ウルサス学生自治団

【アークナイツ】チェルノボーグ事変の生存者、ウルサス学生自治団の考察

【注意】この考察は非公式であり、個人の見解や推測、一部ネタバレ要素を含みます。2020年3月時点の情報を元に執筆しているため、今後の実装次第で公式設定とはかけ離れた考察となる可能性がある点を予めご了承ください。
シキネと申します。この記事の情報ソースは参考リンクとして最後にまとめています。

チェルノボーグからどうやって逃げてきたのか、ですか?ふむ……やめましょう、その答えを知れば……ドクターも聞かなければよかったと思うはずです。(イースチナ会話3)

アークナイツの0-1章はウルサス帝国の都市、チェルノボーグがレユニオンによって陥落する様相が描かれました。数多の犠牲者を出したその悲劇は、チェルノボーグ事変と呼ばれ、物語の起点となっています。

チェルノボーグ事変を生き残ったウルサスの学生たちは、ズィマーを中心に「ウルサス学生自治団」を立ち上げています。グムの発言から、メンバーは5人いることが分かります。

グムたち五人はね、最初から一緒にいたわけじゃないんだよ。(グム信頼度上昇後会話1)

アークナイツは度々交通広告を出していますが、浜松町駅にてちょうどこの5人ではないかと思われる広告を見かけました。

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ー2020年1月26日JR浜松町駅(筆者撮影)ー

この広告のイラストは公式絵師Skade氏によって描かれたもので、現在登場しているズィマー、イースチナ、グムの背後にいる未実装キャラ2名も同じウルサス学生自治団と推測できます。

20/6/27追記

その後、リリース1周年を迎えた明日方舟は、6月18日から15日にかけて、「ウルサスの子供たち(乌萨斯的孩子们)」というタイトルのサブストーリーが解放されました。

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キャラクターデザインには変更が加えられていますが、グムの右奥に描かれているのがロサ(早露)です。

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もう一人のメンバーについては、夏イベント「青く燃ゆる心」でギターの所有者として名前が出ていました。

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黒髪セーラー服姿のキャラクターが「リェータ(烈夏)」です。

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冒頭のイースチナのセリフ通り、彼女たちはどのように逃げ延びたのかについて多くを語りませんでしたが、この事情は「ウルサスの子供たち」イベントにて明らかになります。

日本版での実装が行われるのを待ちつつ、本記事ではウルサスやチェルノボーグのモデルとなった国をひも解いていくことで、現時点での日本版の情報を整理していきます。

チェルノボーグ事変について

ーアークナイツ公式 ティザーPVー

0:48-2:09でチェルノボーグ事変が描写されています。

0章では、政府が感染者に対する恐怖を煽る報道を意図的に行ってきたことで、ウルサスは他地域よりも感染者に対する差別意識が強く、感染者たちは追放や強制労働に処されていたことが語られます。苦汁を飲まされ続けた感染者たちはレユニオンとして武装蜂起。天災と時期を合わせて襲撃することで、ウルサスの都市、チェルノボーグを陥落させます。

レユニオン

チェルノボグ(ウクライナ語: Чорнобог,英語:Chornobog)はスラブ神話において「黒い神」を意味します。チェルノボグは夜や闇、破壊と死、冥府の神・悪神として語られ、それらの意味合いはアークナイツにおけるチェルノボーグの現状を言い表す結果となっています。

そしてチェルノボーグという語感から連想するのはウクライナの都市チェルノブイリです。チェルノブイリというと、恐らくほとんどの人が思い浮かぶと思いますが、1986年4月26日に原子力発電所の事故が発生しました。歴史上最悪の原発事故であり、後に定められた国際原子力事象評価尺度(INES)では、被害ランクにおいて最上位の"深刻な事故"(Major Accident)を示すレベル7に分類されます。現在、レベル7に分類されているのはチェルノブイリ原子力発電所事故の他、2011年に日本で発生した福島第一原子力発電所事故のみです。
ソビエト連邦政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書によれば、事故の原因は運転員による「きわめて信じ難いような規則違反の数々の組み合わせ」であり、この事故は"人災"と表現することができます。

