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人は地球の有限性という問題に直面した

□景色
ひとつの森に、それが最適の環境である動物種を入れると、初めは少しずつ繁殖し、いつしか爆発的な増殖を迎え、森の環境容量限界に近づくと増殖を減速させやがて停止し、安定して暮らしつづける(下図実線)。ただし、中には再生不可能レベルまで環境資源を過剰消費し、滅亡にいたる愚かな生物種もいる(下図破線)。

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人も、地球という森に入り、初めは少しずつ繁殖し、いつしか爆発的な増殖を迎えたが、今や環境容量限界に近づき増殖を減速させている。私たちはこれから、安定した暮らしと滅亡のどちらを選ぶのだろうか。

□本

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『現代社会はどこに向かうか —高原の見晴らしを切り開くこと』
見田宗介 岩波新書 2018年

目次
序章 現代社会はどこに向かうか
一章 脱高度成長期の精神変容
二章 ヨーロッパとアメリカの青年の変化
三章 ダニエルの問いの円環
四章 生きるリアリティの解体と再生
五章 ロジスティック曲線について
六章 高原の見晴らしを切り開くこと
補章 世界を変える二つの方法

要約
総論:上図のロジスティック曲線に従い、地球上に十分に繁殖した人も同じ曲線を描くことが予想される。現在は④である。

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この④期において、これまで人にとって「無限」であった世界、地球をこれからは「有限」である世界として受け入れ、その新しい局面に生きる思想とシステムを構築し、巨大な曲がり角である④期をのりこえねばならない。その先に人々の永続する幸福な安定平衡期がきっと待っている。

各論:③期においては生存と繁殖のため物質的な基本条件を確保するために、未来主義、生産主義、手段主義といった「合理性」への圧力を高め発展と繁栄をしてきた。(例:受験生は受験合格のため、現在の生きる時間を未来の目的のための手段と考え、生活のすみずみまで合理化し、自分で自分の自由を抑圧する。)

④期に入った高度産業社会(日米欧等)は物質的な基本的条件確保を達成し、未来に達成したかった目的が消失し、「合理性」への圧力が一挙に減圧してきている。さまざまな価値観とイデオロギーとシステムと人間観とモラルと感覚が、一つまた一つ解体していき、生のリアリティを失い始めている反面、幸福だと感じている青年が明らかに増大してきている。青年たちは身近な人たちとの交歓、自然と身体との交感、あそぶこと以上に楽しい好きな仕事あるいは勉強に幸福を感じている。

□ひとりごと
後日、音声公開予定

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