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ZARDの音楽、言葉、ポカリスエット。

体調が悪い。おなかが痛い。たぶん胃腸炎。
部屋で音楽を聴いて気を紛らせ、ポカリスエットを飲みながら凌いでいると、不意に、ZARDの『揺れる想い』が流れてきた。

小さな偶然に、思わず笑ってしまう。CMソングじゃん。
そしてすぐに、「ポカリとZARDって似てるよなあ」なんて考えた。

「ちょっと調子が悪いな」って時、身体にすっと入ってくる優しさ。
これはきっと、僕だけが持つ熱烈的なものではなく、楽曲を知っている人ならなんとなく理解できる感覚だと思う。

ZARD・坂井泉水さんが生前のライブで、こんな話をされていたのを思い出す。

私はいつも言葉を、詞を大切にしてきました。
音楽でそれが伝わればいいなと、願っています。

そうか。きっと「言葉」だ。言葉が優しいんだ。

ZARDの音楽は、その詞のほとんどを、坂井さん自身が書いていたそうだ。
膨大な数がある自筆のメモの中から、言葉をパズルのように組み合わせて、一曲の詞を作っていったという。

その言葉の選び方が、とても優しくて、嘘や無理がなく感じられる。
ZARDを担当されていた音楽ディレクターの寺尾さんも、有名な『負けないで』について、テレビ番組でこう話されていた。

「頑張れよ」でもいいし「愛してる」でもいいわけですけど、
そこであえて「負けないで」と言ったことによって
非常に、相手の夢に向かう気持ちを尊重してる。
(中略)
絶妙な言葉の選び方が、よかった。

僕は坂井さんのことをそんなによく知らない。もちろん会ったことはない。
楽曲や映像を通してしか知らないけれど、聴いた楽曲はどこまでも等身大だな、と思う。

恋を歌うもの、別れを歌うもの、ひとの強さと弱さを歌うもの。
そのどれもが、等身大の言葉でできていた。

坂井さんの言葉が、ZARDの音楽として自分の耳に届いたとき。
思い起こされる感情や風景は、自分の中で混ざってより鮮やかになる。
あるいは、澱んだものに気づかせてくれて、自分の支えになってくれる。
僕には、「これは自分のための音楽だ」って思えるものばかりだった。
大げさでも、冗談でもなく。

ZARDをちゃんと知ったのは没後だし、好きになったのは本当に些細なきっかけだったけれど、その日から僕は明らかに、坂井さんの紡ぐ言葉に支えられてきた。

優しくて、しなやかで、でも力強い言葉たち。
坂井さんの言葉は、今日の僕を形成する一部になっている。
今日を生きるエネルギーになっている。

ひさしぶりに大好きだった曲を聴き、ポカリスエットを飲みながら、「ありがとうございます」なんて、ちょっぴり懐かしく、穏やかな気持ちになった。


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