チェルノブイリ博物館

ーウクライナ国立チェルノブイリ博物館(友人撮影)ー

アークナイツのチェルノボーグ事変も天災に見舞われつつ、実際には移動都市としての機能をレユニオンに奪われた"人災"と呼ぶことができ、チェルノブイリとの関連性が見出せます。
余談ですが、チェルノブイリ原発事故は当時のソビエト連邦政府に大きな影響を与えています。正確な情報がなかなか届かなかったことに業を煮やしたゴルバチョフは、世界史の教科書でおなじみの「グラスノスチ」(情報公開。言論・報道・思想などの自由化・民主化)を進めることとなります。ウルサス帝国は軍事国家となっていますが、チェルノボーグ事変による動きは未だ見られず、不気味なほどに沈黙を保っている状況です。

次は、そんなウルサスのモデルとなった国について考察を進めていきます。

ウルサスのモデルについて

ウルサス(Ursus)はラテン語でクマを意味し、英語ではクマ属を指します。現在ウルサス出身のオペレーターはビーハンターも含め、全てクマをモチーフにしています。(エフイーターは炎国出身であり、モチーフはクマ科のパンダです)

アークナイツではいくつかの国が存在し、ヴィクトリアは王国(英語Kingdom)、イェラグは宗教国家(Religious)とされているのに対して、ウルサスは帝国(Empire)として描写されています。ロシア×帝国という組み合わせで想起するのが、かの有名なイヴァン4世(雷帝)により基礎が築かれたロシア帝国(ロシア・ツァーリ国※)です。
※1721年にツァーリ・ピュートル1世が皇帝(imperator。emperorの語源)を宣言してから二月革命のあった1917年までを「ロシア帝国」とし、その前の時代を「ロシア・ツァーリ国」とすることがあります。歴史本によっては、ロシア・ツァーリ国を「ロシア帝国」と翻訳していることもあります。紛らわしいため、以後は「ロシア・ツァーリ国」と表記します。

ウルサスのロゴは、双頭の鷲と五芒星とを組み合わせたデザインとなっています。

300px-ウルサス学生自治団

まず、双頭の鷲について。紋章学・旗章学(国や民族の象徴である旗や紋章といったシンボルを体系的に整理、研究する学問)において、双頭の鷲は帝国の概念を表します。このシンボルはもともと東ローマ帝国に由来(※)し、その後モスクワ大公国が使用。そして、ロシア・ツァーリ国の紋章として使用されるようになりました。
※更に遡ると、紀元前のシュメールにおいて都市神ニンギルスとして描かれています。

現在でも、双頭の鷲はロシアの国章として使用されており、ロシア主要都市のあちこちで見つけることができます。

国章

ーモスクワ、赤の広場付近(友人撮影)ー

続いて、五芒星について。双頭の鷲と同じく、五芒星もロシアの歴史の中で実際に使用されているシンボルです。五芒星についてはソビエト連邦を象徴しています。モスクワのクレムリン(ロシアの皇帝宮殿、後にソビエト連邦共産党中央委員会の会合場所)では、多くの建物に五芒星が掛けられました。ロシアにおいて五芒星は1935年に初めてクレムリンで使用されています。それまではツァーリ皇帝時代の双頭の鷲がその位置に置かれていましたが、ソビエト連邦は建物の上部にある双頭の鷲を五芒星や、マルクス・レーニン主義の共産主義、共産党のシンボル「鎌と槌」に置き換えました。以後、五芒星及び「鎌と槌」はソビエトの赤体制の象徴としてモスクワ市内の中心に建てられ、今日まで維持されています。

ロゴやシンボルというのは、主義や主張、所属を訴えるのに非常に雄弁な手段です。時代は異なれど、ウルサスのロゴからはロシアをモデルにしていることが分かりました。

ウルサス学生自治団と共産主義

チェルノボーグ事変を生き残ったウルサスの学生たちは、現在はズィマーを中心に「ウルサス学生自治団」を立ち上げたことが明らかになった。
一部のオペレーターの報告によると、学生たちはよくイースチナの部屋に集まっており、この集まりを「класс」(共通語でいうと「クラス」)と称している。(ズィマー第三資料)

この「クラス」については、英語では次のように表記されています。

They call it "The Classroom."

