が由来でしょうか。ラテン語(infinitus)は無限の、という意味を持ちます。
物語は、そんな果てしない暴風雪に見舞われる凍ついた地で、実地調査187日目を迎えたマゼランを中心として展開します。

通常、彼女は初夏に任務を開始し、初冬の前には帰ってくる。
北方の未踏の地から持ち帰った資料をライン生命に集積するために。(マゼラン第二資料)

公式アカウントよりweiboに投稿されたマゼランの紹介文によると、彼女の専門は極地研究(中国語:極地科考)であり、北方の未踏の地で初夏から初冬にかけて半年近く一人で実地調査を行っています。極地という言葉は一般的に、北極や南極のことを指します。現実世界においても、極地での調査は基地に近づける時期が限られていることから、1年以上に渡って赴任する生活を送ることとなります。

マゼランが調査を行っている環境はまさに極限の地であり、コートのポケットの中でさえ、氷点下43℃という非常に低い気温を記録しています。

ポケットの温度は氷点下43℃、6時間経過しても弾力性を保持している……っと。

"北方"という表現から、この地のモデルは北極というイメージが先行しますが、北極の大部分は海であるため、平均気温は-20℃〜30℃に留まります。一方、南極大陸の平均気温は-50℃〜-60℃。最低気温は、1983年にボストーク基地(ロシアの基地)で-89.2℃が観測されました。従って、どちらかと言うと南極に近い環境下でマゼランは実地調査を行っています。

マゼランのモチーフ

「マゼラン」という名前からは、ポルトガルの航海者・探検家のフェルディナンド・マゼランという人物が思い浮かびます。彼はポルトガル人ですが、スペイン王の支援を受けて、1519年9月に西回り航路の探検に出かけました。約1年後の1520年10月にマゼラン海峡を発見。その海峡を抜けた海を「平和の海」という意味で「太平洋」と名付けました。
フィリピンに到達した際、現地民との戦闘により彼は命を落としますが、残された艦隊が1522年に史上初めての世界一周という偉業を成し遂げています。

多くの発見をした航海者マゼランに因んで名付けられたものは多く、マゼラン海峡、大マゼラン雲・小マゼラン雲、宇宙探査機マゼランなどの他、マゼランペンギンもその一つです。

アークナイツ「マゼラン」の種族は鳥をモチーフとするリーベリであり、かまくらのような形状ではあるものの、昇進2絵からもペンギンをモチーフとしていることが分かります。

先ほど、観測地のモデルが南極大陸であることに触れました。南極大陸に生息しているペンギンは、コウテイペンギンとアデリーペンギンのみであり、マゼランペンギンは温帯に生息するペンギンです。厳格な寒さへ必ずしも強くないことに由来しているかは分かりませんが、マゼランは分厚いコートに手袋・スケート靴と、寒さに対して完全防備の出で立ちです。

マゼラン

右腕に抱えている測量機器は「多機能セオドライト」。マゼランのプロファイルに詳細な説明があります。

汎用型多機能セオドライト
高温、厳寒、高圧、あらゆる環境で安定して動作します。
長い連続動作時間と高効率充電で、稼働時間を保証します。
誤差範囲は1mm未満、トップクラスの測量のニーズにお応えします。
レーザー照射口を改良し、測量・攻撃・照射と様々な使い分けが可能。
内臓された各種ソフトウェアを使いこなすことで、心身ともに積極的な効果が得られます。(第一資料)

セオドライトはトランシットとも呼ばれ、視準した方角に対する角度を計測することができ、実地調査の土地の特性を正確に把握するために使用されます。

上記動画のように望遠鏡を覗きながら調整を行い、視準する方角を合わせて使用します。戦闘モーションを見ると、マゼランはスナイパーがスコープを覗くように、速やかに目標へセオドライトの視準を合わせて攻撃を行っています。

左手に持つアタッシュケースにはドローンが格納されており、目標を凍結させるフリーズモジュール、術攻撃を行うレーザーモジュール、物理攻撃を行うアサルトモジュールという3種のスキルを有しています。公式PVでもマゼランはこれらのドローンを飛ばしていました。

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身につけているキーホルダーはペンギン急便の代表を務め、アーティストでもあるコーテーです。

彼女はペンギン急便の主宰「コーテー」とは大の仲良しのようで、一部の職員たちに嫉妬するされるほどだということだ。その理由は何なのか、実は誰も知る者はいない。(第二資料)

