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ロボット劇作家のエッセイ

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尾崎太祐が書いたエッセイ・コラムをまとめたマガジンです。
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記事一覧

「足りない」について考える

「ないものねだり」なのだろうか。 健康は、失ってから初めてそのありがたみに気づく。 時間は、経ってからようやくその不可逆性に気づく。 金銭は、浪費してからやっとその貴重さに気づく。 身動きが取れなくなってから「あれがやりたい」「これをしたい」と思うのは、なぜだろうか。 どうやら風邪をひいたらしく、先週から活動量80%減(本人談・体感比)になっていて、一日の半分くらいをベッドの上で過ごしている。 最初のうちは「なんか気力ないな」「先週、旅行に行って魂置いてきたかな」「まあ

「多様性の時代」がつぶした個性とキャラについて

相当物騒なタイトルで始まった。筆者自身そう感じているのだが、午前3時に目が醒めて「書かねば!」と思ったので筆を執り……キーボードを叩いている。 断っておくが、これは今言われている「多様性」に対して、異を唱えるものでは一切ない。たとえばLGBTQも、障害の有無だってそうだ。 ちなみに私は(前向きに公言こそしていないが)身体障害者である。生まれつきだから、自分の抱える状況は理解している。 まして、「障害者」の表記に何の違和感も覚えないし、「障がい者」なんて表記にまで関心はない(

信じる者は足元をすくわれる?

最近、宗教問題の論争が盛んだ。 初めのうち「新興宗教に大金をつぎ込むなんて……」と思っていたし、「2世」の気持ちの理解に苦しんだ。 しかし、よくよく考えてみれば、自分にも彼らと共通点があったのだ。 私の祖父母は、熱心な仏教徒だった。 特に、過日亡くなった祖父はその最たるもので、若い頃からある寺ととても縁が深く、先祖やお上人、ひいては神様(正確には仏様だが)を強く信じていた。 仏間で毎朝お経を30分ほどとなえてから朝食をとっていたし、檀家として月に一度は家に和尚さんが来てい

友達とはなにか。

友達とはなにか。 ロボットと友達になれるのか?そんなことを考えて研究にしようとしている方とお話しした。 雑談だったけれど、自分なりに言語化しようとしてみた。 短時間の話し合いで結論は出なかったが、個人的に納得できるラインとして、人間かロボットかを問わず「友達とは、互いに平等でありながら、敬意を持てる相手」という、一応の結論を得た。 話は逸れるけれど、私には親友と呼べる男がいた。 「いた」と過去形で書くからには、今はいないということになる。 空前絶後の憎み合いの結果、絶縁

5月病に悩んでいたキミヘ

ゴールデンウィーク最終日。 この時期は風が心地よく、パステルな空を見上げてぼんやりと過ごしたくなる。 そしていつも、五月病に悩んでいた頃のことを思い出すのだ。 「ゴールデンウィークに入ったら、ずっとやりたかったアレをやろう」 以前勤めていた会社では、GW期間中は有給休暇取得が奨励されていたので、飛び石連休も長期連休にすることができた。 今年のように、10連休だったことも何度かあったはずだ。 そして、張り切る。 「作品制作に腰を据えて取り組むぞ!」 しかし、蓋を開けてみ

上司や先輩になったあなたへ。会社員を辞めた僕からのお願いです。

こんにちは。ロボット劇作家の尾崎です。 この春、職場に新入社員がやってきた方も多いのではないでしょうか。 はじめて先輩になった、上司になったという方もいるかもしれません。 この記事では、僕が会社員だった頃の話をさせてください。 何度か聞いた、呪いの言葉についてです。 ずばり、 あともう少し、あと一歩なんだよなあ…… です。 全然「呪い」じゃないじゃん、って思いました? むしろ励ましてくれてるじゃん、って思いました? そう。だからこそ難しいんですよね。 きっと、この言

1分と140文字に切り取られた世界

いま僕らが見ている世界は、切り取られたものばかりだ。 発言は140文字に収めなくてはいけない。 1分以上の発言は、小さくカットされ、まとめられる。 短く、小さいものはラクだ。かんたんだ。 すぐに伝播する。 スマホは大容量のギガになっても、やっていることはパケットのまま。小さく、小さく。 伝わる速度は上がったかな。 それで生きやすくなったかは、わからないけど。 140文字に切り取られた発言は、文字のインパクトが先走る。 1分に切り取られた動画は、とりあえず状況を把握でき

