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【アークナイツ考察】戦地の逸話"無名氏の戦争"。彼の選択は?パトリオットとヘラグの再会

サムネイルはアークナイツ公式チャンネル「オムニバスストーリー 戦地の逸話 アニメPV」より
【注意】この考察は非公式であり、ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。2020年4月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。

3月25日から4月8日にかけて実施されたオムニバスストーリー"戦地の逸話"、ドクターの皆さんはシナリオを全て読み切ったでしょうか?

オムニバスとは、それぞれで独立したストーリーを並べ、全体で1つの作品とすることを意味しています。

位置付けとしてはサブイベント、のはずですが、そのシナリオは非常に重厚で、アークナイツの世界観を知る上では見逃せない情報が盛り沢山のイベントでした。

これまでは国家やキャラクターのモチーフを探ることで考察を進めてきましたが、今回は少し趣旨を変え、イベントに散りばめられた要素をつなぎ合わせることで世界観を掴むための鍵を見つけていきます。

本記事ではロドスの前衛オペレーターの葛藤を描いた、"無名氏の戦争"について振り返っていきます。

無名氏の戦争

意識を取り戻し、チェルノボーグ作戦の結果と「隊長」の安否を気にする彼は、1章シナリオに登場した前衛オペレーターです。

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「無名氏の戦争」はACEやScoutの奮闘によって奇跡的に命拾いした、この前衛オペレーター(以下、無名氏)がScoutからの手紙を読み、付近にいるヘラグとパトリオットの会話を聞き、思い悩む様子を描写しています。

闇診療所"アザゼル"の主、へラグ

ヘラグ

頭部の羽からも推測できる通り、ヘラグはサイレンスやフィリオプシスと同じ、鳥をモチーフとしたリーベリ族です。彼が管理していた闇診療所「アザゼル」は1章のシナリオにも登場しています。

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前衛オペレーター:(……いや、待て、この声はどこかで聞いたことが……確かあの診療所のー)

この台詞から、ロドスはアザゼルと接触し、既にヘラグとも会話をしていたことが分かります。アザゼルはレユニオンの動向についての情報提供こそ拒んだものの、ロドスとの幾ばくかの繋がりを持てたのでしょう。

へラグは星6重装オペレーターとして実装が予定されています。大陸版ではへラグが実装された後で今回のイベントが実施されましたが、日本・グローバル版では順番が変更となりました。

パトリオット:将軍、あなたは、これから、どこへ行くつもりだ?
ヘラグ:ロドスへ。

この台詞から、”戦地の逸話”の一幕はへラグがロドスへ加入する前であることが分かり、結果的に時系列通りの実装となっています。

・へラグの持つ刀
・ヘラグが対峙した指揮官の娘
・ヘラグが経験してきた戦争

これらはヘラグのプロファイルより、詳細な内容が明かされます。

ヘラグが営んでいた診療所はレユニオンではない何者かによって、異様なまでの破壊行為を受けています。

パトリオット:……徹底的に、誰がやったか調べよう。診療所の件、明らかに、常軌を逸している。
ヘラグ:その必要はない。というよりも、君がいたのなら、今回の件をレユニオンが起こした可能性はいっそう低くなった

ヘラグは事前に診療所の機能を移していましたが、もはやウルサスを離れざるを得ないまでに略奪の限りを尽くされています。そんな危険な状況下にありながら、旧友の姿を認識したヘラグは天災をも恐れず、避難することなくパトリオットとの会話を選択しました。

パトリオット:あなたは、結局のところ、死を恐れていない。もし、本当に恐れているなら、今頃すでに、ロドスにいる、はずだ。
(中略)
あなたは、レユニオンの、目的を、知りたいのだろう。

鉱石病に声帯を冒され、長く声を発することも辛いであろうパトリオットは説明を憚ることなく、かつての戦友に対して自身の想いを語ります。

元ウルサス軍人、パトリオット

パトリオット

パトリオット(Patriot)は英語で愛国者を意味します。
本名、ボジョカスティ。種族は悪魔をモチーフとしており、特徴的な角や尾を有するサルカズです。そして、元ウルサスの軍人でもありました。

ヘラグ:…君はウルサスで最も優れた現場指揮官の一人だった。
パトリオット:買いかぶり、過ぎだ。それに、私は、サルカズなのだ。結局のところな。

アークナイツの世界において、サルカズは差別を受けています。出身は異なりますが、同じくサルカズであるヴィグナのプロファイルには次のような記載があります。

ひとりのサルカズとして、ヴィグナは流浪の同族が地元民に差別されているのを目の当たりにし、同族を守るために他人と衝突し続けたのだ。
当然、サルカズに対して友好的な人がいないわけではなかったが、既に形成されている差別的な環境に向かい合えば、少数の好意が脆弱で無力なのは明らかだった。(ヴィグナ第一資料)