南極大陸という過酷な環境下で生きることのできるコウテイペンギンをモチーフとした「コーテー」が、直接マゼランの補給作業に従事することもあったのでしょうか。


ライン生命のキャラクターを描いた大陸版の公式イラストで、マゼランの持つアタッシュケースが登場しており、実装前からもマゼランの存在は示唆されていました。

アタッシュケース

戦地の逸話では、ライン生命から
・周辺のサンプル採取
・遺跡の手がかり探索
・新素材の低温性質テスト
といった任務がマゼランに与えられていました。

未踏の地において、わざわざ遺跡の探索を任務に加えているということは、アークナイツのテラには何らかのロストテクノロジーが存在していると推測を立てることができます。炎魔事件からも、ライン生命はただの学者集団ではなく、実益的な側面を重視しているような印象です。そのロストテクノロジーを活用しようと画策しているのでしょうか。
この遺跡に関連しているかは定かでありませんが、マゼランの発言によると、3年前にで大きな発見があったことが分かります。

残された任務である新素材の低温性質テストを実施しようとした矢先、観測ステーションを訪れたサーミ人、シモーネと邂逅を果たします。

サーミ人のシモーネ

シモーネと名乗る白銀の女性は、極地で吹き荒れるブリザードを物ともせずにマゼランの元へ訪れます。

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マゼラン:うわっ、温かい! どうして!? 外はあんなに寒いのに、こんなに温かいなんて……。……もしかして、君はサーミ人
あーっ、えーっと……なるほどね。
シモーネ:何をそこまでガッカリしているのかは分からないけど……確かに私はサーミ人よ。こんにちは、お嬢さん。

この会話から、アークナイツにおけるサーミ人は寒さに対する耐性を有していることが分かります。

現実世界でもサーミ人という名の種族が、スカンジナビア半島北部ラップランド及びロシア北部コラ半島に居住しています。
日本で熱狂的な人気を誇ったディズニー映画『アナと雪の女王』でもトナカイ飼いの青年クリストフが、サーミ人として登場しています。

日本ではあまり知られていませんが、サーミ人は、スウェーデン人よりも人種的に劣っているという考えに基づいた法律である分離政策を受け、熾烈な迫害を受けていました。

このあたりの事情は、サーミの血を引く監督アマンダ・シェーネルによって映画化されているため、この映画を見るとより理解できるかもしれません。

アークナイツのサーミ人もウルサス人によって差別・迫害を受けたのか、は定かでありませんが、少なからず熾烈な攻撃を受けていることがシモーネの回想から分かります。

???:愚かなサーミ人め、そんな抵抗に何の意味がある?
確かにとんでもない力だ、我々はこのブリザードを抜けられないだろう。
だがそれがどうした? ウルサスはそれでも貴様らを押しつぶし、その都市を飲み込み、土地を全て喰らい尽くすだろう!
魔女め……我々はお前を殺しはしない。我々は死ぬが、貴様は生かされる! 生きて、この世界が血に染まるのをその目に焼き付けろ!
これは我々死にゆく者たちからの餞別だ、受け取れ! お前のその目でな!
叫べ、泣け、そして生きよ!
我々は栄誉の死を遂げ、お前は醜く生きていくのだ! それも……いつまでもな!!魔女よ!

シモーネは鉱石病に冒されており、彼女の顔を見たマゼランからは「そんな風になっている結晶はすごく珍しい」という感想を受けています。シモーネの鉱石病は眼に巣食っていること、そして上述のウルサス人からの発言を鑑みるに、シモーネはウルサス人により左眼に源石を埋め込まれたと推測できます。

そんなシモーネは、たった一人氷雪の地で研究を続けるマゼランに問いかけます。

マゼランの夢

シモーネと会話を続けていると、シモーネは室温が低下していることに気付きます。

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観測ステーションの素材が老朽化し、ヒーターの供給機能が故障していることにマゼランは気付きます。幸い、あと2ヶ月は保つため、帰還時期に入ったマゼランがこの影響を受けることはありません。しかし彼女は、ブリザードが吹き荒れる天候の中、外に出て修復作業に従事することを決めます。

シモーネ:外のブリザードは、もう常人が耐えられるレベルではないわ。あんな環境下では、あなたの命が危ない。出ないほうが良いわ。

シモーネはそう警鐘を鳴らすも、探検家にとって観測ステーションは命綱だからと、マゼランは危険を冒して外に出る意思を曲げようとしません。シモーネは、観測ステーションができてから自身以外の客人を迎えたことがないのであれば、その作業に意味はあるのかと疑問を投げかけます。