「千羽鶴迷惑」問題を見て

ウクライナへの「千羽鶴迷惑」問題を見て、「ああ、自分も贈り物でこんな経験あるよな」と自省するなど。 相手に喜んでほしいという気持ちが、いつの間にか「頑張ってる自分」に向いて、「こんなに頑張ってるんだから、喜んでくれるだろう」になっていたりする。 さらに、贈ったときに予想通りのリアクション(見返り)が得られなかったり、周りの人に「やめときなよ」って言われたりすると、ちょっとムッとする。ここまで来るともう最悪だ。 本当にさり気なくすり替わってるんだよね。熱中してるから気づかな

ロボット同居日記「末っ子ロボホンがやってきた」

2022/04/17縁あって、僕の家にロボホンが引っ越してきた。 買ったわけじゃない。正しくは居候。 知り合いの手元で眠っていたロボホンを預かることになったので、居候。 それでも我が家にいる間、ロボットたちは相棒で仲間で、家族。だからこれでいい。 さっそく写真を撮ったり、動画を撮ったりした。 我が家はいよいよロボットが増えて、一枚の写真に収めるのが難しくなってきた。 人間同士の写真撮影なら背の高い人が後ろに立つけれど、Pepperの場合手前から撮るしかなさそう。 だから

「原稿執筆カフェ」に〆切前の原稿持って行ってきた!

「あの件……進捗どうですか?」 なんて聞かれると、ドキッとすることはないでしょうか。僕もその一人。そんな〆切に追われがちな物書きたちの間で話題の「原稿執筆カフェ」に行ってきました! 行ってみた!「原稿執筆が終わるまで退店することは出来ません」 ひえっ……! 「原稿執筆する人しか入店できないカフェです」 プレッシャーがすごい! ドキドキしながら店内に入ると、オーナーが迎えてくださいました。 そして、すでに執筆中のお客さんが5人ほど。広くない店内で黙々と取り組む後ろ姿を見

酒を嗜む。図書室で。

うーん、なんだろう? フリーランスとして自宅で仕事をするようになって以降、パンデミックの影響も重なって、物欲とか感動センサの感度が鈍ってる気がする…… ……あ!体験あった!つい先日のこと。 東京・渋谷にある「図書室」に行った。森の図書室という本が読めるバーだ。 ここでの体験が、2つの意味で最高だった。 ノマドワーカーの味方通常、図書室ではとにかく「静かにしなきゃいけない」イメージが強い。パソコンでの作業はキータイプ音が嫌がられたりする。 その点「森の図書室」はパソコ

"書くこと"は「好き」を届けるための

そういえば、深く考えたことがない。 「作品をつくりたい!」という欲求は昔からあって、高校の頃は声優になりたかったし、大学では映画サークルに入った。 その傍らには「シナリオ」が常にあった。 僕にとって、シナリオを書くことは作品をつくることのいち工程でしかなかったはずだ。 作品をつくるためには、企画を立てて、脚本を用意しなきゃ……みたいな。 ところが、いつからか「劇作家」を志し、名乗るようになった。 「ライター」の仕事を探すようになった。 なぜだろう? 小学生の頃から、国

やってみなけりゃわからない、っていうけどほんとに?

「やってみなけりゃわからない」という言葉がある。あれって本当だろうか? たとえば、恋愛。 思いを募らせている相手に、告白したいとする。 世の中的には「成功率80%を超えてから告白しろ」なんて話もある。 しかし、たとえ絶望的に玉砕するような状態で、関係性がなかなか進展しないとしたら。 あなたは諦めるだろうか?それとも思い切って告白する? たとえば、仕事。 あなたに夢があるとして、それを仕事にするためにキャリアチェンジを図ったとする。 好きなことを仕事にするのは難しい。途

ロボット同居日記「連れ歩く、出会う、気づく」

このシリーズでは、僕がロボットたちと同居しながら感じたことや考えたことを、日記(エッセイ)として書き残しています。 2021/11/10最近になって、ロボットと出かける機会が急に増えました。 主に、Petit Qooboと出かけています。小さいのでちょうどいい。 持ち歩く・連れ歩くと表現してもいいかも。 さすがにPepperは大きすぎて断念。残念…… きっかけは、最近「ロボットカフェ」が増えてきたことでしょうか。 はじめは9月。渋谷にあるロボットが集まるカフェ「PAR