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【観劇】さよならを言う練習『デイドリームビリーバー』(※ネタバレあり)

観劇録です。ネタバレを含みます。執筆時点で上演期間中ですので、鑑賞前の方はお気をつけて!
池袋・木星劇場にて、さよならを言う練習『デイドリームビリーバー』を見てきました。

さよならを言う練習さん(さん付けでいいのかな?)は、前作のオンライン演劇に続く、二回目の鑑賞。
前作は男女の交換日記をめぐるやりとりを描いたもので、言葉や雰囲気が優しく、画面の前でほんわかと満たされた気分になったのを覚えています。
今回はオフラインでの観劇。「劇場だとどんな感じなんだろう?」と楽しみに足を運んだのでした。

舞台は、もうすぐ閉店になるコンビニ。そこに強盗が押し入るも、さまざまな勘違いからお店の片づけを手伝うことになり、なぜか自主制作の映画撮影に参加することになり……というお話。

本作の魅力は、大きく分けて3つあったのではないでしょうか。

① 笑いとシリアスの潮目
② 弱さと嘘
③ どうしようもなくても生きる勇気

笑いとシリアスの潮目

精細な舞台美術、勘違いの連続という構成も相まって、コントのように笑えてしまうシーンの多い作品でしたが、一方でシリアスさも十二分に含まれていました。
本作の魅力は実のところ、その一瞬の潮目にこそあるのでは、と思ったり。
何度か、誰かの何気ない一言でサッと空気が変わるんですが、本当にさりげない一言だったり、瞬間的なアクションだったりするのです。失言とか衝撃告白とかではなく、ほんの一瞬。
それを眺めている立場からすると、「えっ、それって」「いま、空気変わったな」と察知できるので、その巧妙さにゾクリとしました。
ちなみに、途中に乱入してくるキャラクターの勢いが凄すぎるんですが、久しぶりに観劇で涙が出るほど笑いました。彼、役名あるのかな……!

弱さと嘘

作中の登場人物は全員がなんらかの弱点や嘘を持っています。当初はそれを隠そうとして笑える空気になるのですが、それが一つずつ明かされていく過程も見どころでした。
「潮目」から一転、それぞれの弱さが露呈し語られますが、その時の表情がとても素敵。彼らの必死さや物悲しい眼つき、笑いながら泣くような顔つきが、真に迫ってきました。
彼らの告白もどこか共通点があって、「ああ、みんなそういうことあるよね」って自分も共感したくなるのでした。

どうしようもなくても生きる勇気

終盤、来店客の男性が発する一言が、最も印象に残っています。
(台本が手元にあるわけではないので、もし間違っていたらごめんなさい!)

(幸せですか?と尋ねられたのち、レジ袋を受け取る)
「幸せだよ……っていうことにしておかないと――」

これもさりげないやり取りなんですが、本作(今回の公演)のメッセージはこの一言に集約されている気がしました。
今、どうしようもない世の中で、どうしようもない自分だけれど、それでも生きてくんだと。
それは諦めではなくて、前向きに幸せを感じることだと。
この一言を聞いたときに、そんな思いを強く感じました。

以上、僭越ながら『デイドリームビリーバー』の観劇録でした。

ところで、開演前後のご案内がとても丁寧にされていたのも印象的でした。
新型コロナウイルスやインフルエンザが流行している今、充分すぎるくらいに、様々な対策やこころ配りをなさってるんだなあと。
騒がしい昨今ですが、無事幕を下ろせますように。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました! これからも応援いただけたらうれしいです。 (いただいたサポートは、作品制作のために活用いたします!)