ヘラグがパトリオットのことを高く評価する反面、パトリオットの階級は大尉に留まっています。それはサルカズという出自、そして現皇帝はサルカズを迫害対象として扱っていることに起因していることがヘラグの台詞から分かります。

ヘラグ:今の皇帝は、相変わらず君たちをウルサスの戦士ではなく、怪物として扱っているようだな。それが理由で君と君たちの種族を迫害しているわけか。

しかし、パトリオットはサルカズであるが故に差別を受けることに関しては、前述の台詞からも分かる通り一種の諦観を示しており、自身が評価されないことも意に介す様子はありません。

彼が"愛国者"でありながら軍を離れ、祖国へ牙を剝くのは他に理由があります。

パトリオット:私が反旗を翻したのは、帝国という、国家に対して、だけだ。土地でも、人民でも、ましてやウルサスそのものでも、ない。もし医学大臣が、現状を作った、戦犯だというなら、それは敵だ。もし全てが、議会の企みなら、我々は、議会を解散させる。もし軍隊が、この対立を、生み出したというのなら、軍隊を消滅させる。
(中略)
かつての、ウルサスにとって、戦争とは、正義の執行、だった。そして、現在の感染者にとっても、同じように、戦争とは正義を行うことだ。私は正義の為に、戦う。正義は、永遠に、ウルサスと共にある。
パトリオット:感染者の権利を、私が、あなたと、あなたの子供、そして、全ての感染者のために、取り戻そう。

「正義」という言葉は非常に曖昧であり、暴走しやすくもあります。

その如何を問わず、パトリオットは数多の被害を出したチェルノボーグ事変を「正義」という言葉で装飾することで犠牲者たちを弔い、感染者たちの戦いへ意味づけを行っています。

彼の唱える「正義」を紐解く要素として、鎧に注目してみます。パトリオットはレユニオンとして武装蜂起しながらも、未だにウルサスのロゴが入った鎧を纏っています。

パトリオット_肩

パトリオット(愛国者)を名乗り、ウルサスのロゴの入った鎧を身につけ、”国家”に対してのみ反旗を翻す…これらの行動から、パトリオットは皇帝の代替わりにより歪んでしまった祖国の正常化を目論んでいるのではないかと考えられます。

加えて、サルカズとして差別を受けてきたであろうパトリオットが、感染者として差別を受けることに対して特別な感情を示しているのは、彼の娘が感染者であることも一因として挙げられるのではないでしょうか。パトリオットの娘については6章で明らかになるので、ここでは詳細を伏せます。

無名氏の選択

レユニオンのリーダー陣を注意深く見てみると、非感染者への復讐を目的とする者、感染者として安住の地を求める者、など彼らの考え方が一枚岩ではないことが分かります。パトリオットにおいては、無抵抗な市民に手を掛けたレユニオン兵をリストアップし、次のような処断を下しています。

パトリオット:伝令。主犯格は、処刑しろ。私の直属のメンバーで、実行せよ。メフィスト、クラウンスレイヤー、には警告を。

パトリオットの部隊は被害を受けた非感染者を助け出し、鉱石病に感染しないよう区分することで、感染症の拡大を防ごうと尽力しています。また、パトリオット自身は、ヘラグが自身の行先として選んだ、ロドスと敵対することを忌避していることが次の台詞から分かります。

パトリオット:タルラがロドスを、攻撃したこと。この誤解は、私では解けそうにない。もし、この誤解が、解けないとしても、貴方とは、敵対したくないものだ。

更に、ヘラグとパトリオットは互いに不戦の誓いを交わしています。

へラグ:【私は君の的にはならない。例え何があっても。】
パトリオット:ー。私の、無念の一つは…将軍、貴方の旗下に、なる機会が、なかったことだ。【将軍、私も何があっても、あなたの敵には、ならない。】

この一部始終を眺めていた無名氏は、再びScoutからの手紙に目を落とします。

Scout:そうだ…三年前だ。そして今日に至るまで、俺たちは沢山の兄弟姉妹を失ってきた。俺はこれまで「人と人は、生きてさえいれば、またどこかで再会できる」と考えてきた。それも俺がロドスに手を貸し続けている理由の一つでもある。だが俺たちは多くのものを失いすぎた。

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Scout:そう、勝利以外のものは見えなかったんだ。何も見えなかった。あの瞳の中には他に何も映ってなかったんだ。
ずっと考えていた。ケルシーさんが、俺たちに決して明かそうとしなかった真相は、ドクターと関係あるんじゃないかって。あの三年前の最後の時期だ。どうして写真のバツ印がどんどん増えていったのか、どうして犠牲が頻発するようになっていったのか、どうして戦う目的すらわからない戦いが増えたのか?
想像しなくない。想像することもできない。
もし戦火と殺戮がドクターを感化し、ドクターを一人の指導者、研究者から一台の単なる戦争マシーンに変えてしまっていたら……。
ドクターが戦争に加わることを望んだ者たち全員が、実は大きな過ちを犯していた、そう言う他ない。
ドクターはもう二度と戦闘の指揮をすべきじゃないんだ。ドクター本人にとっても、ロドスにとっても同じだ。

