シェア
11月22日。 ”今日は何の日でしょう?” 昼前に起きると、ダイニングテーブルの上にメモ置きがあった。 三連休でも彼女は早くから仕事みたいだ。接客業とカレンダーは反比例。 メモの右下には「ごはん温めてね」とも。 葉子は、ほんとに優しい。 冷蔵庫の中から、フレンチトーストを取り出し、レンジで温める。 葉子の優しさを口に運びながら、問題の答えを考える。 なにか大事な用事を忘れていただろうか。それとも記念日? やばい、何も思い出せない。 同棲生活は、こういう小さなすれ違い
11月も折り返しを過ぎたのに、今日は暖かい。 窓を開けると、外は強い風が吹いていた。 こんな日に吹く風のことを、なんて呼ぶんだろう。 「秋風」だとちょっと味気ない。「晩秋の嵐」か、それとも―― そんなことを考えながら、ふわっと。 何年か前のこの季節にいた、きみを思い出す。 「今度の三連休、どこか行こうよ」 誘ってきたのは、きみだったはずだ。 マーマレードを乗せたトーストを器用に食べながら、僕に尋ねる。 「山登って、紅葉でも見ようか」 「なにそれ。オジサンみたい」