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学ぶ楽しさをさがす塾とは何だったのか(昔話)

『風の谷のナウシカ』の、多種多様な植物を育てている地下室。地上では猛毒の植物も、地下から汲み上げたきれいな水と土から育てると、毒を一切出さずきれいな花を咲かせるというシーンをご存じでしょうか。

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僕はこれを教育で経験しました。
市内中の小中学校に名の知られたワルの少年と、親が破産宣告した不登校のリスカする少女と、原因不明の拒食症になった少女と、両親が離婚したショックで6年間も口を聞かず精神年齢が10歳弱で成長の止まっていた不良少年と、ずっといじめられ続け他人との関わりを極度に恐れる少女とを、(年度はバラバラで)全員受験が終わるまでお預かりしていました。

どの子もよく笑い、同級生や先生と対話し、集中し勉強していました。お預かりした限りでの話ですが、根っからの悪い子は1人もいませんでした。みんな素直で正直な良い子たち。もし彼らが誰かを傷つけたなら、それは環境が悪かったからではないかと僕は訝しむでしょう。環境が良ければ毒はそもそも存在せず、生じないのを僕は経験しました。

僕自身、両親が離婚して体罰のある家庭に育っています。就学時はイライラしていて、よく貧乏ゆすりをし、忘れ物が多く、しゃべりすぎる子で、ずっと長い間、居場所のほしかった子でした。そんな自分を救おうとして、みんなの居場所となるFOLSを作ったのだと今は思います。そしてそれは成功しました。

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか
新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである
われらは世界のまことの幸福を索ねよう 求道すでに道である
「農民芸術概論綱要」 宮沢賢治

課題はもちろんあります。主に2点。
1点目、収益が良くなかったです。赤字に陥ることはありませんでしたが、僕の人件費は平均年収よりも低いところで変動していました。ビジネス的に成り立たないモデルです。塾の先生は「そろばんとチョークを持て」と古くから言われますが、僕はそろばんを持っていませんでした。
2点目、個人指導。当時にその課題感はありませんでしたが、今思えばほしい機能です。自ら計画をたて、実行し、ふり返る。それをくり返しながら、自分を作り、作りかえ、やがては周りをも作りかえていく力の育成をできたらどんなにいいかと思います。

教育の質と収益(主に人件費がらみ)はトレードオフな面もあります。資本主義は教育の後からやって来た制度で、民間教育はこのジレンマを常に内包しています。僕はその中で次の一手を考えていきたいです。このすばらしい経験をふまえて。

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