Scoutからの手紙は、3つの依頼と共に締め括られます。

1つ目はドクターへの伝言。「ドクターが俺たちと共に戦ってくれた日々を、俺は一秒たりとも忘れたことはない。」

2つ目はScoutのチームについて。スリンカー、ブータル、スコーピオン、レイファ、ムラム、カクテル、ソラナ、ミミ、マリー、サムタック、ユラン、ロングトーン。戦いの中で生命を落としたこの12名が、誰一人として死を恐ることも、萎縮することもなかったという生証人になること。誰かにメンバーのことを聞かれたときに「彼らは皆、自分の信じる理念のために犠牲になったんだ」と答えること。

Scoutの依頼は、戦争の中で犠牲者がただの頭数として当たり前のように消費される日常に耐えかね、一人の人間として、ドクターへ生き様を訴えているようにも見えます。

これらの依頼と、パトリオットの台詞とを照らし合わせてみると、図らずもパトリオットはScoutの想いをある程度汲んでいることが分かります。Scoutの最期はパトリオットからヘラグへ、鮮烈な描写と共に語り継がれます。

パトリオット:戦士が、サルカズの傭兵部隊に、一人で立ち向かっていた。意外なことに、あのロドスの戦士も、同じくサルカズだった。
(中略)
ロドスの戦士には、何かのために戦う意思が、あったようだ。あの戦い方は、報酬のためだけに戦う、傭兵とは違う。彼は敗れた。だが無数の精鋭を、道連れに、射殺した勇猛さは、傭兵部隊のリーダーさえ、怒り狂うほどだった。 
(中略)
灰塵の中に、残されていた、彼の遺品だ。ロドスに着いたら、渡してくれ

パトリオットはScoutのことを一人の勇敢な戦士として認めています。そして、パトリオットはヘラグとの会話でこうも断言しています。

へラグ:では、"パトリオット"よ、ウルサスとの戦争に正義はあるのか?
パトリオット:無論だ。我々の戦争は、正義だ。そうでなければ、数多の犠牲が、意味を失う。将軍。本当の答えは、我々は、皆知っている
へラグ:ーー
パトリオット:だが、ただ死なせるわけには、いかない。彼らの死には、意義がなくては、ならない。

戦士たちは皆、各々の信念のために戦っており、パトリオットは命を落としていった者には意義が必要であると考えています。言い換えると、「自分の信じる理念のために犠牲になった」わけです。

そして3つ目の依頼について。

Scout:名も知れぬロドスの兄弟よ、君は自分の為に生き延びるんだ。俺の言葉は、死にゆく者に贈ったつもりはないからな。そして生きたまま自分の理想を実現して欲しい。くれぐれも命を粗末にするなよ。それだけだ、兄弟。死ぬんじゃないぞ。

無名氏の胸中を想像してみます。

無名氏はACEと共に死ぬつもりでレユニオンに戦いを挑んでいました。しかし、ACEは片腕を犠牲に無名氏を救い、Scoutは己の命と引き換えに最期まで奮闘。

結果として、無名氏は戦死することなく、これまで信じていたドクターの変質を訴えるScoutの手紙を目にします。

前衛オペレーター:どうして……。

彼の困惑はこの一言に濃縮されています。

命を賭すほど信じていたものが失われた虚無感を味わう彼に、パトリオットは次のような言葉を投げかけます。

パトリオット:君にはまだ、ここを離れる、機会が、残されている。夜を待て。光を避けて、南へ向かえ。機会は一度だけ、今晩だ。
ーあるいはー
チェルノボーグには、多くの者が、助けを必要と、している。それをその眼で、見てみるのもいい。
選択は、君の自由だ。

この選択について、アークナイツ公式Twitterではアンケートが実施されました。

結果は、「チェルノボーグを離れる」が多数となっています。

この答えは、各々の想像に委ねられていますが、ここでは筆者なりの答えを示してみます。

アークナイツ公式チャンネルのティザーPV3、3:01-3:02の演出に注目してみます。

無名氏と同じ見た目のオペレーターと重なるように、レユニオンの兵士が描写されていることが分かります。

無名の選択

どちらも似た形状の剣を手にしています。
そして2-6章では、無名氏がロドスへ戻った描写はありません。

以上より、無名の前衛オペレーターはパトリオットの部隊に所属することを選択したのでしょう。


・・・



一度は失ったと思った命。

命を堵して救ってくれた者からの手紙。

信じて共に戦ってきたはずのドクターの変貌。

眼前に広がるチェルノボーグの惨状。

感染者・非感染者問わず、犠牲者たちを一人でも多く救い出そうとする、パトリオットの部隊。




これらを前にして、あなたは、どのような選択をしますか?




参考リンク


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