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【アークナイツ考察】シラクーザマフィア、鼠王、安魂夜。イベント『喧騒の掟』の元ネタ

サムネイルは「喧噪の掟 アニメPV」より。
【注意】この考察は非公式であり、ネタバレや個人の見解、推測を含んでいます。2020年6月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。


以前投稿した「青く燃ゆる心」のアーティストのモデルについての記事では、エンペラーの元となった2Pacがギャング抗争に身を投じたことに触れました。

今回のイベントで登場するシラクーザのマフィアたち鼠王も、エンペラー同様に、犯罪組織と関係する人物をモデルとしています。

今回はそんな彼らと、舞台となった場所、安魂夜に関する元ネタをまとめてみました。


DOWNTOWN - 繁華街

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ダウンタウン(Downtown)は主に北米英語で使用される単語で、商業や文化、歴史、政治、地理的な中心部を表す用語です。オックスフォード英語辞典において、「down town」「downtown」といった言葉の最初の引用は1770年で、ボストンの中心部を指しています。現在のように「繁華街」を意味するようになったのは、1830年代のニューヨークで、マンハッタン島の南端にある街ーロウアー・マンハッタン(Lower Manhattan)を示す言葉として使用されていたことに起因とする説もあります。

アークナイツにおいて「ダウンタウン」は龍門に居住する人々が集い、安魂夜を祝う舞台として機能していました。後述しますが、喧騒の掟に登場するキャラクターたちも、イタリアからニューヨークに渡った人物たちをモデルとしています。


サンセット通り

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サンセット大通り(Sunset Boulevard)は、カリフォルニア州ロサンゼルスの中央部・西部にある大通りです。

サンセット通りはロサンゼルスの中でも有数の観光スポットで、70-80年代にはロックの街、最近では高級レストランや豪華なホテルのタワーが建ち並び、ハリウッド映画に出演するセレブたちの住む一等地となっています。

ペンギン急便のボスでもあり、圧倒的な知名度と人気を誇るミュージシャンとしても有名なエンペラーが拠点とする場所のモチーフとして、このサンセット通りを選んだのでしょうか。

また、1950年にはアメリカで『サンセット大通り』というドラマ映画が公開されています。サンセット大通りのとある大物の住む邸宅で一人の男性が背中と腹に銃弾を撃ち込まれて殺害される事件を描いた映画です。


ミズ・シチリア

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イタリアのマフィアには多くの派閥がありますが、その中でも最古であり最大の犯罪組織がカモッラ(Camorra)です。シチリアではなく、首都ナポリを起源とする秘密結社ですが、1993-2001年まで王女(The Princess)という異名を持つ女性、マリア・リッチャルディ(Maria Licciardi)がボスを勤めていました。

「ミズ・シチリア」や「あの女」と呼ばれる人物はテキストでのみ登場であるため、女性であるということ以外は謎に包まれていますが、マリアは女性でありながら崩れかけた一族をまとめ直し、イタリアの裏社会に君臨した人物として有名であるため、「ミズ・シチリア」のモデル候補として挙げられます。


カポネ

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カポネの名前はアメリカのギャング、アル・カポネ(Al Capone)に由来すると考えられます。区別のため、以下アルと表記します。

1920年から1933年にかけて、アメリカではアルコールの製造、販売、輸送を全面的に禁止する法律がありました。アメリカ合衆国下院司法委員長アンドリュー・ボルステッドの名前にちなみ、ボルステッド法(Volstead Act、正式名称:国家禁酒法 National Prohibition Act)と名付けられた法律は米国社会に大きな影響を与えています。

それまでは合法であったはずのアルコール飲料の流通が制限されることとなるも、飲酒を嗜んでいた人々の欲求までは制限することができず、非合法組織によってその市場は支配されることとなります。

アルはそんな禁酒法時代のシカゴで、密造酒製造・販売、売春業、賭博業の犯罪組織を運営していた、「スカーフェイス」という通り名を持つギャングです。FBIの公式Webサイトにも犯罪事例として彼の名があります。1929年のギャング抗争において、機関銃を用いて居合わせた人物を蜂の巣にしており、この事件は「聖バレンタインデーの虐殺」として全米中のマスコミの注目を集めました。

アルは若い頃、堅気として建設会社の簿記係としてボルチモア(アメリカメリーランド州の最大都市)で働いていました。父親が亡くなった1920年頃から、不良少年時代に付き合いのあったイタリアン・マフィアの幹部であるジョニー・トーリオとの交流が盛んになり、本格的にニューヨークの裏社会へ活動の場を広げることなります。他のギャングから命を狙われ、かつ殺人事件への関与で起訴されそうになっていたアルは、トーリオの計らいでニューヨクからシカゴへ拠点を移しています。

ニューヨークでは後述するシチリア人のラッキー・ルチアーノとも交流があり、彼のことを尊敬していたとされています。(参考リンク

アルは禁酒法時代のアメリカという特殊な事情も相まって、賭博場や売春宿、酒場を運営する実業家としての才能も発揮します。果ては、市議会議員や警察、裁判の陪審員を買収するなど、社会的にも多大な影響力を誇りました。

アークナイツのカポネはシラクーザから龍門へ逃れたと語られていますが、史実でのアルはニューヨークでイタリア系アメリカ人として生まれており、シチリア出身ではないという理由でマフィア本流※には加わることができませんでした。
※マフィアはイタリアを起源とするのに対して、ギャングはそれ以外の地域で発生している組織犯罪集団を意味します。