ここのClassには恐らく2つの意味を掛けていると考えられます。
1つは、日本でもよく使われる学級という意味でのClass(Classroomで教室)。もう1つは「Class struggle」。日本語では「階級闘争」と訳すことができ、マルクス主義において政治及び経済的な権力を持つ資本家階級と労働者階級との争いを意味する言葉となっています。

そしてイースチナが持っている本の表紙は次のように書かれています。

イースチナ

марксизм-ленинизм
マルクス・レーニン主義

マルクス・レーニン主義とは、1920年代中盤からソ連の政治イデオロギーとなった概念です。スターリンにより「帝国主義とプロレタリア革命の時代における階級闘争の新たな条件の下、レーニンに創出されたマルクス主義の教義」と定義されています。

手がかり4

基地の応接室では7つの手がかりを集め、情報共有を行うことでフレンドポイントを獲得することができます。このうち、手がかり4はウルサス学生自治団のものであり、その手がかりには地図が描かれています。これはモスクワ市の中央区、クレムリンより南東に位置する場所をモチーフにしていることが分かります。

手がかり4_Map

Федеральная служба кадастра и картографии
連邦地籍・地図作成局 


グローバル版の内容となりますが、2019年10月10日に公開された"手がかり4"の画像にちょっとした謎解き要素がありました。

赤帯部分を拡大すると、うっすらとアルファベットが隠されていることが分かります。

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LOOK BACK IN THE PAST
過去を振り返る

そのツイートよりも前(10月2日)に公開されていたグローバル版のウルサスPVを1:08で停止すると、UNICODEの文字列を見つけることができます。(残念ながら日本版ウルサスPVには何もありませんでした)

\u0031\u0031\u0030\u0035

スクリーンショット 2020-03-14 23.02.38

https://tech-unlimited.com/escape-unicode.html(Unicodeエスケープシーケンス変換ツール)

そして11月5日、グローバル版にてチェルノボーグ事変の公式PVが公開されました。

To rebuild our home, and to rebuild our future, your strategy is a must.
わたしたちの故郷、そして未来を取り戻すために、あなたの戦略が必要です。(Arknights Official Trailer 3 動画説明欄)

チェルノボーグにおけるレユニオンの武装蜂起がグローバル版のてがかり4で暗示されていました。
※4/12 追記
この武装蜂起の後、元ウルサス軍人の2人が破壊されたチェルノボーグの街で各々の想いを吐露しています。戦地の逸話"無名氏の戦争"エピソードの考察として、まとめてみました。

心の傷、仲間と共にいること

ロドスはチェルノボーグ事変から逃げ延びたウルサス学生自治団のメンバーを調査しますが、その心の傷は深く、真相を彼女たちから聞き出すには十分なカウンセリングの時間を要することがプロファイルで示されています。

医療チームから派遣された心理カウンセラーにより確認されたのは、グムは仕事や他人への接触によって怖い記憶を消そうとしていることだ。
しかし数回のカウンセリングの間、彼女はチェルノボーグ事変で学生自治団の学生たちの経験について、ずっと口を閉ざしたままだった。(グム第二資料)
チェルノボーグ事変の時の行方に関する説明を、彼女は謙虚かつ手短に断ったが、その過程で何度も激しい感情の起伏が見られた
ロドスの現在の方針や守秘義務に基づき、ウルサス学生自治団への調査はいったん中止となった。(イースチナ第四資料)

ウルサス学生自治団について語られていることは多くありませんが、少なからずこの組織の背後に疑わしい繋がりは何もないことがイースチナのプロファイルに記されています。そして、彼女たちは故郷へ戻る以上に仲間たちと共にいることを選択しています。

グムね……本当は何度もお父さんやお母さんを探しに行こうと思ったんだ……。でもね、もし今みんなから離れたら、グム、なんにもできなくなる気がするんだ……。(グム信頼度上昇後会話3)
家?故郷の家ですか……もう帰れないし、何も残ってない、ご存知でしょう。たとえ、チェルノボーグが再建されたとしても、私は……。(イースチナ信頼上昇後会話1)
は?チェルノボーグ?あんな絶望しかねえ町に誰が戻るんだ?ロドスこそアタシらのスタート地点。(ズィマー信頼上昇後会話3)

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※20/6/28追記 ズィマーの考察記事を投稿しました。


参考リンク


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