マゼラン:きっと誰かがいつかここに来るから。それは明日かもしれないし、次の観測時期かもしれないし、ちょうど二ヶ月後かもしれない。

何の根拠もない考えだと訴えるシモーネに対して、探検家には探検家ごとの考えがあると口にします。

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マゼラン:この大地には、まだまだ未踏の地ってやつがたくさんある。でもそれは、「今のところ」未踏ってだけ。今日、私はこの氷原に足を踏み入れている。となれば未来には、もっと多くの人がここに来ることになるの。
そしたらその人たちが、どんな状況下でここに来るかなんてわからないでしょ。
(中略)
シモーネさん……あたしマゼランは、探検という事業を、探検家という人たちを信じてるから。きっといつの日か、あたしたちの足跡が、この世界の全てを覆い尽くすよ。

ウルサス人によって未来を潰されたシモーネは、マゼランがかつての自分と重なったのか、次のような言葉を口にします。

シモーネ:……そんな希望を、存在し得ないかもしれない未来に託して、失望させられるかもとは思わないの?

マゼランのプロファイルを見ると、彼女は必ずしも希望に満ちた道のみを歩んでいたわけではないことが分かります。

家族と友人から遠く離れ、過酷な環境の中に身を置いていた彼女は、手につかめるものは雪以外に何もないように見えた。
極めて研究価値の高い考察成果を多く持ち帰ったとしても、多くの人は彼女の選択を理解できないままだ。
それでも、マゼランの心の中では、追い求める目標はいつも明々白々としており、少しも変ったことはない──
子供の頃の歌が耳から離れない。
かつての幼かった彼女に、人々に忘れ去られた極北の過去を訴え続けている。
しかし、覆滅がそのフィナーレとなり、最後の歌詞のように全てが失われ、深い氷の奥に閉ざされた。
古い事実は伝説となり、それを書き記す者を腕を広げて迎えることもない。
夢のような歌は小さいマゼランの夢となった。
幼い頃、人々は彼女をほめた。
少女の頃、人々は彼女を訝しんだ。
大人になってからは、人々は彼女を批判した。

自身の選択が理解されずとも、マゼランが探検し続ける原動力は、全ての知識への熱意と夢への揺るぎない想いから来ている。(第四資料)

揺るぎない想いを持っているマゼランは迷うことなく、シモーネに自身の考えを伝えます。

マゼラン:大丈夫、探検家をやってるとね、一生発見の連続で、一生失望の連続だから。どの探検家の発見だって、自分一人の力だけで成し得たものじゃないよ。みんな先人の肩の上にまたがって少しずつ高みに登っている。どんな重大な発見も、遠く遠くの過去とつながっているんだ。
例えばあたしのこの氷原に来たのも、一番最初のきっかけは小さい頃に聞いた昔話なの。その昔話がウソか本当かだって関係ないんだ。どっちにしろあたしのやってきたことにはどれも意義がある。そう信じてる。
たとえその意義が、おぼろげなものであっても、誰かを失望させる存在しないものであってもね。

一生発見の連続で、一生失望の連続。この言葉はシモーネの胸を打ち、凍ついていた心を溶かします。シモーネはマゼランに自身の「サンタラ」というコードネーム、自身がロドスからの使者であることを明かし、自身が作業を行うことを伝えます。そして、彼女は自身の身を案じるマゼランの様子を見て、迎え入れることは間違いではなかったと確信を持ちました。

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シモーネはフロストノヴァのように、ブリザードを操作する術を行使するため、歌を口ずさみます。

「……聞け♪……」
「白き命は咲き乱れ〜漆黒の種はその土深くに沈みゆく〜……♪」
「嗚呼、歌え可憐なる少女よ〜嗚呼、泣け可憐なる少女よ〜♪」
「風雪がお前の歌を聞き届き〜その胸深くに抱くだろう〜♪」

それはまるで、少女をマゼラン、風雪をシモーネに喩えたような歌詞です。シモーネは、マゼランに夢を追い続けて欲しいと願います。


既に当たり前のように知れ渡った事実も、誰かが一生をかけて探り当ててくれた発見の連続です。


未知なる可能性を信じて、少女は自身の名前を決めます。


申請書を受け取り、彼女が選んだ、そして今も使い続けているコードネームは──「マゼラン」。(第四資料)


参考リンク


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