ガンビーノ

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ニューヨーク・マフィア五大ファミリーの一つに、「ガンビーノ一家」と呼ばれるイタリア系マフィアが存在します。カルロ・ガンビーノ(Carlo Gambino)はそのファミリーのボスとして、1970-70年代のマフィア社会に絶大な影響力を発揮した人物です。以下、カルロと表記します。

カルロはシチリア島マフィア家系の生まれで、父親のトーマスも同じくマフィアです。1921年に一家で渡米し、ニューヨークのブルックリンで新たな生活を始めました。

アメリカは前述の禁酒法時代の最中にあり、カルロもアル・カポネ同様に酒の密輸に手を染めています。1930年代後半、酒の密売で稼いだ資金を元手にシチリアの金融機関の知人と共に巨額の投機を行い、レストランの買収や、同性愛者が差別されている社会的風潮に目をつけゲイ・バーの運営など、着々と資金を膨らませていきます。

アークナイツのガンビーノは活動領域を広げるために強硬手段を講じていますが、史実のカルロ・ガンビーノはむしろ性格的におとなしいという理由から、1951年にファミリーのボスだったアナスタシアから副ボスの地位を与えられています。(もっとも、その後アナスタシアを暗殺していますが。)

先述のアル・カポネは逆に派手なギャング抗争を繰り返しており、アークナイツにおいては逆の人物像が描かれています。


鼠王

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龍門スラム街の支配者である鼠王。彼のモチーフは少し曖昧です。


2016年に公開されたディズニー映画『ズートピア』には、ミスター・ビッグ(Mr. Big)というトガリネズミのマフィアのボス風の格好をしたキャラクターが登場します。ミスター・ビッグは犯罪小説、それを元にして制作された映画『ゴッドファザー』のヴィト・コルレオーネを元にしたキャラクターです。

ヴィトー・コルレオーネはマンハッタンのロウアー・イースト・サイド・キッチンに移住してきたシチリア人として描かれ、ニューヨーク最強のマフィア、コルレオーネ・ファミリーのリーダーとして描かれます。

そのヴィトー・コルレオーレのモデルとなった人物の一人が、ラッキー・ルチアーノ(Charles Lucky Luciano、本名:サルヴァトーレ・ルカーニア Salvatore Lucania)です。

ルチアーノはシチリア島の貧しい家庭に生まれ、10歳を過ぎた頃に家族とアメリカへ移住しています。しかしアメリカでもまともな仕事にありつくことができず、ニューヨークのマンハッタン、ロウアー・イースト・サイド(Lower East Side, LES)のスラム街で少年時代を過ごし、犯罪の世界へと足を踏み入れました。

麻薬ビジネスや売春業でのしあがり、高級ホテルのスイートルームにチャールズ・ローズという偽名で居住する彼は、政治家や裁判官、警察関係者に賄賂を送り、その地位を確固たるものとしていきます。

ルチアーノは組織力に優れ、ニューヨークの縄張りを五代ファミリーと呼ばれる犯罪組織で統括、各地のイタリア系犯罪組織を統合すべく暗躍しています。


組織力に優れるという点以外では、ルチアーノは鼠王との類似点はあまり見られません。続いて「リン」という名前に注目してみます。

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日本や英語圏にはほとんど名前が出てきませんが、中国には林绅(リン シェン)と呼ばれるギャングがいます。

林は中国の秘密結社"洪門"のトップであったとされています。"洪門"という名前は、天地会と呼ばれる明朝末期から清朝初期に興った秘密結社を指すこともあれば、三合会(トライアド)など中国有数の犯罪組織の総称として呼ばれることもあります。

調べてみると、彼はアメリカのホノルルで亡くなり、彼の葬儀に9万人にギャングが参列しアメリカの機動隊が出動した、とする中国の記事がありました。しかし、アメリカのニュースを調べる限りではそのような情報は公に出てこなかったため、真偽の程は不明です。


モチーフの推測からはやや外れますが、鼠王の言葉には次のようなものがありました。

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人にして儀無くんば、死せずして何をか為さんや。

これは中国最古の詩篇である、『詩経』に収録される"相鼠"の一説です。

  相鼠有皮  鼠を相るに皮有り
  人而無儀  人にして儀無し
  人而無儀  人にして儀無くんば
  不死何為  死せずして何をか為さんや

鼠をみると、どんな鼠にも皮がついている。しかし、人間であるにも関わらず礼儀に欠けたものいる。人でありながら礼儀がないのであれば、死なずして何をしようというのか。

非常に強い、批判表現です。


安魂夜

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イベントでは繰り返し重要なアイテムとして「キャンディ」が登場していたため、安魂夜はハロウィンの印象を受けますが、ハロウィンには死者を弔うような意味合いはありません。

ラテンアメリカ諸国では10月31日、11月1-2日を「死者の日(スペイン語: Día de Muertos)」として、故人へ思いを馳せ、語り合う習慣があります。特にメキシコでは盛大な祝祭が行われ、市街地はマリーゴールドの香りに包まれ、公園には露店が立ち並びます。


死者の日には、霊界と現実世界の境界線が曖昧になり、この短い期間の間、死者の魂は目を覚まし、生きている世界に戻ってくるという言い伝えがあります。日本でいう盂蘭盆会(お盆)に近い風習です。

この祝日には、愛する人たちと一緒に食事をしたり、飲んだり、踊ったり、音楽を演奏して過ごします。故人を大切なゲストとして祝い、生前に好きだった食べ物をお供え物として、墓場や自宅のベランダに置く風習があります。





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イベント終盤のシナリオではモスティマも、恐らくは亡くなった戦友に対して思いを馳せています。




参考リンク



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