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0時半、ゆっくりな電車。

0時半。
今夜はなんだか全てにおいてやる気が無くなってしまい、窓の外をぼんやりと眺めている。

我が家――といっても、一人暮らしのワンルーム――は、少しだけ高台にある。
前に住んでいた家は、下町の低層階、北向きという状況で、あまりにもジメジメしていた。
だから、次に引っ越すときは絶対に真逆の条件の家に引っ越してやろうと思っていたのだ。

だいたい、在宅勤務続きなのに、日差しも入らない、古びて無駄にだだっ広い場所に独り残されて、いったいどうしろというのだ。
あの家に越した頃の自分は、あと数年もすれば仕事も落ち着いて、結婚をして、幸せな家庭を……なんて思っていたけれど、蓋を開けてみればこの日陰っぷり。目の前の霧ですら、どう払ったらいいかわからない。

だから、やっとの思いでこの高台のマンションに引っ越した。
窓から見える空は美しかった。北向きでも明るく、街が一望できるような場所だった。

今夜、私はそこから街を眺めて、これを書いている。
航空障害灯がちかちかと、赤く光っている。
少し前より、灯りが減った気がする。

そして、遠くの高架で、電車がゆっくりと走っていた。
いつもなら、終電がある時刻だ。
ああ、そうか。今のあれは回送列車。

ゆっくりゆっくり走る電車を見ながら、これが今なんだと思った。
そして、今は過去に遡ることはない、とも。
電車の運行ダイヤがもとに戻っても、それはそう見えるだけで。

私たちの生活は、どこに向かっているのだろう。
ゆっくりゆっくり進む回送列車を見ながら、私は明日を考えている。

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